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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode04 「海賊ショーも悪くないな!」



「本当に任せてクルーズ船に行くんですか?」


「ああ、あっちが二手に分かれた以上、こっちもそうしなきゃならんだろ」


 敵が分散する事は想定済み、場面に合わせて臨機応変に対応する指針であると、確かにリーノには伝え忘れていたが、コスモ・テイカーとしては当たり前の事、狼狽えるあたりがまだまだ一人前には遠い証拠だ。


「ティンクさんとミラージュさんだけで大丈夫なんですか?」


「うるせぇな。お前がここに残ったって役に立てねぇんだから、ぐちぐちといつまでも言ってんじゃあねぇ、いくぞ!」


 乗り込み組はモビールでクルーズ船に向かう。


『さぁ、ベルトリカはランベルト号に向かうよ』


「むふふ、久し振りのコントロール室」


『オリビエぇ~、お願いだからムチャしないでね』


 うふふ、むふふ、と奇妙な笑みを浮かべるオリビエは、普段は入室を禁止されている。


 ティンクとしてはソアに残っていて欲しかったが、彼女には白兵戦能力がある。


 ただでさえ数で圧倒されている海賊相手には、小さな戦力でもアテにするしかない。


 ラリーから任されたオリビエに、遠慮というリミッターは働かない。


 ランベルト号のノエルは、古代船の実力の一端を目の当たりにし、クルーズ船から引き離されるのを余儀なくされた。






 クルーズ船内は無数のガードロボットで溢れかえっていた。


 通常はメンテナンスをする為のロボットが、内蔵した武装のロックを解除する。


「ちょっと待て、なぜこちらには制限をかけておいて、このロボットは殺傷性のあるレーザーを撃ってくるんだ!?」


 ブリッジを占拠するために向かっているのはパメラのチーム。


 彼女を入れた七人は、もっともガードロボットが配置された通路を進撃中。


 相手の備品にはあまり傷を付けるなと言われ、パメラが取り出したのは電子銃。


 回路を焼き切って停止させるくらいならいいだろうと、出力を絞って攻撃してみれば、ロボットはしっかり絶縁処理がされていた。


「くそ、元々が整備用だかんな、穏便にってお達しだけど、これじゃあ先に進めない」


 所詮はショーなのだからと制限を求めてきておいて、自分達は正規の防御装置をそのまま使っているなんて。


「こんな所で足止めなんて喰らってらんないよ。お前らレベルを6まで上げな」


 絶縁がどれほどのものかをいちいち測ってはいられない。


 六割程度の出力で壊れるなら取り替える方がいい、苦情を受けるにしても最小限で処理出来るだろうあたりを見積もって再度攻撃した。


「よし、止まったな」


「隊長、こいつら止まりはしたが、自己修復モードに移りやがった」


「一瞬でも止まればそれでいい。先を急ぐよ」


 パメラの読みはドンピシャ。


 自己修復に入ったとは言え動きを止めたガードロボットが直ぐに再起動する事はない。


 後を絶たないロボットは通路にあふれているが、攻略法が分かれば敵ではない。


 海賊は程なくブリッジに到着した。


「……あんたがベルトリカのルーキーか」


 パメラの前に立ちはだかったのはボサリーノ=エギンス。


「ああ、えっと、よろしくお願いします」


「なっ、なんだそのマヌケな挨拶は、お前もプロならちゃんとやれ」


 この攻防戦もショーの一部、締まりのない事をされては興が冷めるというもの。


「すみません。こういった仕事は初めてなもので……」


「もういいよ。ったく巨大な人型を操るヤツだって聞いてたから、期待していたのによ」


 どうやら合体巨兵ブラストレイカーを操縦していたのは、リーノだと誤解をしているようだが、実際は大声で叫んでいただけで、こういった興業のヒーロー役なんて、簡単にこなせるものではない。


「ああ、もういいよ。こっちの声は拾われてないし。あんたは銃を得意とすんだろ、激しい撃ち合いを、それくらいは期待通りに働いてくれよ」


 リーノの後ろにいる二人の少女の情報はないが、まさか何の能力もなくこんな所には立ってはいまい。


 殺傷力を押さえた銃撃戦の幕は切って落とされた。






 動力室に向かったエルディーからも、ベルトリカチームのテイカーと戦闘に入ったという報告が入った。


 相手はカーティス=リンカナム、英雄の片腕はたった一人で現れ、驚く事に六人の海賊は四人があっ、と言う間に片付けられたと告げられる。


 団員はただ眠らされただけのようだが、叩き起こしている余裕をくれない、エルディーは今やただの相談役。


 次代の突入部隊副隊長の働きをサポートするが、どうも分が悪く。


 エルディー自身もカートの戦闘能力の高さに、うずうずする手を挙げずにはいられなくなった。


 気絶した仲間を副隊長にあずけ、二人は一騎打ちを始めた。


 外の砲撃戦も客達を大いに湧かせ、ショーはクライマックスに近づいている。


 キャリバー海賊団団長、キャプテン・ミリーはパーティー会場にたどり着き、そこに待ちかまえていたフィゼラリー=エブンソンと対峙した。


「よう、ミリシャ」


「私の相手はあんたか、ラリー」


 メンバーにヒーロー役を断られ、誰もその立ち位置を受け入れようとしないのだから、当然ラリーが上客の前に出るしかなかったのだが、当然ギャラリーが期待していたのは名うての女海賊と英雄のこのカード。


