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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode07 「温泉に入れるんなら俺が行くべきだったか」



 舞台は惑星ワールポワート。


 穏やかな農村や漁村も多く、新鮮な食材が多く収穫できる事で、自治財源も豊富で治安もいい。


 キリングパズールから最大でも、一日以内に到着できるリゾート惑星。


 リーノとリリア、ソアの三人と、キャリバー海賊団からはパメラとそして出身地であるノエルが案内人としてミリーシャに同行するよう仰せつかった。


 宇宙港には突入部隊が待機しているが、探索をするのはこの五人。


 ここに警察からもクララリカ=クニングス巡査が合流するはずだったが、キャプテン・ミリーに呼ばれて、今はランベルト号にいるはずだ。


「ここが私の実家です。今日はここに泊まり、明日からが本番です」


 連れてこられたのは一件の宿泊施設。


 ガテンで見た、木で立てられた家屋によく似た、旅館と呼ばれる宿だった。


「私はここの一人娘です。もちろん跡を継いだりはしません」


「あんたはまた、たまに帰ったと思ったら……」


「母です」


 女将さんという役職だという女性が出迎えてくれて、モビールは建物の裏に回せと言われた。


 新緑の中の佇まいは、たった一晩とはいえ、心身共に癒される一時となる。


 客として訪れたわけではないので、泊まるのはノエルの育った部屋、よって従業員の待機室か、或いは……。


「俺はシュピナーグで寝ますよ」


 他の男性従業員も利用する待機室というのは、流石に気が引ける。


 コスモ・テイカーとしての経験の薄いリーノだが、シュピナーグで一晩を過ごした事はある。


「大丈夫ですよ。私の部屋はそこそこの広さがありますから、妖精さんがロボットをコンテナに残しさえして頂ければ、四人なら余裕で横になれます」


 ソアは確かにロボットではあるが、睡眠はちゃんと取る必要がある。


「実は食事も取れるんだけどね」


 今はそれどころではなく、リーノの一晩をどうするかだ。


「あまりからかわないでください、ノエルさん」


「いえ、私は割と本気です。明日に疲れを残さないよう、布団で横になる事を勧めます」


 その意見にパメラも異議を訴えず、当然のようにソアもリリアもOKを出した。


 たじろぐリーノを他所に、ノエルの部屋に通されて、そこには既に夕飯が用意されていた。


 お客でないために部屋は使わせてもらえなかったが、旅館で出す料理を女将、ノエルの母親が用意してくれた。


 どれも見た事もない料理だったが、満足のいく晩餐を頂き、温泉というお風呂に入って鋭気を養い、リーノは皆の目を盗んでシュピナーグのコクピットに入り、ロックを掛けたのだった。






 探索地域はノエルの実家にほど近い無人島。


 情報屋が色気を出したのが、探索物が隠されたポイントへの入り口データ。


 この無人島に降り立ったのはリーノ、ノエルとパメラ。


 ここから地下に建設された迷宮へ向かえるのだが、ここからの操作だけでは扉を開ける事はできない。


 こことは別に入り口はもう一つある。


 少し離れた旅館とは地続きになっている山間部の洞窟の中。


 そちらにはソアとリリア、そして今朝合流したクララの三人。


 人数指定をクリアし、データを入力。


 洞窟内と無人島の解錠ボタンを、時間を合わせて同時に押すと、岩壁や地面に偽装された扉が開く。


「解除キーはランベルト号にあったんですよね」


 ノエルが持つ鍵を見てリーノが質問する。


「そうです。そもそもここで手に入る物は、ウチの船以外の人が手に入れても、研究材料にしか使えないんです。先代も隠したデータをミリーに渡すにしても、あんな情報屋を使って、面倒くさいったらもう……」


