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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode09 「飲むんなら俺も交ぜろぉ~!」



 最初のワンブロックは、リーノの銃撃だけで簡単に攻略できた。


 次のブロックは人型がゾロゾロ出てきたので、パメラの鞭が道を切り開いた。


 順調に進む三人の前に、4メートル越えのロボットが全身武装で現れた。


「これって本社の新製品じゃあないの?」


「そうですね。と言う事はこの迷宮は定期的に、設備を更新されていると言う事ですね」


 パメラは鞭をたたんで銃を抜く。


 ロボットは元々建築用に作られた人型だが、オプションアームが4本有り、6本の腕はそれぞれに武器を持ち、ローラー走行もできる二足にも後付けのミサイルポッド、頭部には360度回転させる事ができるカメラの上に、レーザー銃が付いている。


「ノエル、あんたも剣を抜きなよ」


「いいえ、私はここで分析を続けるので。大丈夫です、これのスペックならお二人で十分相手できるでしょう?」


「いや、なんか知らんけど三体も出てきたからさ」


「おやおや、それでもお二人でどうにかしてくださいね」


 名うての海賊団の副長の使うのは剣、その興味深い情報にリーノもわくわくしているが、どうやらここでノエルが動く事はなさそうだ。


 防御はリーノが担当した。


 イズライトを使って分かる、相手の攻撃を撃ち落とすのは簡単な作業だ。


「敵にすると厄介な能力だが、味方にすれば本当に心強いな」


「それより残弾がある内にパメラさん、早くあいつらを動けないようにしてください」


 敵はマシンガンも装備していて、それらの連続攻撃を凌いでみせる離れ業、本当にリーノの能力は超感覚なのだろうか?


 相手の攻撃がスローモーションに見え、それへの対処を可能にする時間が生まれる。


「面白い能力ですよね。時間があれば調査するのもいいかもしれませんが……」


 興味深くもあるが、そこまで探りたくなるかと言えばそうでもない。


 ノエルはガードロボットのスペックデータを呼び出し、ここでの仕様を推測し、弱点を推察する。


「パメラ、ガードロボットの首の下、胴体との付け根を狙いなさい」


 言われるままにピンポイントで撃ち抜く。


「おお、止まった!」


 動きを止めたロボットはしかし、しばらくすると再起動して乱射を再開する。


「パメラ、狙いが甘いですよ」


「指示がいい加減だからだ」


「俺に任せてください」


 エネルギーパックが市販の物に比べてかなり特殊で、容量としては8倍ほど長く使えるが、今のこのペースではいつまで使えるものか、リーノはそんな事は全く考えずに撃ち続けた。


