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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode03 「気合い入れていかねぇとな!」



 惑星キリングパズールから出向して、様々な星を巡ってきた大型のクルーズ船。


 そんな豪華客船に接近する真っ赤な宇宙船は、物資運搬中の交易船として航行プランが運輸局に登録されている。


 クルーズ船の船長は相手の航路が徐々に外れている事に気付き、連絡を取ろうとするも返答はなく、警察に通報しようとするタイミングで襲われる。


 という流れだったのだが、シナリオ通りにいかないことなんて、珍しい事ではないのでクルーズ船の船長も慌てはしないものの、さてどうしたものか。


「ミリー、人の話をちゃんと聞いてください」


「えっ、何か言ったかノエル?」


「しっかりしなさい。あなたは普段は申し分ないキャプテンですが、ミスターが絡むとどうにもネジが緩んでしまっていけません」


 ただのミーハーなら仕事との割り切りもできるのだろうけど。


「本気で恋しちゃってますからね。この間の打ち合わせでも、笑わないように堪えるのも大変だったんですよ」


「お前はあの程度で吹き出したりはしないでしょ」


 ラリーに見とれて赤ら顔で呆けていたあの顔は、思い出すだけで破顔一笑してしまいそうになるが、確かにミリーシャの言う通り、ノエルは無表情をキープした。


「その後の睨み合いでは、なんとか海賊らしさを保てましたが、ミスターはあなたのメンタルの弱さに気付いてましたよ。バチバチしていたパフォーマンスから話題を簡単に変えてしまいましたし」


 こういう催しは早い段階からキャラ作りをしないとならない。


 海賊業を生業にするキャリバー陣営はともかく、ヒーロー役などはもちろんショーパフォーマンスの催し経験のないベルトリカは、乗組員達から勝手に仕事を決めてきたラリーに非難囂々。


 ラリーは一人でヒーローを演じることとなった。


「ミスターの顔に泥を塗るようなことのないように」


「わ、分かってるわよ」


「さぁ、ブリッジに上がりますよ」


 タイムスケジュールを預かるノエルは、ギリギリまでメンタルコントロールをする。


「えぇー、もうそんな時間なの?」


「はぁ、ミリー……」


 ミリーシャ=キャリバー、16歳で海賊となって11年、側仕えのようにフォロー役に付けられたノエルと出会って9年。


 海賊らしさを教えてくれていた先代が連れてきて、今や女海賊としてのあり方はノエルが教授を受け継いでいる。


「その海賊装束に身を包んでいるのですよ。気を引き締めてください」


 朝起きて先ずはシャワーを浴びさせて、強いクセっ毛をじっくりとかして、ヘアースタイルを整え、威厳を感じさせない表情をメイクでキャプテンらしく仕上げる。


 他に三人いる世話係にも、朝の身支度だけはさせた事がない。


 27歳になっても夢見る乙女でいるミリーシャに、ノエルは気丈に接し続ける。

 いつしか鉄仮面の女海賊と呼ばれるようになった、仮面など一度たりとも填めた事がないのに。


「もうすぐランデブーポイントです。クルーズ船からの通信も受信しました」


 準備万端に整ったブリッジは緊張感の中、ただ一人だけ総大将は反応を示さない。


「キャプテン、どうされましたか?」


 副キャプテンであるノエルは、船長に何か緊急事態が起きた時、船の運用を代行しなくてはならない。


 朝からここまでのルーティーンはいつも通りだったが、何か見落としがあったのか?