 二つ目の扉に情報屋が持っていた二つ目のデータを入力する。


 これらのデータをチェックしたのは、ベルトリカのシステムAIティンクである。


 キャリバー海賊団にもデータ解析班がいないわけではないが、効率を考えると、共闘態勢を取っているなら、より確実で的確な銀河最高クラスのシステムに任せるのが一番。


「あの、もう一ついいですか? 向こうのチームは本当に団員の方無しでよかったんですか?」


「エギンスさん、あなたは失礼な言い方ですが、思ったよりも常識を弁えているようですね。そう言うのウチのキャプテンにも見習って欲しいものです」


 このチーム分けをしたのはミリーシャ、ラリーともなにやら話し合っていたみたいだが、その内容を知らされないノエルは、決定を受け入れるしかない。


「なぁ、ノエル。ここは迷宮になっていて、それを三人ワンチームでクリアするってことだよな」


「そのようですね」


「こっちはその、申し分ないメンバーだと思うけど、本当に向こうは心配ないって思えるか?」


 ソアもリリアもタダの子供や妖精ではない。そのロボットの性能もほんの少しだが目の当たりにもした。


 新人とはいえ警察機構に属するクララもそれなりの働きを期待していいだろう。


「ボサリーノの危惧も分からなくないんだ」


「ソア=ブロンク=バーガーは、ミリーの相手がまともにできる賢明な子です。昨晩は年相応に振る舞ってましたが、あれも処世術として使い分けているのではないでしょうか」


 それにクララリカ=クニングス巡査、クレマンテ=アポース巡査長が目を掛けている新人なら特筆すべき能力もあるのだろう。


「ミリーが昨夜に直接会ってお話をしてます。その上での采配ですよ。私達は私達の仕事をするだけです」


 迷宮という事はこの先には、多くの防犯システムが設置されているのだろう。


 ランベルト号のための物とはいえ、古代文明のお宝はそれだけで莫大な財産を築き上げられる。


 フィッツキャリバーコーポレーションにデータを保管する事にも不安を感じて、個人的に信頼の置ける親友にあずけ、個人資産を使って建造された。


「期待させてもらうぞボサリーノ」


「はい、お二人の足を引っ張らないように頑張ります」


「おいおい、ショーの時もそうだったが、もう少しシャンとしたらどうだ。お前はあのベルトリカから選ばれてきたんだ。コスモ・テイカーはクリミナル・ファイターに嘗められたら終わりだぞ」


「よくラリーさんからも言われます。今回は海賊団の方々から、色々学ばせてもらってこいと言われました」


 ルーキーなんてこんなもの、言ってしまえばそこまでだが、いかにもテンションを下げられる杓子定規さに苛立ちを覚えるパメラだが、リーノの戦闘力だけは認めている。


「行きましょう、初っ端から分岐ですが、さてどちらに向かうかですね」


「地図とかはもらえなかったのですか?」


 入り口を開放してくれた先代、ギャレット=キャリバーの考えは読めないが、こちらに有利になる情報は一切もらえていない。


 それが隠居した元海賊の道楽である事にノエルは気付いている。


 だからこそそこには、副長の想像通りの御大の思いやりが残されていた。


「はい、待ってましたよブロンク=バーガーさん」


 ソアからの通信に出て、一つのデータファイルを受け取った。


「これどうしたんです?」


「ベルトリカからですよ。ミラージュさんは本当にすごい方ですね」


「ミラージュさん、ですか?」


 正式なキーを用いて、手順を護って解錠し、ルール通りに人員が入り込んだ時、初めて解凍できるデータがあるのを、オリビエはランベルト号のデータベース内に見つけた。


 ベルトリカにいながらランベルト号のコンピュータに接続し、ついさっき解凍できたばかりのデータを、解析して返信してくれた。


「ありました内部マップです」


 ノエルはもう一つ、ソアからの報告を二人には伝えない。


 ギャレット=キャリバーは今ここで起きている事を全てモニタリングしている。


 どうやら迷宮で道に迷う事をギャレットは望んでいない。


 時間を取られる仕掛けにはヒントもくれている。


「今度お会いしたら、問い質す必要がありますね」


「なにをですか?」


「いいえ、さて行きましょう。あちらも行動を開始しているはずですから」


 ここから先は内外部関係なく通信は不可能になる。


 パメラは鞭をリーノは愛銃クデントとアガンテを手に先へ進んだ。

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