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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode19 「面倒ごとばかりだな!」



 今は評議会事務所の職員が、保管品消失問題の状況確認が終わるのを待っている状態。


 待機場所はノインクラッド制宙権にある宇宙船ドッグ、ベルトリカの中。


 職員は言葉を濁していたが、ソアが評議会の回線に潜入して、すでに何があったのかは分かっている。


「回収するはずだったユニットが、横流しにあった形跡があるのか」


「三流なやり方よね。改竄された書類が三枚あるわ。いずれも保管係のピリウス=ゾヴォーグという男が携わっている」


 ピリウスは議会事務所から既に姿を消している。保管品が横流しされて直ぐのことだ。


「ピリウスが保管室に転属されたのが一月前で、あら? ……妙ね」


 評議会の接収物保管庫の係員に選ばれる男が、窓口係半年の経験のみというのは、ソアの言う通り妙な違和感を感じてしまう。


「そもそもギャレット様がお預けになった品が、接収物扱いにされてしまっているなんて」


 ノエルは強い嫌悪感を隠すことなく顔に出すが。


「んなもん、珍しい事じゃあないぜ。どうせ爺さんの事だ。評議会の保管庫を倉庫代わりにしてんだろうぜ」


「確かに考えられる話ではありますがラリー、ギャレット老からの預かり物をそんな簡単に横流しなど」


「そうだよな。あの爺は特権階級の待遇を受けている。他の物品と一緒に保管されるわきゃないだろうし」


「取りあえず、気になるデータを全部そっちに回すわ」


 アンリッサはソアが吸い上げた資料を、片っ端から確認していく。


「やはりすごいですね。ベルトリカのクルーは」


「お前さんだって、並の船乗りなんか足下にも及ばんだろう」


「お褒め頂きありがとうございます。ですがミスター、それ嫌味にしか聞こえませんよ」


 ノエルはアンリッサが確認を終えたデータを、手持ちのタブレットへ保存していく。


「俺からすればみんな凄すぎて、お前さんがどの部分を嫌味に取ったのかが分からん」


 3人の作業が一区切りを迎えた頃になって、評議会からの回答があり、手続き物品が紛失されていることを報告された。


 ベルトリカの調査対象は、とっくに次の段階に進んでいる。


「どうやって潜り込めたのかは分かんないけど、ピリウス=ゾヴォーグなんて人間はノインクラッド居住者の中にはいないみたい」


「偽名にしたって、登録された住所はあるだろう?」


「あっ、なるほどね。ちょっと待って……、あった!」


 ソアが行き着いたのは、バラウンケット・テクノロジーの独身宿舎。


「ここの職員なら評議会のデータベースに、個人情報が無くてもおかしくない。……か」


 銀河評議会の登録未登録に関係なく、製造ラインを銀河中に持ち、技術者や作業員の行き来が頻繁に行われている多目的製造会社。


 そのため各地域の役所に入所届けを出せば、評議会への報告は義務付けられてはいない。


「ガキんちょ、バラウンケットか役所に、潜り込むことはできるか?」


「ああ、うん……。無理みたい」


 重要データが元から無いのか、回線に繋がっていないのか?


 バラウンケットはおろか、役場のオンラインサーバーにも繋がらない。


「幅広い企業は専用ラインを使ってて当然だし、この会社が工場を設けているのは田舎ばかりだもんね」


「未だに紙の書類がメインの田舎役場か。こんな手の込んだ事のできる人間がいるとは思えない。これ以上は追えないって事か」


 足取りが断たれた。


 さて他のルートで犯人に辿り着くためには、一体どうするか?


