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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode22 「たまにはこういう事もな!」



「結局、爺さんに遊ばれただけだったな」


 銀河評議会の物品横流し事件は、その犯人が元評議会議長である事が判明した。


 名前はビスマルク=ソーベルガ、ギャレット=キャリバーの学生時代からの親友。


 今回はビスマルクの口利きで書類が作成され、ある一定時期のみ公式情報を一部差し替えを行った。


 つまりは最初からユニットを預かることはなく、ラリー達を振り回しただけだった。


 ソアがピリウス=ゾヴォーグの名前で行き着いたのが、ギャレットと学生時代に会社を立ち上げた時に使っていた、ビスマルクの仮名の一つだった。


 そこまで辿り着けば、2人のプライベートラインに潜り込むのは簡単。


「それでカートの方も」


「俺達は族長のお使いを済ませただけだ。やはりギャレット=キャリバー老はユニットその物は預けていなかったそうだ」


 よくよく考えれば、評議会やフェラーファなんかに預けるより、キャリバーコーポレーションで保管をする方が安全なのは間違いない。


 何よりこれで必要な材料は揃い、これでベルトリカチームは依頼を達成した様に思えた。


「まさか俺達がいないところで、オリビエがミリシャからの依頼を受けるとは思ってなかったぜ」


 例の図面の解析と製造を請け負ったオリビエは工作室に潜り込みっぱなし、ロボット工学者のソアは手伝いもできるだろうと、一緒に引きこもって二日が経っている。


「古代文明の失われたテクノロジーだろう。いくらオリビエでもそう簡単には上手くいかねぇんじゃあないのか?」


 ラリーの適当な憶測通り、図面は解析もしようがあるが、そこにオーパーツの3つのユニットがどう関わるかを数日で解き明かせなど、無茶振りにも程がある。


「ランベルト号の整備班長もたいそう腕が立つと聞いているが」


「それでもオリビエを買って依頼したんだと」


 やることもなくレクリエイションルームで酒を交わす2人は、お使いに出していたリーノが戻ってきて、おつまみを2人に渡した。


 翌朝、やつれた顔でオリビエが工作室から出てきた。


「よう、久し振りだなオリビエ」


「うん、久し振りでおはよう。ねぇ、ラリー」


 ボサボサ頭で肌つやも衰えている。年頃の少女が見た目も気にせずにフラフラで近付いてくる。


「おいおい、大丈夫かよ」


「大丈夫だよ。心配してくれるんだ、ラリーって優しいよね」


「……少し寝た方がいいんじゃあないか?」


「うん、少し寝る。でもその前にお願い」


 両手を前に倒れ込むようにラリーに抱きつき、小柄なオリビエはお腹に顔を埋め、寝息を立てる。


「はっ! まだお願いしてない」


「なんか大事な話みたいだな。一体何だ、俺に聞いてやれることか」


「うん、簡単なこと、ボクの準備は終わってるから、親方の、元に……」


「……寝ちまったか。親方のところか、いい機会だからあいつも連れて行くかな」


 ラリーはオリビエを横抱きに、リーノに連絡を入れて準備をさせた。






 銀河評議会に加盟したばかりの惑星パスパードから、巡航速度で二日の宙域にある小惑星。


 ここにあるのは非合法の海賊でもお客様として対応してくれる、自称宇宙1の工房、ワンボック・ファクトリーは法外な料金を吹っ掛けることもあるが、しっかりとした技術で注文通りの装備を作り上げてくれると評判の機械工房。


