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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode05 「どうやら俺はショービジネスが嫌いではないようだ!」



『ちょっとオリビエ、待ってってば』


 次々と絶え間なく攻撃をし続けるオリビエに、ベルトリカのシステムAIであるティンクが待ったをかける。


「まだ大丈夫、ボクが一人でどうにか出来るレベルだから」


 焼け付く砲門、無茶なミサイルの連射、併せてエンジンもフル回転でオーバーヒートしないのが不思議な状態。


『ホントにもう、この仕事が終わったら今度こそ、私のコーディネイトで可愛いドレス姿を撮影させてもらうからね』


 ティンクのデータはコピー元の妖精の性格を、正確にトレースして構築されている。


 可愛い物好きのティンクは、リリアやソアにも色んなロリータ服を着せては、よく撮影会を開いて大いに喜んでいる。


「ボクに可愛いはいらないよ。女だからってドレスを着なきゃならない。ってことはないでしょ」


『絶対可愛くなるのにもったいないよ』


「ティンク、ボクがシャワー浴びてるのを覗いてるでしょ」


『だってゴーグル外すのその時だけなんだもん。寝る時も填めたままじゃない』


「恥ずかしいから止めてよね」


 少年のような体つきに、オリビエはコンプレックスを持っている。


「いいかげんにしないと、コアプログラムを凍結させるよ」


『いい加減にして欲しいのはこっちよ、船の事ももっと考えてぇ~!?』


 オリビエによってカットされているが、本来ならレッドアラートが鳴りっぱなしの状態。


 クルーズ船からはかなり離れた。


 このくらいの位置でランベルト号を足止めできればいい。


『とにかくこれ以上は船を苛めないでよ』


「そんな事は向こうに言ってよ」


 ベルトリカの猛攻に、ノエルが頭を痛めているなんて、二人は考えもしていない。






「今回は俺達の圧勝で終わりそうだな」


「今回はってことは、次を期待してもいいのかしら」


 何度かぶつかり合い、距離を取って舌戦を繰り広げ、そろそろ決着も見えてきた。


「そうだな、俺はいいんだが、チームメイトには誰一人理解してもらってないからな」


「そう、それじゃあ今日の勝ちを譲る事はできないわ」


 中央のスクリーンに映し出されたのは、膝をついたはずのエルディー。


「エルディーは確かにスタミナじゃあ、若いのには敵わないけど、まだ終わりじゃあないよ」


 今までは技で勝り、スタミナ切れなど気にするまでもなかった。


 海賊ショーでは使う事など一度もなかったイズライト、体力増加の能力で息切れを抑えて、一からの仕切り直し。


「エルディーだけじゃあないわよ」


 ブリッジで睨み合っていたパメラとリーノにも新たな展開があった。


 パメラはあまり得意とは言えない銃から、本来の戦闘スタイルに切り替えて鞭を手に取る。


「その鞭で俺の銃と戦おうって言うんですか?」


「完全な爬虫人類ではなくても、あたしはエルガンド人だ」


 力一杯振り回される鞭の軌道は、まるで生き物のように空を切る。


 リーノも実弾に切り替えて応戦する。


 それを見ていたシアター舞台上のミリーシャが微笑する。


「うちらもまだまだこれからだよ」


 大したことを言った訳じゃあないけど、沸き立つ客席、興奮状態で箸が転んでも笑うみたいな状態。


「よく見ろよ。なんの好転にもなってないぜ」


 エルディーは何度か膝をついてはイズライトを使った復活をするが、スタミナの地力の差が有りすぎるカートを前に、能力の無駄遣いをしているだけ。


 たまに立ち上がる他の海賊の相手もしながらなのに、カートの動きはキレを損なわない。


 特殊諜報員の戦いを眺めて、虚しさがあふれたエルディーはお尻を付いた。


 胡座をかいたまま起ち上がろうとしないエルディーが、手招きしてカートを呼び寄せる。


「なんだ、海賊」


「お前なにもんだ、俺もそこそここの業界長いが、お前みたいなヤツ、見た事無いぞ」


「俺の里には俺みたいなヤツは五万といるぞ」


「五万、そんなにか!?」


「……そのくらい大勢という意味だ」


 クルーズ船側で慌ててチャンネルを切り替えて、動力室の場面は映されなくなったが、エルディーが酒を取り出した時は、ノエルもさすがのミリーシャも驚きが隠せずあ然とした。