「ピリウス=ゾヴォーグが評議会に顔を出さなくなったのは、いつ頃だ?」


「それなら、……五日前ね」


「その日の配送伝票を当たったりできないか?」


「全ての会社のですか?」


「さすがにそれは……」


 アンリッサもノエルも厳しい表情をしている。


「やれるんじゃあない?」


 ソアは事も無げに言ってのけると、評議会に出入りする運送会社を割り出した。


「だいぶ絞れたけど、これを当たるってことですか?」


「頼むぞアンリ」


「なに言ってんの、ラリーでもできることあるんだから、人ごとじゃあないわよ」


 限定した作業だったが、ソアに捕まり渋々手伝うラリーを入れても、流石に確認にはかなりの時間を要し、全てを纏め終えたのは明朝のことだった。






 カート達がフェラーファに到着したのはラリーとソアが大衆食堂で食事中、アンリッサとノエルが合流した頃だった。


「へぇ、ここが妖精族の里かぁ」


 パメラは見渡す限りの草原に目を奪われた。


 夜叉丸の中はあまり広くもなく、リリアはロボットをベルトリカに置いてきている。


 ランベルト号の突撃艇は少し大きめで、惑星に降下する許可サイズを超えていた。


 自然豊かな惑星の、特別保護区画は危険な巨大生物も生息している。


 それらをあまり刺激しないための条約があるため、パメラがカートの前に座り込むと、もう1人が乗り込めないのだ。


「ランベルト号にはモビールが搭載されていないんだな」


「ウチのキャプテンの方針だ。それにあたしも操縦が苦手だしな」


 苦手というか、まったく扱えないので、こうして連れてきてもらうしかない。


 適当な高台に着陸し、3人は外に出る。


「道案内を頼んだぞ。リリアス」


「……やっぱり止めない?」


 ここへ来るまでもずっと浮かない顔だったリリア。


 それもそのはず、リリアは家出同然でリーノにくっ付いて、星を出て行ったきりだったのだから。


「そう言えば、俺はまだ、お前がベルトリカに来るまでの経緯を、ちゃんと聞いていなかったな」


 カートは別に無関心なわけではなく、話したがらないうちは様子を見るという、ラリーの方針に従っていた。だが事ここに至っては。


「あのね……」


 リリアがゆっくりと話し出した内容は、掻い摘んでこんな事。


 上の娘が駆け落ちをして出て行った両親は、当然の如く猛反対。


 せめてソニアのようにフェニーナとなってくれれば、それと所在をハッキリとしてさえいてくれればと、頭ごなしの説得を受けた。


「それを振り切って、リーノに付いてきたのか?」


「居場所はちゃんと分かるんだから、いいでしょって言っても、全然取り合ってくれないんだもん。だから自室に逃げ込んで書置きを残して……」


 ユニット獲得の条件を果たしに、フェラーファ族長に会いに来たカート達。


 面会の条件がリリアを連れてくる事。


 カートの説得に、仕事として割り切ったはずなのだけれど……。


 リリアの今の状態を見て、このまま真っ直ぐに向かうという訳にもいかない。


 カートは目的の集落と隣接する、別の集落の村長むらおさを訪ねた。


「リリアじゃあないか!?」


 村長は族長の妹婿で、フェアリアに仲間入りしたパスパード人である。


 人間ではあるが、フェラーファ人の族長である、義兄のブランカ=フェアリアの苦悩もよく理解している。


「久し振り叔父さん。その……」


「元気がなさそうだな。その様子だと、まだ義兄さん達に会ってないと言うことか」


「うん……」


「帰ってきて、ここで生きていけば、お前もお前が見初めた者も、安心して生きていける」


 フェニーナと人間が住む、この村でなら、配偶者から生命力を奪われることはない。この星にはそんな不思議な力が働いている。


「だから俺も義兄さんの……」


「叔父さんまで、父さんや母さんみたいな事を言わないで!」


「す、すまん。だがな……、あっ!」


 嫌になるほど両親に言われ、最後まで理解を得られることはなかった。


 帰りを遅らせてくれていたリーノも限界時間がきて、リリアは決心して家出をした。


「リリアス!? 頼むパメラ=ビオフェルマ」


 飛び出していってしまうリリアを、パメラに追いかけてもらい、カートは村長の影に隠れる気配に声を掛けた。


「彼女の事は今しばらく、俺達に任せてもらう話だったはずですが?」


「お初にお目にかかる、カート殿」


「族長ですね」


 村長の後ろから出てきた、10歳にも満たない顔立ちの妖精。見た目に反した風格あるオーラを放ち、羽を煌めかせ目の前に姿を現す。


「フェアリアの一族に生まれた女は必ずフェニーナとなる。その唯一の例外が、一族同士の婚姻と出産。フェニーナの呪い、それもこの星にいれば最悪の結果だけは免れることができる」


「それが分かっていても、譲れないものがある。あなたの2人の娘は試練の道を選んだ」


 ソニアのことはカートには分からない。


 だがリリアがベルトリカに残る理由は同じでも、想いは船に来た頃と違う。


「ご息女がもしフェニーナになったなら、その相手も連れて、あなた方の元へ届けよう。だから今はまだ我々に任せて欲しい」


 カートはブランカ族長からの依頼を受け取る。


 このチームに出されたギャレット=キャリバーからの課題、『フェラーファ族長の役に立て!』ミッションスタートだ。

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