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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode21 「同じ暇つぶしなら、こっちの方がよかったぜ!」



 エデルート兄妹をカートが担当すると言うことは、自然とパメラはモンスターロボットと戦うこととなる。


「ちょっと、ちょっとまった! ちょっとまった! ちょっとまったぁ~!!」


 手に持つハンドガンは、ウイークポイントとなる首にヒットすれば、ロボットを機能停止にすることができる。


 だがそれも一匹や二匹ならといったところ。


「こいつら本当に汎用型なのかぁ!?」


 動きが良すぎる。まるで本物の生物のように、それぞれが補い合って襲ってくる。


「こいつらは全てヘレーナ=エデルートの指揮下にある。最大スペック限界ギリギリに使い捨ててくるのだから、それくらいは当然だろう」


「あら、よく分かってるじゃない」


 ベックとの実力差は歴然だが、パメラを手伝ってやれる程ではない。


「連射が追い付かないんだけどぉ。うわっ!? だからちょっと待てって」


 ここに入る前に荷物は全て預けた。


 どうにか持ち込めたのは手の中に収まる小銃のみ、せめていつもの銃が使えれば。


「そう言えば旦那はどうやって、そんな長物を持ち込めたんだ?」


 ついさっきまでパメラ同様に玩具の剣を使っていた。目の前で烏丸を取り出したのに、どこに隠していたのかは分からなかった。


「そうだ。お前にこいつを渡すのを忘れてた」


 カートはパメラが敵に囲まれる寸前で、忘れていた物を投げ渡した。


「こいつはもしかして……」


 渡された一本の筒。


「ベルトリカのオリビエ=ミラージュの自信作だそうだ」


 パメラは完全包囲されて小銃を投げ出した。


「こいつは有り難い」


 一振りで周囲のモンスターを一気に蹴散らし、調子づいて今度は自ら群れの中に突入する。


むち一つで形勢は逆転だな。流石は赤の船の突撃隊長だ」


 パメラに渡したのは、フォトン粒子を物質に近いまでに圧縮できる電磁鞭。


 最大五本のべんが同時に出せるが、それはおまけ機能に過ぎない。


 今はオリビエが設定した長さで使っているが、もちろん任意で自由自在に設定できる。


 正に鬼に金棒と言わんばかりに大暴れするパメラは、モンスターロボットに勝利目前。


「それでお前達はまだ続けるのか?」


 カートはベックの刀を弾き飛ばし、烏丸の峯で頭を打ち卒倒させる。


「元お仲間なのに容赦ないわね」


「俺の仲間は俺が決める。今のお前達は敵以外の何者とも思わない」


 一対一の戦いを挑んでも、時間稼ぎもできない事は明らか。ヘレンは両手を上げてあっさりと降参した。


「なんのつもりだ?」


「なんのって、見ての通りよ。私は目的を果たしたし、これ以上痛い目には遭いたくないもの」


「目的を? 痛い目に遭いたくないのなら詳しく話せ」


「なぁ~に、デートのお誘い?」


 容赦なく斬りつけるカートだが、それが何の意味もない事は最初から分かっていた。


「お望み通りに痛い目に遭わせてやろう。次の機会にな」


 カートに切られたヘレンは光となって散って、足下で小さな音を立て、立体映像の投影装置は真っ二つに、やられたフリをしていたベックの気配も消えた。


「パメラ=ビオフェルマ、急いでリリアス達を追いかけるぞ」


「なんだよ、ちょっと休ませてくれよ。こちとら旦那みたいに、余裕でやっちゃあいないんだからさ」


「なら後から追い付いてくれ、なにか嫌な予感がするんでな」


「はぁ~あ、分かったよ。あたしもできるだけ急いで追いかけるけど、こっちは気にしないで行っておくれ」


 リリアがソニアを追いかけて、そんなに時間は経っていない。少しくらいスピードを落としても問題はないだろう。


「分かった。お前に合わせるから、もう一踏ん張り頑張ってくれ」






 アトラクション地区で一番の規模となる冒険エリアは、各ステージ毎でセーブができ、次回はセーブした続きからリスタートする事ができる。


 リリアはゴール間近まできたところで、ようやくソニアに追い付いた。


『待ちなさいよ、ソニア』


 全7ステージ中一番広い、この第4ステージ森林地帯。


 乗り込んだモビールに慣れるのに少し時間を取られ、見失ったソニアを探し回り、時々出くわすモンスターロボットを避けたり、障害物の多い中、飛び回った甲斐があり、この短時間でかなり操縦も上達できた。