「わはははっ、面白いクルーを雇ってんな」


 ラリーは後からカートに聞いて更に笑い飛ばしたが、映っていないカメラの向こうでエルディーはヒーロー役を海賊に勧誘していたのだとか。


 マイクを切り忘れて大笑いしたから、お客さんも釣られてドッと沸き上がった。


「パ、パメラはそんなに甘くないよ」


 映し出されたブリッジの様子。


 エルガンド人の体力は人間の5倍以上、スタミナとパワーならパメラはカートに負けない自信がある。


 振り回し続ける鞭は、連射される弾丸のように襲い来るが、その全てをリーノは撃ち返した。


「ボーヤが実弾を使っているのなら、いずれ弾切れになってパメラが勝つよ」


「お前、忘れてないか?」


 舞台上の二人は観客達と一緒に画面に釘付け、パメラが両手を持ち上げる瞬間を並んで確認する。


「あのおチビちゃん達って、ロボットだったのね」


 廊下でパメラチームの団員と戦っていた所は、パーティールームでは見られない。


 体中から飛び出すミサイル、流石に爆発物は使っていないが、電気ショック弾や催涙弾で相手を動けなくする。


「くそぉ……」


 痺れて上手く動けないパメラは仁王立ちで降参した。


「外も終わりだな。ランベルト号の動きを止めたか」


 オリビエのオペレーションは非常識にも程があり、母船の操作と三機のモビールもリモート操縦で、赤い船を追い込んでしまった。


「やられたやられた、けどこれで幕引きは味気ないねフィゼラリー=エブンソン、最後はあたしらで勝敗を決めようじゃあないか」


 チーム戦では完敗を喫したが、このショーのフィナーレはリーダー対決で、勝った方が全部をいただく事を提案してきた。


「いただくってお前、都合良すぎるだろ」


「けど観客はそれを望んでいるようだよ」


 海賊が勝てば、なにかお宝を一つずつ奪われる事になっている観客も、ここでラストを迎える事を望んでいない。


「しょうがねぇな、つき合ってやるよ」


「ちょっとラリー」


「いいだろアンリッサ、これもサービスの内だ」


 モニターには女海賊と銀河の英雄、各々に戦闘態勢をとり、緊張感を高めていく。






 ラリーとの出会いは子供の時、お互いがこの業界に足を踏み入れるなんて、思ってもいなかった頃。


 出会った頃はまだ、ギャレットの計画も進行中でまだ非公認だったランベルト号が、公認海賊となって15年。


 認可を受ける海賊業も他に6団体も誕生し、先駆者のキャリバー海賊団は次代のキャプテンをミリーシャに決定した。


「お祖父様のことは大好きですし、尊敬もしておりますわ。けれどどうして私なんですか?」


 ミリーシャには兄が二人いる。


 ただその二人共が父親の会社に入る事を望み、一切ギャレットの言葉に耳を傾けなかった。


 そこで海賊も祖父も好きだと言ってくれる、末っ子の孫娘に跡取りになってもらおうと白羽の矢が立った。


「そっか、お前があのじじいの孫か」


「お前ってなによ、年下のクセに」


「嘘だろ、年上ぇ?」


 ミリーシャの思い出は、ここで出会いのシーンに変わる。


「ミリ、シャ……キャリバー、ひっく」


「ミリシャか、俺はフィゼラリー=エブンソン。ラリーって呼んでくれ」


 ミリシャではないと言おうとしたが、この後に訂正する余裕はなかった。


「なにボーッとしてんだよ」


 我に返ると少年は立派な青年になっていた。


 自分の海賊装束も板についたと我ながらに思う。


「気合いを入れ直したとこさ。これに勝ってボーナスをゲットするためにな」


 ミリーシャの右手にはさっきまでの蛇腹剣ではなく、細身のセイバーが握られている。


「そんな物で俺の攻撃を受け止められると?」


「私の本領発揮はこれからさ!」

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