「俺じゃあ役不足かもしれんが、お前の悪事を見て見ぬ振りはできんのでな」


 我ながらガラでもないと自覚するが、存外悪い気もしていないラリー、シアターの舞台に上がり、ナックルのタービンを空ふかしして大きな音を立てる。


「アンリ、そっちの二人はお前に任せるぞ」


 ラリーと共にパーティールームにいたアンリッサ=ベントレー。


 事務員であるアンリッサはいつも通りのスーツ姿。


 誰が見ても戦闘ができるとは思えないが、ミリーシャに付いてきた団員はキャプテンの指示を受け、優男の方へ向かう。


「あの子、本当に戦えるの?」


 ミリーシャは思わずマイクを切って、ラリーにさりげなく聞いてみる。


「あの子って、あいつもああ見えてお前と同い年だぞ」


「えっ?」


「と言ってもお前だって年相応には……、今はいい感じだけどよ」


 思いも寄らない問答となり、気が抜けたミリーシャは一瞬我を忘れ、ラリーのリップサービスに頬を染めて喜びそうになるのを、寸での所で気を取り直した。


「主役の闘いってのは大取りと相場が決まっている。しばらくはじゃれ合いながら世間話でもしようや」


 もう一度タービンを回すラリーが殴りかかってくる。


 ミリーシャは愛剣を抜き、ナックルを真っ向から受け、力を横に逸らせる。


「いいよ、初めてのヒーロー役でどこまでやってくれるのか、正直に言って不安だったけど、やっぱりフィゼラリー=エブンソンは銀河の英雄様のようだね」


 マイクのスイッチをオンにし、舞台上のやり取りに客の目を引きつける。


「いくぞ、英雄フィゼラリー=エブンソン!」


 剣を蛇腹状に分解して振り回すミリーは昔の事を思い出していた。


 いや実際には思い出にふける暇など無い。


 ただ一瞬だけ思い出したそれに、思わず口許がほころんだ。


「おいおい余裕だな、俺はそれなりに本気で殴りかかってるのに、笑って受け流されたのは、それなりにショックだぜ」


「はん、私にも意地はある。だが英雄の全力を余力を残して捌けるものか」


「笑ってるのは見せかけってか、そんなヤツが前に突っ込めるかよ」


 蛇腹剣を変幻自在に操る女海賊、攻守は交代し、ラリーは襲い来る大蛇のごとき攻撃をナックルの連打で真っ向から弾き返した。


「流石に強えぇな」


「あんたこそ、昔とは大違いだよ」


 二人の攻防は一瞬のようなものだったが、見ている者の息は詰まる。


 主役の動きが止まると、スクリーンはカートとエルディーの闘いを映し、二人の交錯の後、古参の海賊が膝をつく場面を観衆はまたも大きく沸いた。


 技の切れは互角、差が出たのはスタミナ、年齢の差が結果に結びついた。


「先ずは一勝」


「ふん、まだまだだよ」


 ミリーシャの額に汗が浮かぶ。


 次にスクリーンはリーノ達を映し出した。


 二人の少女がクルーズ船の狭い通路で遠慮無く飛び道具を使いまくり、ソアロボット、リリアロボットの前に七人の海賊は物陰に隠れているのがやっと、時々反撃するが、手の打ちようもない。


 ただ一人突破してブリッジに入ったパメラ、それを追うリーノの闘いも決着は近かった。


 クルーズ船の乗組員を人質にすれば、押され気味の形勢を逆転出来ると考えたパメラだったが、船の中での戦闘が始まった途端に避難したブリッジクルーは一人もおらず、当てが外れる突入部隊長は、まだコスモ・テイカーに成り立てのルーキーの一撃で銃を弾き飛ばされてしまった。


「あっちももう詰んだな」


「くっ!」


 また別の決着は、パーティールームの入り口付近でも。


「ラリー、こちらも終わりです」


「サンキュー、アンリ」


「まさか、あんな優男にまで」


「アンリはナイフ使いの名手だ。お前らにとって乗客は人質に使えても、傷つける訳にはいかない相手だ。狭い空間であいつの投げるナイフを簡単に避けられるものかよ」


 ショーだからではない。


 海賊とは得てしてそう言った振る舞いをするもの。


 こうしてベルトリカチームは三つの勝利をもぎ取った。


 だが団長を取り押さえなければ決着とはならない。


 大詰めの舞台上、大歓声と拍手喝采、女海賊はわくわくが止まらない。

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