「もうすぐだぞオリビエ。いつ以来の帰宅だ?」


「うん、楽しみ」


 オリビエの準備とはアークスバッカーのタンデム化。復座に座るとキャノピー向こうに見える小惑星に気分が高揚している。


「何年ここで修行したんだったか?」


「二年だよ。二年したら親方が「お前に教えることはもうない」って言って、ベルトリカに帰れた」


 オリビエはベルトリカに保護されたとある事件の被害者だ。


 フランは本当の妹の様に可愛がるが、オリビエの機械弄りのセンスを見抜いた親方が、預かりたいと言ってきたのを、泣く泣く承諾した。


 それももう10年も前のことになる。


「あれから一度も工房には顔を出してないんだよな」


「だって用がないもの」


 メールはしているようだが、顔を合わせるのは通信ですらしていない。


 アークスバッカーは工房にコールし、着陸許可を受けて駐機場に入る。


 後に続いたシュピナーグにはソアが同乗しており、機体上部に引っ付けてきたリリアのモビールから妖精族が降りてくる。


「なんだなんだ、ラリー、えらく大所帯だな」


「フンデ、なんだまだここで見習いしてたのか?」


 ラリーに声を掛けてきたのは旧知の仲になる工房の作業員、フンディフラ=フォラフディア。年はラリーより8歳も上だが、偉ぶったりすることなく相性もあった。


 工房内は特に変わりもでなく、ちょうど二年ぶりくらいになるラリーでも中を案内できそうだ。


「フンデ、親方は?」


「ああ、オリビエも大きくなったね。親方なら工房だよ。2人が来るって言ったのに、興味なさそうなフリすんだよね」


 困ったもんだという苦笑いで一番弟子はカラカラ笑い、関係者以外立ち入り禁止の扉を開けてみんなを招き入れた。


「このヤロー、フンデ! よそモンをここにいれんじゃあねぇ!?」


「親方が出てこねぇからだろ。あんたの客だって言ってんのに」


「うんなのは仕事のあとだ。追い出せ追い出せ」


 まだフンデが続けて文句を変えそうとするのを、オリビエが止めて客室で待つからと出て行った。


「おい、フンデ」


 場所は分かってるからと、オリビエはラリーを連れて出て行った。それを目で追って、最後に一緒に出て行こうとする弟子を呼び止める。


「役人が持ってきた菓子があったろ、それを出してやれ」


 警察機構で次期採用機とされるモビールの部品のほとんどを請け負った時に、仲介役の持ってきた物で、出所は良くはないが、ここで今一番高級な菓子を使えと言ってくる。


「あんまり待たせるなよ」


 扉が閉まったあと、誰にも聞こえないような声で「デカくなりやがって」と零す。


「元気そうじゃあねぇか」


「うん、まだまだ死にそうにないね」


 客室は別の階にあり、ガラス越しに中を見下ろすことができるが、中の騒音はあまり伝わってこない。


「俺、こういう場所あんまりこないから、面白いっすね」


「子供みたいに騒いでるんじゃあないわよ」


 窓にかぶりつくリーノと、お茶を飲みながら諭すソア、リリアはテーブルの上に足を投げ出してぺたんと座り、あまりお目に掛からない高級菓子にかぶりついている。


「なんでこんな大勢で?」


 寝ている間にアークスバッカーに乗せられたので、話の流れをオリビエは知らない。


 シュピナーグが後から付いてきていたことは気付いていたが、ラリーが説明しなかったので今まで黙っていたが、予想通りの親方の態度から生まれた待ち時間で、改めて聞いてみた。


「俺はリーノを親方に紹介しようと思っただけなんだけどな。向こうのタンデムシートが空いてたから当然のようにガキんちょが乗っかって、自分のモビールができた事が嬉しくて、ちびスケが付いてきたんだよ」


 フンデはまだ工房での仕事があるからと、代わりに親方の孫娘で事務リーダーのローティーがお茶とお菓子を用意してくれて、ソアとお喋りを始める。


「俺も質問な」


「なに?」


 オリビエはお菓子に手を伸ばし、オレンジジュースに口を付ける。


「ここにどんな用があったんだ」


「ほえ?」


 ラリーは当然理解した上で連れてきてくれたと思っていたオリビエは、間の抜けた返事を返してしまう。


「なになに、ほえって可愛い」


 リリアが急に入り込んできてオリビエの周りを飛び回る。


 顔を赤くして頭が真っ白になるオリビエが落ち着く前に部屋の戸が開く。


「騒がしいぞ、小僧共」


「よう親方、久し振りだな」


 オルボルト=ベッツェマックが姿を見せ、口の中のお菓子を丸飲みしてしまったオリビエがむせ返した。

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