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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode18 「たまには楽しても、いいじゃねぇか!」



 ユニットを譲ってもらうために、ギャレット老を楽しませ続けるミリーシャチームは、ストレスも限界と言ったところで目標を達成する。


 一方、惑星ノインクラッドに着いたラリーチームは、評議会本部へ向かう。


 その前に呼び出したアンリッサと合流し、入れ替わりで抜け出したラリーは、久し振りにノインクラッドで一番の観光都市へやってきていた。


 子供からお年寄りまで楽しめるこの街に来たわけだが、せっかくだからギャンブルでも、と思ったのだが。


「本当に良かったの、ものすごく怒ってたわよアンリ」


「別にいいだろ、俺達の探しもんは銀河評議会に預けられていて、貰い受けるのに必要なのは、山ほどある書類に対する手続きだ。ノエルとアンリッサがいれば問題ない。というか俺がいたって、なにもできないだろ?」


 事務仕事ならきっと役に立てるソアも、その容姿のせいで議会職員に追い出されてしまい、ラリーの市内散策につき合っている。


「さてと、ガキんちょ連れで行ける場所か……」


「もう、他に聞かれて困る人はいないんだから、ガキんちょとは呼ばないでちょうだい」


「なんだ、年増って呼んでいいのか」


「ケンカ打ってる?」


 誰がどう見ても子供なソアと入れる場所。


「面倒くさいからガキんちょでいいだろう?」


「そもそもあなたが、ちゃんと名前で呼んでくれていれば……」


「いくぞ、ガキんちょ」


 頬を膨らませるソアを連れて、総合アミューズメントエリアに入場する。


「大衆遊技場ね。ねぇラリー、せっかくだし、何かで勝負しましょうよ」


「勝負だぁ、そんな事をして俺に何の得がある?」


 見た目が幼女なソアを置いてブラブラはできないが、行動を相手に合わせるつもりはない。


 仲のいい親子に見られるようにと、手を握ってくるソアの手を払いのけたりしないのが、最大の譲歩だ。


「あなたには得が必要なのね。だったら私に勝ったら、今晩の酒代は出して上げる」


「なんだ、一緒にサロンにでも行きたいのか?」


「それは魅力的なお誘いね。嫌みだろうから最低でもあるけどね」


「おっと、気を悪くさせたか?」


 無意識だとしても言い過ぎた事を認め、お詫びにラリーはソアの誘いを受け入れる。


 ソアが時間潰しに選んだのは、戦略シミュレーションタイプの陣取りゲーム。


 プレーヤーは作戦指揮官になって、相手の陣地を押さえるか、攻撃部隊を全滅させれば勝ちとなる。


「これを俺とやろうっていうのか?」


「大丈夫、可能な限り最大のハンデをつけるから、楽しみましょう」


 全般的にこの幼女の方がゲームは得意だが、ここでハンデをもらうのはソアである。


 戦略に於いても戦術に於いても、超一流のラリーにとっては、バランスの取れたゲームなんて正に遊びでしかない。


 でも今回は時間潰しとソアを楽しませるのが目的。


 ゲーマー対プロの間で付けられるハンデは?