「ノエルさん、もしかしてあそこ?」


 連射の中の一発を、ガードロボットの首元のエンブレムに狙いを絞って撃ち込む。


「止まった」


「今度は本当に止められたみたいですね。さすがですエギンスさん」


「やるじゃないのルーキー。私の鞭が届いていれば、一撃でしとめたんだけど、次はもっといいところを見せてみせるよ」


 肩に手を回され抱え込まれるリーノ、目線で気付いていたがパメラは自分より頭一つ分大きい。


「パメラ、喜ぶのは早いですよ。エギンスさん、ガードロボットは後二体、お願いしますね」


「いっ!」


 パメラも右手親指を立てて満面の笑み、これは奮起するほかない。


 少年はその期待に応え、三人はセーフティーゾーンへ足を踏み入れる。


「残弾はどうですか?」


「はい、半分切っちゃってます」


「エギンスさんは銃以外の武器は、所持してないのですか?」


 その銃を針の穴に糸を通すくらいの精度で扱えるのだから、本来ならそれだけで十分なのだが、今の状況では他の武器がないのは好ましくない。


「なに言ってんだ。ここまで頑張ってくれたんだから、そん時は私らが頑張ればいいことだろうよ」


「もちろんそうですよパメラ、それでも確認は必要な事です」


 即答しようと思っていたのに、パメラの乱入でタイミングを失ったリーノは、既に手に取ってあるナイフを改めて二人に見せた。


「これですか?」


「はい、ラリーさんにこれくらいは持っておけと言われたので、それからずっと携帯しています」


 これくらいを真に受けて、それしか持っていないとは、経験値が低いのは分かるが、少しこの業界というのを、今の内に知っておく必要があるようだ。


 今のやり取りはミリーシャからラリーに伝えてもらうとして、ここまででようやく半分、そろそろノエルも戦闘に参加する覚悟を決める。


「おおリーノ、いい飲みっぷりじゃあないか!」


「はぁ!?」


 少し目を離した瞬間に、一番恐れていた事態が起きてしまった。


「ちょっとパメラ、エギンスさんはまだ16歳なんですよ」


「成人してるんだろ、何の問題もないじゃないか」


 パメラには飲み物を運ぶようにお願いしておいたが、取り出したのはまさかのラガー、もしかしたらと思い鞄を覗き込むと。


「半分ラガーじゃないですか」


「三割はウイスキーだよ」


「あなたって人は……。エギンスさんはノインクラッド人ですから、20歳までは飲酒は許されてませんよ」


「あっ、大丈夫ですよ。俺、いくら飲んでもアルコール検出されないんで、ラリーさんと飲んだ時に「お前は面白くない」って、一回こっきりで誘われなくなりました」


 ベルトリカは独自の法律の下で運用されていた。


「んだよ、酔わないって、そんなの面白くないって言われてもしょうがないじゃん」


「あなたはそんなに強くないんですから、ほどほどにしてくださいよ」


「飲みっぷりは豪快でいいのにさ。そうだ、ここにある酒じゃあ全然足りないんでしょうから、今度ウチの船で飲み明かそう。本当に酔わないのか検証しないといけないものねぇ」


 小休止だと言うのに三本目を開けたパメラ、今は無駄に消費するのも勿体ないからと、リーノには二本目はお茶を渡した。


「しょうがないですね。三十分だけですよ」


 ノエルも最近はまっているハーブティーを取り出し、軽食も出して体力の回復を図る。


「酒のアテにはもう一つだなぁ。そうだリーノ、お前の話をアテにするから」


「はい?」


 出されたお弁当に舌鼓を打っていたリーノが顔を上げる。


「向こうのチームの三人、どの子が本命なの?」


「はい!?」


 お酒のアテに面白い話をご所望のパメラ、内容に面食らうリーノに、黙ってこっそり聞き耳を立てるノエル。


「本命って……」


「想われているんだろ?」


「そんな、ソアはそんな素振りもありませんし、リリアだって目的は他にあってその……」


 慌てふためくリーノを見て、ラガーをまた一本開ける。


「小さいのはまぁ、そうかもね。でも妖精さんは意思表示もしているんだろう?」


「意思表示ですか?」


 言葉の上ではプロポーズを受けた、婚約者になったと言ってはいるが、その真意をちゃんと確認した事はない。


「それじゃあ婦警さんは?」


 クララの名前が挙がり、リーノの表情が少し曇る。


「パメラ、やめなさい。エギンスさんお困りじゃあないですか」


「あ、いや、その……。ちょっと話しにくいのは、……いえ、聞いて頂けますか?」


 少年は葛藤の中で、二人を信用できる大人と認めて口を開く。


「俺、8歳以前の記憶がないんです。頭に強い刺激を受けて、当時は直ぐに回復するだろうとも言われてましたけど、結局」


 少女への想いで口が重くなっているのだと思っていたパメラは、思った以上の地雷を踏んだ事に後悔の色をノエルに見せるが、そんな顔をされても困るのは一緒、だからやめて置けと言ったのにと表情で抗議する。


「ああ、なんかすみません。けどこれ言わないと、この先話せないんで」


 クララとの出会いと懐かしい時間、事件の顛末を説明し終わった頃には、パメラも緑茶に手を伸ばして酔いを醒まそうとしていた。


「この辺は後から親に聞いたんですけど、一命を取り留めて目を覚ました俺に、渡された手紙や写真で色々知って、そのほとんどが嘘だって事を母親は教えてくれました」


 涙の滲んだ跡の残る便箋、紙のメールなんてあるんだと、初めて知ったツールには、書かれた文字以上に伝わる感情が詰まっていた。


「再会した彼女はその手紙とは全く違う印象で……、戸惑いましたよ。俺のメモリーには写真データも残っている。記憶はなくても直ぐ気付く自信あったんです」


 勝手な想像だが、初めてあった幼馴染みはハイテンションで、違和感がありすぎて驚いて、しばらく一緒にいる時間があって、過去を思い出させて無理をさせたんじゃあないかと感じて、不器用なりにでも普通に接する事が一番だと考えた。


「そうか、大事にしてやんなよ」


「いや、だから……」


「ああ、パメラあなた、またアルコールを!?」


 いつの間にか緑茶はウイスキーに変わっていて、これ以上は任務に支障を来すと、ノエルは出発を促した。


 ここからは今まで以上に過酷になると予想される。


 剣を抜いたノエル、久し振りの戦闘で自分が足手まといになってはならないと、気合いを入れ直した。

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