 表情にこそ出さないが焦りを覚えたノエルは、キャプテンシートの左後方にある席を立ち、ミリーシャの元へ詰め寄る。


「ミリー?」


 ミリーシャのウイスクに映し出されているのは、既に待機済みのベルトリカ。


「い、い、か、げ、ん、に、してください」


「ノ、ノエル!?」


 突然左頬を軽く抓られて我に返るミリーシャ、こんな顔を他の誰にも見せるわけにはいかない。


 ノエルはウイスクのチャンネルをハックして、画面越しに注意をする。


「じょ、状況は?」


 タイミングを逃しはしたが、乗組員は冷静に作戦を遂行してくれている。


 ランベルト号は既に砲門を開き、クルーズ船のシールドを無力化しようとしている。


 クルーズ船のシアターにも使われるパーティールームでは、上客が集められ宴の真っ最中。


 スクリーンにはランベルト号が映し出され、ビームの船衝撃が船舶を揺さぶる振動に歓声が上がる。


 お仕事モードに入ったミリーシャが、大画面に映し出されると更に沸き上がり、イベントの滑り出しとしてはまずまず。


「そろそろ搭載機を出して、客船を拿捕しなさい」


 キャリバー海賊団は基本、ランベルト号のみで戦闘をこなす。


 搭載機というのは、相手の動きを制限するために飛ばす、超電磁アンカー廷の事。


 四機の小型艇で、巨大ガレオン船であるランベルト号の倍ほどあるクルーズ船の動きを押さえ込み、赤い船は乗り込むために接舷しようとする。


「航宙船が急接近してきます!?」


 レーダー索敵員の報告と同時に、ブリッジのメインモニターが青と白の船を映し出す。


「ミリー!」


「分かってる。もう完全にスイッチ入ってるから」


 個人通信をカットして、シナリオを先に進める。


 ベルトリカからの砲撃でアンカー艇の一隻が落とされて、クルーズ船はゆっくり離脱を試みるが、その速度はかなり遅く、次のベルトリカの砲弾でもう一艇を落とされる予定だったが、段取りより早く台本から抜け出して、アドリブを始めたのは海賊船。


 ベルトリカとランベルト号の間にクルーズ船を挟んで、主砲攻撃をする。


 容赦なく連射されるビーム粒子は、クルーズ船の外壁のビームに対抗したコーティングを破がして通過し、ベルトリカへの直撃コースに入る。


 航宙船のシールドで完全に消滅するビーム。


 クルーズ船のシールドとは比較にならないほどの性能で、何発の粒子を受けてもビクともしない。


「ミリー、クルーズ船からの苦情です」


「ああ、もううるさいな」


 戦闘に巻き込み、あまつさえ船体を傷つけた。


 この手の苦情はよくある。


 しかし危険度をギリギリまで上げてでも、迫力あるショーを望んだのはクライアント。


 コーティングなんてゲートウェイを頻繁に航行すれば、三ヶ月で張り直さなければならない程度の物、もちろん事前告知であちらも了承済みのはず。


「いえ、振動が止まない事の、上客からのクレームだとか」


 受信メールの内容から、パーティー会場は盛り上がり煽る派と、体感に怯える派に分かれているようで、クルーズ船への干渉はもう少し抑えめに、ショーを行う二隻のバトルは派手目にと言う要望が出された。


「本当に打ち合わせで再三にわたって念を押しても、軽く考えてるクライアントはなくならないのね」


 プランBへの変更をベルトリカに送り、ミリーシャは起ち上がる。


「大幅に前倒しになるけど突入するわ。後の事はよろしくね」


「お気を付けてキャプテン」


 ノエルに船の事を任せ、ブリッジ後方のエレベーターに乗り込み、突撃艇のある格納庫へ直通で到着すると、突入部隊長のパメラ=ビオフェルマが出迎えてくれる。


「今回のプランはクルーズ船のガードロボットは多少壊してもいいって事になってたけど、面倒くさいクライアントっぽいから、極力無力化する程度に抑えなさい」


「なんともつまらない話だわ」


 三年前に部隊長に就任したパメラは、顔立ちは人間の物なのだが、腕、足、背中に脇腹などは鱗に覆われた、エルガンドで稀に生まれる爬虫人種の中でも更に希少な突然変異種。


 爬虫人種としては貧弱だが、人間と比べると筋骨隆々な怪力の持ち主。


「久し振りに大暴れできると思っていたのに、結局いつも通りなんだ」


「そう言うなパメラ」


「エルディーの親方」


 突入部隊の相談役という立ち位置にいる前隊長、エルデルザル=デゼブは先代から乗船している古参の団員だ。


「普段の倉庫番みたいな仕事に比べれば、いくらか発散できるだろうよ」


「それは分かってるけど、たかがガードロボットくらい、いくら壊したって痛くもかゆくもないくらい稼いでるだろうにさぁ」


「それでも少しでも経費は抑えたいもんだ」


 突撃艇はすでにクルーズ船の上部甲板に取り付いている。


 本当の略奪行為を行う海賊なら掘削機で穴を開けて突入と言ったところだが、これはあくまでショー。


 予めの段取り通り、クルーズ船は隔壁を開けてエアロックを使用可能にしてくれている。


「それじゃあ乗り込むよ。おまえらぁ~、いつもと少しだけシナリオは違うが、上手い事やって上客からもお宝をいただくからね!」


 キャプテンの檄を貰い、雄たけびを上げる海賊団は、三チームに分かれて突入した。

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