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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode27 「こらミリシャ! 変なこと考えるんじゃあねぇ!?」



 マズイ展開である。


 こんな所でまさか1人にされてしまうなんて。


「キャプテン、どこ行ったの?」


 オリビエはゴーグルを外している。


 その代わりと言っては何だが、市販のウイスクをミリーシャから貰い、身に付けてはいるものの、遮断されているのだろう電波は、どこにも繋がってくれない。


 どうしてノエルとではなくミリーシャと行動し、なぜ敵陣で置いてけぼりを食らっているのか、全てはあのブリーフィングにあったと、オリビエは確信している。


 義体が完成したお披露目と、輸送スケジュールの確認で招集された乗組員。


 超高速航行中のランベルト号は、順調に行けば二日後にはノインクラッドに到着する予定。


 しかし通常空間を常識はずれの速度で航行するには、所々で減速して各機関を一定時間休ませて、メンテナンスを行ってやる必要がある。


 今回の航海で言えば5回。


 先ずは超高速航行開始から3時間目、今からちょうど3時間前から1時間前までの2時間。


 これは最初の慣らし運転で無理をさせないようにと早めに取ったもので休憩は短時間で済み、点検もほとんどいらない。


 2回目の高速回転は今1時間が過ぎたばかり、あと7時間の移動後、6時間の足止めが待っている。


 8時間連続回転し、6時間の休息、このサイクルで運行される。


 6度目のメンテはノインクラッドに着いてからになるので、あと4回は無防備なタイムロスが訪れる事になる。


「4度目の減速のタイミングで小惑星帯の近くを通過するのですが、小惑星を根城にするフォズン海賊団、解放戦線“パスパードの空”と言うテロリスト、自由貿易機構と言う盗賊団がいて、高エネルギーで航行するこちらを感知して、襲ってくる恐れがあります」


 ノエルは資料を読み上げ、各グループの現在評議会が把握している情報を各員に渡した。


「この3グループ、ハッキリ言って大したことはありません。まさに烏合の衆と言って問題ないでしょう」


「そこまで分かっているならメンテナンスポイントをずらせばいいのに」


「いやいやいやミラージュ、ここはキッチリと特別ボーナスをゲットするチャンスだよ」


 ミリーシャはオリビエが一番聞きたくなかった言葉を、サラッと告げて次のデータをモニターに出させた。


「今確認できているこれらのグループの戦力です」


「戦闘艦が6隻も? ダメだよ、こっちはメインエンジンが使えない状態なんだよ」


「大丈夫さ、メインエンジンを止めたとしても、補助エンジンが二基あるんだから」


 ランベルト号はメインとなる次元エンジンが、停止状態でも戦闘を継続できるように、この銀河では最高ランクの高速エンジンよりも高い性能を示す、タキオンエンジンを使用している。


「そんじょそこらの田舎海賊なんぞに遅れは取らないよ」


 いくらオリビエが反論を述べても、方針を変える気はない。


 ノエルに顔を向ければ、無言で「諦めてください」と首を横に振っている。


「ご安心ください。ミラージュさんは私と、この艦橋でお留守番ですから」


 工作室でもミリーシャが言っていた。


 それなら少しは。


「じゃあないよ。この船には一基のモビールもないんだよ。その烏合の衆さん達がどれだけのショボいか知らないけど、6隻も船があるとなると、ヘタすると艦載機も30を超えるかもしれないよ」


 一人乗りのモビールは対艦戦において必勝の必須装備、いくらランベルト号が中型船並の旋回能力を持っていても、数基の小型戦闘機に囲まれれば、数分で宇宙の藻屑と化すだろう。


