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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode12 「金持ちのやる事は質が悪いぜ!」


 最後の扉の向こうには、五つの頭を持つ、ズングリムックリとした四足歩行の獣型ロボットが待っていた。


「なにこれ、大きい」


「まったく会長はどれだけの無駄遣いを……」


 リリアの横で頭を抱えるノエルは巨大なそれを、できる事なら生産ラインに乗った商品を、無理矢理改造した物であれと願ったが。


「どう考えてもワンオフの採算度外視の代物ですね」


 この迷宮の建築費用だけでも、キャリバー海賊団の運営予算3年分くらいは掛けているだろう。


 その上カスタム機の数々を配置し、ここに至っては、ここだけの特別ガーディアンが鎮座している。


「開発データのフィードバックだけでは、大変な損害ですね。パメラ、せめてしっかりと戦闘データを取って帰りますよ」


「私達は海賊だぜ、何しみったれたこと言ってんだよ。ド派手にぶっ飛ばしてやろうぜ」


 五つの頭はそれぞれが長い首を持っていて、フレキシブルに自由自在に動き回って惑わせてくるが、角の形と目の回りに付いた色で見分ける事ができる。


 赤い目をしたヘッドパーツの口から火炎が吐き出される。


 黒いヘッドパーツの口からは小型ミサイルが無数に飛び出してくる。


 ミサイルはリーノ達まで届く前に、炎に包まれて爆発を起こして、爆風が六人に襲いかかる。


「早速役立ってくれたわね」


 六人の盾になり、ひざまづく軍用ガードロボットに、今度は緑のヘッドパーツが電撃を浴びせる。


「これ、本気で侵入者を殺しに掛かってきてるわね」


 ソアはここまでのロボットが侵入者に攻略を諦めさせる物だとすれば、このガーディアンこそが、本気で攻略をさせないためのキラーマシーンだと評価する。


 黄色いヘッドパーツがビームを放ち、白いヘッドパーツが電磁シールドを張る。


「これどうすんの?」


「大きなロボットさんも、長くは保ちそうにないですよね」


 リリアとクララはソアが構える、4メートルの建築用ロボットを停止させた時に、盾にしようと持ってきた装甲の後ろに隠れる。


「あなた達も前に出ないと」


「無茶言わないで!」


「こ、ここまで運んだのは、私じゃあないですか」


 女子三人は現状では戦力にならない。


 ここで奮闘したのはリーノ。


 手にはパメラから借りた、彼女が愛用している剣。


 借り物のヒートソードで、小型ミサイルの起爆装置を外す離れ業で地面に叩き落とし、火炎とビームを避けながら、ガードロボット本体に近付く。


 電撃や電磁シールドの綻びを見つけて接近し、まさかの回避力でここまで来れた。


 パメラとノエルが囮をしてくれているとは言え、こんな簡単に敵に食らいつけるとは、本人以外誰も思ってはいなかった。


「すごいな、ついさっきまではナイフしか使えなかったひよっこが、あんた並の剣術を使えるようになっている」


「いいえ、エギンスさんは既に私を超えています。私の剣術に自身の体術を掛け合わせ、イズライトを有効にする手段に利用している」


 軍用ガードロボットを破壊した一番の立役者はノエルの剣技だった。


 踊るように、流れるように、優雅な舞でガードロボットの間接を破壊し、行動不能になった敵をリーノとパメラがバラバラに解体した。


「あいつ、見ただけであんたの剣技を盗んだってことなのか?」


「信じられませんがそのようですね。なんならあなたの鞭も貸してみたらどうです?」


 それは面白そうではあるが、大きなショックも受けそうで、自然と冷や汗が滲み出てしまう。


 リーノの狙いはガーディアンの胴体。


 ノエルの見立てでは、胴体はほとんど動力装置で攻撃機能はヘッドパーツに集約されている。


 つまり取り付きさえすれば、一番安全なのは今リーノがいる場所という事になる。


「おい、あれ対人兵器も搭載してるぞ」


 残り少ない弾丸を惜しみなく使って、リーノは機銃を一つ一つ潰していく。


「ノエルさん、手伝ってください。ヘッドパーツを潰しに掛かります」


「む、無茶を言わないでください。私はあなたのようなイズライトを持ってません。近付くのは不可能です」


 人並みに銃も使えるが、このガーディアン相手には無力に等しいノエルは、牽制の援護射撃が関の山なのだ。


「それじゃあパメラさん」


「私も同じような物だ。ノエルよりは近付けるかもしれないが、取り付けたとしても役に立てそうもない」


