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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode24 「みんな元気でなによりだ!」



 目を覚ましたオリビエは、その見慣れない天井を忘れてはいなかった。


「ここ、ファクトリーの医務室……」


 まだ頭がボーッとして、なぜ自分がここで寝かされているのかが思い出せない。


『よっ! 目ぇ覚めたか?』


「ラリー!?」


 オリビエは慌てた。


 医療カプセルの中は治療液で満たされており、酸素マスク以外は何も身に着けていない状態。


 と言っても外から見えるのは、使用者の顔だけだから問題はない。


 普通ならば。


『どうした? 大した怪我はないから、目を覚ます頃には完全に治ってるって聞いたんだが、まだどっか痛いのか? 親方かフンデを呼ぶか?』


 そんな心配はいらない。


 ラリーが言うように怪我そのものは、本当に大したことはない。


 しばらくカプセル内にいたお陰で、もうどこも痛くはない。


「治療完了のサインが出てるから心配はいらない。もう出るから部屋の外で待ってて」


『お、おお。そうか、分かった』


 優しい笑顔を残して、ラリーは席を外す。


 オリビエはちょっとしてから、カプセルを起き上がらせて、リキッドを抜いて治療器から出る。


 シャワールームで治療液を流し、乾燥室に入り少し考え込む。


「はぁ~あ、せっかくお見舞いに来てくれたのに……」


 更衣室の姿見に自分を映し、どんよりしてしまう。


 無駄な脂肪のないと言えば聞こえはいいが、ただ単にメリハリのない体。


 胸の膨らみは申し訳程度、腰もくびれている訳ではない、お尻も背中の延長みたいで出っ張っていない。


「16歳にもなって、まるで男の子みたい……」


 なにより気にしているのが、小さくて垂れている目。


 実用性とコンプレックスを隠す為に付けているゴーグル。


 それなしでラリーに面会した事が、思い出すだけで恥ずかしい。


「そうだ、実験!?」


 急いで服を着て、ゴーグルを付けると親方に連絡を入れる。


『おっ、起きたか。どうだ調子は?』


「もう問題ないよ親方」


『だったらさっさと研究室に来い!』


 強く言われなくても実験がどうなったのか、今すぐにも知りたい。


「うん、わかった。すぐ行く」


 オリビエが医務室を出る。


「よぉ」


 そこで待っていたのはチームリーダー。


「本当に元気そうだな」


「えっ? う、うん。平気だよ」


 ついさっき素顔を見られたばかりとあって、視線を合わせられない。


「どうした? 本当に大丈夫なのか?」


「本当に大丈夫だから、早く行こ」


 俯いて足早に歩を進めるオリビエの後を、歩幅の広いラリーはゆっくりと付いていく。






 重力波砲のユニットは結論から言えば、最後はオリビエ抜きで完成された。


 オリビエが強引に電圧を上げたことでユニットは起動し、しかし安定しない重力波の制御にフンデは神経を削られたが、オリビエが研究室に顔を出す頃には安定していた。


 事故を起こした時に着ていたアストロスーツは、絶縁も完璧で電磁波はオリビエの体まで届いていない。


 だが爆発にも似た衝撃波は完全中和できず、宇宙空間で激しく飛ばされたオリビエの小さな体は、ファクトリーの外壁に勢いよく叩きつけられた。


 フンデを始め、皆がオリビエの無事を喜ぶシーンに数分をおいて、重力波砲のドック入りしたランベルト号への設置が始まる。


「さてお前さんはこっちだ」


 親方は一人、ミリーシャと個人工作室に場所を移す。


「ったく、お前さんはいつもいつも手間をかけさせよって」


「だからいつも言ってるでしょ。ちゃんとウチのクルーにメンテしてもらってるから、ここまで来る必要ないって」


「バカ言え、データ通りに部品さえ交換すればいいってモンじゃあねぇ。いつもそう言ってんだろ!」


「ああ、分かった分かった。ランベルト号の方が終わらないと、私だけでは逃げられないからね」


 ミリーシャは海賊装束を脱ぐ。


「っておい、ジジイ」


「なんだジャジャ馬」


「なんだじゃあない。出てけ!!」


 メンテナンスの為には服を全部脱がなくてはならない。