「平気平気、ウチにも小回りの利く小さいのはあるから」


「そうなの? だって格納庫にはなにもなかったよね」


 今はオリビエのシャトルと、キャリバー海賊団突入艇のたった2基で占領している状態。


「あそこは本来輸送品の倉庫なんだよ。場合によっては、突入艇も甲板に出さなきゃならなくなるんだ」


「なるほど、だったらモビールなんて置く場所もないでしょ?」


「だからモビールなんて、ウチは使わないのさ」


 モニター画面に映ったのは、宇宙海賊に何の関係があるのかという乗り物だった。


「バイク?」

「そうだよ」

「宇宙で?」

「そうだね」


 なかなか咬み合わないけど、キャプテン・ミリーがこの場面で悪ふざけするわけもない。


「あれでモビールと戦うってことだよね」


「そうだよ。あ、バカにすんじゃあないよ。小回りもスピードも火力も、モビールなんかに負けちゃいないんだからね」


「足りないのは防御力だけなんだね」


 スピードで負けていないし、運動性能では間違いなく勝っていると言う。


「まさかだけど、宇宙の海賊は暴走族でもあったんだね。だけど……」


 この後もどれだけオリビエがマイナスデータを持ち出しても、あり得ないくらいのポジティブシンキングで跳ね返される。


 ミリーシャの熱意に負けて、大人しくブリッジで見守る事にした。


 まだこの時は、ここから出ると自分から言い出すとは思っていないオリビエだった。






 ランベルト号の電算要員は、総出で時間いっぱい情報収集に勤しんだ。


 3勢力のアジトが全て判明したのは出来すぎだが、何度も確認した結果は、8割以上の信頼性があるとの報告を受け、作戦は立てられた。


 小惑星密集エリアにたどり着いた時、待ち伏せを受けているようなら殲滅するだけ、そうでなければ順番に拠点を潰して回る。


 その方針が崩れたのは、次元エンジンをカットした急減速で回復した、レーダー反応を確認できるようになった瞬間だった。


「どういうことだい?」


「理由をお聞きですか?」


「……悪かった。誰も予想してなかった事だ。それよりもこれをどう乗り切るかが問題だね」


 果たしてこの、想定した十倍の数の敵戦力をどうしたものか?


「この船の性能を知って、援軍を呼んだのでしょうか?」


「奴らにそんな連絡網があるのかね」


 謎解きは後回しでいい、索敵にかかったのは40もの戦闘艦、モビールの数は百を超えている。


「重力ユニットも次元エンジンと同時にカットしたのは間違いだったね」


「通常の電磁フィールドで問題ないと考えていましたからね」


 この絶体絶命の場面で冷静でいられる神経が信じられないオリビエ。


「どうすんの? もう一度超高速航行するにしても、こんなに進路が塞がれてちゃ、蹴散らすことも出来ないよ」


「ミラージュ、エンジンの再稼働にはそれなりの時間が掛かる。けど重力ユニットはどうなんだ?」


「最速でも10分はかかるよ。そんなに耐えられないでしょ!?」


「再起動の話じゃあない。充填されたエネルギーをメガロ・スマッシャーに回せないのかって聞いているんだよ」


「あっ、その手があったんだ」


 今回初めて航行補助と防御に、重力波を利用した。


 そのエネルギーはまだ蓄積器に残ったままのはずだ。


「大丈夫、40%なら変換できる」


「最も効果的なポイントも割り出せました」


 敵は数が多すぎて、上手く身動きが取れず、まだ襲ってこない。


 ミリーシャは即決で発射命令を出し、たったの一撃で敵戦力の4割以上を大炎上させて消滅させた。


「今のを見て、ここを離脱する集団があります」


 敵、残存戦力は3分の1となった。


 とは言え、戦闘艦もまだ13隻もいて、まだまだ油断は出来ない。


「第二射は撃てない。けどそれを悟られる前に速攻を仕掛けるよ。ライダーズも外に出しちゃいな!」


 今回は突入戦はない。


 突入部隊員はバイクに跨り、次々と発進する。


 三十台の宇宙そら駆けるバイク部隊は、順調に敵のモビール軍団を動けなくしていく。


 先制攻撃に成功し、絶体絶命の場面を一気に覆し、勝機が見えたところで、ミリーシャの目は次を見据え始めていた。


「ノエル、一番近いアジトはどこだい?」


「まさか!?」


 オリビエの嫌な予感は的中。


 突入部隊もいないのにキャプテン・ミリーは、敵陣を制圧すると言い出す。


「今なら奴らの基地はほぼもぬけの空だろうからね」


 火事場泥棒でボーナスゲット。


 それをやらずになにが海賊か?


 言わなくても理解しているノエルは、深い溜め息と共にオリビエに頭を下げた。

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