「ここは木々の高さまでしか、飛行が許されていないものね」


 足を止めたソニアの前に、人型になったリリアのモビールが降り立つ。


「そのロボット、名前付けたの?」


『さっき貰ったばかりだし、まだよ』


「そう、色々作ってもらったりして、いい仲間に巡り会えたのね」


 目的地はもうすぐ。話は歩きながらと言われ、少し途惑ったがリリアは提案に応じた。


『下手なこと考えないほうがいいよ。ソニアのイズライトがコピー能力である以上、フェラーファ人でも能力は使えないでしょ? ソアが分析した通りなら』


 ソニア自身は能力が使えても、コピー元が妖精のものでないため発動しない。


 ゴール前、ソニアは足を止めて妹と向き合う。


『戦う気?』


 戦闘用に設計されたリリアのモビール。


「リリアーナってどう?」


『名前なんてどうだっていいよ』


「じゃあ決まりね」


『はいはい……、何だっていいよ』


 戦う気なんて毛頭ないといった顔の姉に毒気も抜かれ、リリアはコクピットを開けて顔を見せた。


「それでお姉ちゃんも捜し物は同じなの?」


 カートから聞かされているのは、父ブランカがその昔、まだ家族でこの施設を利用していた頃の事。


「忘れ物なんかじゃあないわよ。保管場所としてはここが一番安全だから利用しているけど、普段は簡単に来られないから、あなたを利用してるだけよ」


 族長の要求は取りに行くのが面倒な保管品の回収。ギャレット老の品を受け取る際の交換条件となる。という話はリリアも聞いている。


 それも保管場所は、フェラーファ人でなければ入れない場所だと言う事も。


「違うわ。保管場所に入れるのはフェラーファ人でも一部の妖精族だけ、つまりフェアリアの一族だけよ」


『そんなのどうでもいいよ。父さんの考えている事なんて私には関係ないし、私は仕事をしにここに来ただけだから』


「……変わったわね」


『……そうでもないよ。私はまだソニアからグワンの実を返してもらう事も忘れてないし』


 リリアはこんな話をソニアがする理由も、なんとなく分かっている。


『フェニーナになったソニアでは入れない?』


「……そう言うの考えられるようになったんだ」


『ベルトリカだと、ボーッとしていたら、ご飯食べられなくなるからね』


 もし何もしなくても、リーノはちゃんとお世話をしてくれるだろうけど、リリアが黙って養われる身を選ばなかった。


 ソニアは姉として、ただ可愛がられていただけの妹の成長に、嬉しいような寂しいような気分になる。


「……今回は嫌がらせだけだってヘレンは言ってた。私もここで帰る事にするよ」


 本当なら族長の依頼を横取りして、なんなら預かり物のユニットも奪ってやろうという、ヘレンのプランを成功させる事はできなかったが、ソニアは十分満足できたし、無理はする必要もないと言われている。


「ここの会員証を作ってもらうといいわよ。そうすればいちいち最初から攻略しなくても、途中入退場ができるんだから、第4エリアと第5エリアの間の出入り口を使えば、簡単に保管場所まで来られるようになるからね」


 それならパメラの提案で、とっくに入会を済ませている。


 今後はブランカ本人が、義弟に連れてきてもらえばいい。


「もうすぐあなたの仲間が到着するみたいね。それじゃあ私はこのエリアを抜けて行くから」


 ヘレンと通信してリタイアを宣言し、カート達の場所を教えてもらった。


『待ってよ。なんであんな人の言いなりになっているの? ソニアは無理してないの?』


「そうね。もっと色んな話をゆっくりしたいけど、今はその時じゃあないわ。大丈夫、心配するような無理はしてないから」


 リリアはソニアと別れてコクピットを閉じ、回収物の隠し場所前でカート達を待った。


『早かったね。思ったよりずっと』 


「こっちもヘレーナ=エデルート達が、あっさりと引いたからな。それで?」


『うん、この穴の中だと思う。私以外は誰も入れないだろうけど、出てきたところを襲われたくないから待ってた』


 カートの唯一の不安は払拭された。


「いい判断だ」


 カートがいてくれるなら何の心配もない。


 パメラはへばって座り込んでいるが、リリアはモビールをオートパイロットに切り替えて外に出た。


「この穴の入り口に細工がしてあって、私達フェアリアの一族でないとロックが解錠されないようになってるの」


「そうか、それじゃあ頼むぞ」


 リリアは一端いっぱしのコスモ・テイカーとして、油断なく穴の中をしっかりと警戒しながら入っていき、程なく依頼品を持って出てくるのだった。

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