 クララが盾を受け取って二人の前に立ち、リリアとソアは弾数を抑えながら援護はしてくれているが、そちらもあまり成果を上げているわけではない。


 軍用ロボットは数分前から動きを止めている。


 左腕や右膝から先を失っていて、動けたとしても、こちらも盾にしか使えないだろう。


「エギンスさん、どうにかして白のヘッドパーツだけでも落とせませんか?」


 電磁シールドさえ張らせなければ、残弾でもどうにかなると計算したノエルからのオーダー、さてどう達成するか。


「リーノ、ガードロボットの武装をパージするわ」


 プログラムを変更し、まだ動かせる機能を働かせ、ソアはレーザー砲を分離し、ロックを外したビームソードを地面に落とした。


「クララ、もうその装甲も保たないだろうし、私達の事はいいから、ビームソードで暴れてきて、レーザー砲はリーノに渡してね」


 人が振り回すには大きすぎるビーム兵器だが、クララのパワーなら問題ないだろうと判断したソアに従い、両手に武器を持って走り出す。


 火炎放射が少し前に終わった事は不幸中の幸い。


 クララはリーノのように相手の攻撃を目で見て避けるなんて能力はないが、大きな剣を尋常ではないスピードで振り回す事で、未だ終わらないビーム攻撃やミサイル攻撃、電撃を迎撃することができる。


 電磁シールドにビームソードの粒子がぶつかり、スパークするとクララは足を止めて、回り込んでくるリーノ目掛けてレーザー砲を投げた。


「ナイスだクララ、もう少し頑張ってくれ」


「うん、任せてリーノ」


 クララは白いヘッドパーツとの力比べを続け、リーノは胴体部を支えている四本の脚部に攻撃をしかける。


「あのクララって子、なんであんな大きなものを振り回せるんだ?」


 パメラは首を傾げる。いくら力が強くても支えがなければ、働く慣性に振り回されてしまうはず。


「あの子はマグネットブーツを履いてるんですよ」


「ああ、なるほど。ここの床なら足を固定できるってことか。にしても大した馬鹿力だな」


「巡査の能力はパワーアップではありません。筋肉操作であれだけの力が出せるようになったのは、彼女の日頃の鍛錬の賜物ね」


 為す術のなくなったパメラとノエルは、同じく弾切れのリリアとソアに合流し、軍用ロボットの陰に隠れて戦況を見届ける。


 リーノの剣の冴えはさらに増していく。


 ノエルのように敵の装甲の隙間を突いて、間接部を破壊し、あっと言う間に敵本体を地面に落としてみせる。


 しかしヘッドパーツはフレキシブルに動き回り、まだ死角が拡がったわけではない。


 赤いヘッドパーツが圧縮ガスの再充填を終えて、炎を吐こうとするその口にレーザーを撃ち込む。


「よっしゃ、いいぞリーノ、頭を一つ潰したぞ」


 火炎が口いっぱいに拡がったヘッドパーツが、頭を吹き飛ばされ沈黙するのを見て、パメラが歓喜の声を上げる。


 黒のヘッドパーツが小型ミサイルを吐き続ける。


 最初に赤いヘッドパーツと連携したように、緑のヘッドパーツの電撃で誘爆を起こし、拡がるミサイルの爆炎が襲ってくる。


 リーノは力比べを続けていて、動けないクララと白いヘッドバーツの元へ行き、電磁シールドで爆発の衝撃を防いだ後、レーザー砲を構える。


「二つ目、緑をやっつけたぁ」


 大喜びのリリア、だが直ぐに驚愕の表情に変わる。


 黄色いヘッドパーツのビームが二人を襲う。


「大丈夫よ。二人とも無事だから」


 ソアの指差す方、噴煙の中から飛び出してきた、クララに抱えられるリーノの姿がある。


「……あれ、逆だったら格好いいのに」


 武器を投げ出してクララはリーノを横抱きにして後ろに飛んだ。


「うまい、三つ目を潰した」


 緑のヘッドパーツがレーザーで胴体との付け根を撃たれ、断裂して頭から地面に激突する。電磁シールドはビームソードを抑えていて防御が間に合わなかったのだ。


 クララの力が強すぎて、シールドを一点集中していたので、広域防御ができなかったのだ。


 エネルギー切れとなったレーザー砲を投げ捨て、リーノは剣を取ってもう一度特攻する。


 後を追うクララもビームソードを拾い上げ、再び白いヘッドパーツにぶつかる。


「終わらせてください、エギンスさん」


 ガーディアン本体の背に乗るリーノ、残った白と黒の首を切り落とした。


 電磁シールドが消失し、支えがなくなったクララは前につんのめった。


 ビームソードが突っ込んだガーディアンは、動力も破壊されて完全に停止した。


「やったぁ~~~~~!!」


 汗だくになるリーノは、ガーディアンの背中で大の字になり寝転がった。

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