「お、おいおい、これって、ほぼデフォルトじゃないかよ」


「私のプライドが許す、最大のハンデよ」


 このゲームのハンデ設定は、部隊数の数と、使用ユニットのレベルで行う。


 ソアが選んだのは、部隊数を13にし、5段階のレベルは3。


 ライト側は12部隊、レベルは同じ3が9部隊、残りの3部隊がレベル2とした。


「本当にそんなもんでいいのか?」


「銀河トップクラスのスコアホルダーとしては不服かしら」


「知ってたか……」


 暇を見つけては、酒のつまみにプレーしていた甲斐あって、つい最近トップランカー入りしたライト。


 ソアが情報を元に、このハンデを算出したのだとすれば、これで対等なのだと言うことか。


 いつもはベルトリカで専用ゴーグルを使ってプレーしているが、大型筐体では司令室風の個室で遊べる。


「ネットプレーより快適な環境だ。やることは替わらないのに、わざわざ足を運ぶだけの価値はあるな」


 ゲームはスタートしている。


 ハンデがある以上下手には動けない。


 レベルの低い部隊を残して、部隊を三つに分け、地形に合わせて配置する。


「さあ、ガキんちょのお手並み拝見だな」






 ラリーにとって想定外の大差で決着を果たし、2人は食事処を訪れる。


「変わったレストランね」


「ここは大衆食堂って言うんだ。俺のお気に入りは生姜焼き定食なんだが、そうだな……、お前には親子丼がいいんじゃあないか」


 勝者の特権として、お店選びはラリーのリクエスト通り。


 支払いはソア。と言いたいが、流石に大衆食堂でカードを切る事もできず、ラリーがキャッシュで払う。


 食券を買って、適当な4人掛けのテーブルに対面で座る。


「しかし何だったんだ? 自信満々だったクセに、何の策も取らずに終わっちまってよ」


「初めてだったんだから、あんなもんでしょ?」


 “ウォー・ザ・ラウンド”は地上戦力のみ、小隊規模で指示出しができるが、ユニット一つ一つの動きについてはAI任せ、普通にプレーしたのでは被弾ゼロはあり得ない。


 しかし1小隊を3小隊で囲めば、被弾しないケースが生まれる。


「あまりにあっさりと3vs1に持って行けた時は、何の指示ミスかと思ったぜ」


 あのゲームのセオリーはおろか、基本的戦術も把握していないソアには、端から勝機なんて無かったのだ。


「もう少し、うまくやれると思ったのにな」


「勝負は勝負だ。夜は遠慮無くたからせて貰うからな」


 運ばれてくる初めて見る料理は、ソアの興味をそそり、感じた事もない味と食感を楽しんだ。


「カートはこう言うの作れないの? すんごく興味もちそうなのに」


「こいつはガテン料理だからな。得意中の得意と言っていいんじゃあないのか?」


「なんでぇ、私食べた事ない」


「探求心の固まりだからな、あいつ。今はノインクラッド料理もほぼ制覇して、キリングパズール料理に凝ってたっけ」


「それで……、食べ慣れた料理ばかり」


「今日は安全任務な日なんだからそいつで降りてくる事もなかったんじゃあないか」


 ベルトリカで引きこもり生活をしているソアは、外出は全てロボットの役割。


「へへん、大丈夫よこれからは! ふふん、初めての玉子料理だぁ♪」


 ロボットではこれまで食事を取ることはなかった。


 だけどつい最近、食事を堪能できる機能を追加した。ソアロボットは食べた物を、データ化して本人に送らせる。


「リクエストしたら作ってくれるぞ。俺の生姜焼きもたまに作ってもらってる」


 それは耳寄りの情報だ。この件が片づいたら食べさせてもらおう。


 ご飯の一粒も残すことなく食べ尽くし、ソアは満足そうである。


 これから4時間を掛けて、ロボットは食物をエネルギーに変換する。今からノインクラッドの夕飯が待ち遠しいソアだった。


「やっぱり、ここでしたか」


 生姜焼きを平らげ、鯖の煮付け定食を追加オーダーしたラリーを探して、アンリッサが食堂に入ってきた。


「よう、どうしたアンリ?」


「どうしたじゃあ、ありませんよ。いつも言ってるでしょ。黙って出て行くなら、せめてコールに答えてくださいと」


 そう言えば、評議会の事務所を出た直後に呼ばれたら、逃げ出せなくなると思い、通信装置をオフにしたまま忘れていた。


 ラリーはプライベートでも位置探知装置をオンにはしない。「仕事中ならしかたないですけど」と、その事でもよくアンリッサに注意を受けている。


 よからぬ連中の襲撃を避けるために、毎日コールコードも換えるのだが、そのIDの切り替えもラリーはよく忘れる。


「それにしては、よくここが分かったな?」


「一か八かですよ。ここで会えなかったら、走り回る他ありませんでしたよ」


 そうまでして探していた理由。


「例の回収物、手続きが全て終わって、大変な事が分かったんです」


「大変な事?」


 作業を終え、本当ならアンリッサ達も食事を取っている時間。


 ノエルはソアと食券機の前にいる。


「無いんですよ」


「ない?」


 運ばれてきた鯖煮をラリーの許しもなく食べ始めるアンリッサ。


「回収するはずだったユニットがです」


 急を要している様子ではないアンリッサから、聞き捨てならない言葉を耳にし、ラリーは箸を動かす手を止めさせた。


「それ、俺んじゃあねぇか!?」


 食べられた物はしょうがない。ラリーは改めて食券を買いにいった。

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