「俺はそいつの製造者だぞ」


「そっちも診られたかないが、私の体を見せる気はもっとないからな」


「ったくぎゃーぎゃーとやかましい事をいいやがる」


 ぶつぶつと言いながら出ていくオルボルト。ミリーシャは扉にロックを掛けた。


 持ってきたアタッシュケースを開ける。


 実家で付けていた義手と義足が填まったハンガーが展開し、キャプテン・ミリーの義体姿で前に立つ。


 ミリーシャの義体は、裸になっても見た目は健常者そのもの。


「本当にすごい、いつ見ても思うけど、本当に感謝だよ」


 最初はキャプテン用にも、実家の開発室で作ってもらった義手義足を使っていた。


 それでも普段の生活は全く支障もなく、それで満足もしていた。


 それが5年前、22歳の誕生日にギャレット老からプレゼントされたこの義体は、目も眩むほどの高級品だったが、その精度ももちろんのこと、見た目の美しさに感動もした。


 それまでの物のように手足だけを伸ばすのでは、服で隠せるとは言っても、やはりバランスが悪い。


 そこでおへその位置が実際より低い位置にあり、重心を安定させる為にお尻は義体のお腹の位置に、作り物のお尻に少しだけ残った、本当の太腿を突っ込ませた。


 お尻を大きくした分、胸も太股もボリュームを持たせた結果、ナイスバディーな女海賊として生まれ変わることができた。


 その後、実身長用の義手義足もこの工房で作ってもらい、親方とも以来のつき合いが続いている。


「これはもう私のもう一つの体だからね。あの爺さんに裸を見られているみたいで、いい気はしないんだよね」


 とは言えオルボルトに調整してもらった後は、調子が格段にいいことを実感しているだけに、このメンテナンスの重要性も理解はしている。


 フィッツキャリバーから連れてきた技術者の腕も悪くはないが、親方は別格なのだ。


「やっと開いたか。おーら、はじめるぞ! ってなんだこりゃ?」


「なんだじゃあないよ。別にメンテナンスに必要ないんだ。問題ないだろう」


「なに言ってる!? この義体はデリケートなんだ。ちゃんと隅々までだな」


「本音は?」


「これっくらいの楽しみはあってもいいだろう。って、なに言わせやがる」


「マジでか?」


「バカやろう! 中身がなくて何を楽しめってんだ。仕事だ仕事」


 胸に張ったテープを剥ぎ取られ、他の箇所のも剥いてニヤつく親方の顔は憎たらしい。


 しかし調整がデリケートなのは本当のこと。


 黙って受け入れるしかないと諦めかけるが、そこに助手として入ってきたオリビエが、親方の代わりに興味津々で義体を眺めてくる。


「そんなに珍しい物でもないだろう。ソア=ブロンクと一緒にロボット作ってるんだから」


「うん、だけど人とリンクするシステムは扱ったことがない」


「そうか、それを覚えてくれれば、お前に診てもらえるようになるのにな」


「でもその部分だけなら、キャリバーの担当者さんでもできるんじゃあないの?」


「馬鹿たれ、そこが一番難しいんだろうが、やるぞジャジャ馬」


「ちょっと待て、あれを他のヤツがいるところでやるのか?」


 調整の名目で、ミリーシャと神経をリンクした状態で義体中を弄繰り回られる。


 肌に直接触れられている感覚があって、中々の羞恥プレーとなる。


「お前さんが、俺にさせねぇって言うから、わざわざこいつを呼んだんだろうが!」


 義体は感覚センサーの塊で、海賊業をする為には欠かせない、痛覚や触覚の神経回路を調整するのに、中途半端な技術者には任せられない。


「お前さんは俺が来いと言ったって、簡単には来ねぇからな。今後はこいつが面倒診れるように詰め込んでやるよ」


 それはミリーシャにとっては願ってもない配慮だが、オリビエの緊張が半端ではない。


「ボク、この一回で完全にマスターしないといけないってことだよね?」


「なぁに、お前なら問題ない。なんせここで修行させた奴らの中でお前だけだからな。俺の技術を全て吸収しやがったのはよ」


 豪快に笑うオルボルト。


 この日より数日後、改めて引き直した図面を元に、フンデ達が重力波砲の廉価版を完成させるよりは早く、オリビエはミリーシャの義体を調整する技術を習得した。

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