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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion02 赤の章
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Episode01 「おやっさんが船に来やがった!」



 アウストロダム銀河を統括する銀河評議会本部が設置される、惑星ノインクラッド。


 このエリアでは銀河評議会が発足400年目に古代遺跡と、そこに遺された現代技術を大きく上回る超文明が発見された。


 発見者が評議会による銀河統治を受け入れていない人物であったため、生涯を掛けて探し続けた遺産を銀河中に隠して死んでいった。


 その多くをお膝元のノインクラッドに遺したのだが、その一つとして再発掘されたベルトリカは、前チームリーダーのフランソア=グランテの手に渡った。


 どんな縁があって、どうやって所有者である事を評議会に認めさせたのかも分からないが、今もフィゼラリー=エブンソンが自由にできる理由も公にはされていない。


 金色の船事件で有効な戦果を上げたベルトリカが接収されないのも、多くの警察機構幹部が反感を訴えた。


 評議会のお達しもあり、詮索の許可は下りなかったが、警察はフランソア=グランテと深い関わりのある巡査を顔繋ぎに関わりを持たせた。


 発掘遺産はもう一隻。


 内装を改修しただけで使用可能であったベルトリカとは違い、その船は機関部以外の大半が故障しており、誰もその物の価値に気付く者はおらず、ジャンク同然で手に入れたのはキャリバー海賊団だった。


 大昔に地上の海を渡った帆船を元に仕立てられた海賊船は、ランベルト号と名付けられた。


 宇宙海賊には二種類が存在し、片方は文字通り、破壊と略奪行為を繰り返す無法者の集団。


 キャリバー海賊団はもう片方に属する、評議会が承認するアウトロー集団だ。


 認可を受ける海賊はもちろん犯罪行為は禁じられる。


 主な収入源としては観光事業のアトラクション、非合法ギリギリの貿易、極秘裏に搬送しなくてはならない物や要人の護衛。


 合法ではあるが公的機関が扱うには、世論に対し説明し難い仕事を請け負っている。


 月日は流れ、年老いたギャレット=キャリバーは、孫娘であるミリーシャ=キャリバーに全てを託す、ランベルト号とともに。


 その真っ赤な船が、発掘された古代遺産の機関部を元に建造された物だと知ったのは、つい最近の事である。


 ギャレット引退後、すべてを受け継いだミリーシャの手により、更なる活躍を続けたキャリバー海賊団の名前は全銀河に知れ渡った。






 海賊になって早十年。


 これまででもっとも大きな事件の一つに関わる事になり、今は事後処理に翻弄される日々。


 今日も金色の船事件の重要参考人として、調書作成に協力して欲しいと送られてきた新米警官の相手をしなくてはならない。


 ミリーシャは起床直ぐに汗を流す。


 髪を乾かすと食事よりも先にメイクを済ませ、船長服に袖を通す。


 同じ物が数着用意されていて、それを順番に着回している。


 海賊としての正装に身を包み、来客に応対する。


「はじめまして、警察機構のクララリカ=クニングス巡査であります」


「あらっ、可愛らしいお嬢さんだこと。もしかしてアナタが新しくアポース巡査長の部下になったっていう新人さん?」


「巡査長をご存じなんですか?」


 聴取を受けるとしながらも、朝食を取るミリーシャはクララにも席を用意してくれていた。


 テーブルに着くとナイフとフォークを手に持つ。


「この業界でクレマンテ=アポースの名前を知らない者はいないわ」


 ここ数年は後進の育成もしていなかったのが、今年は一人の新人に目を掛けて色々と指導をしていると噂に聞いていた。


「ベルトリカに知り合いがいるんでしょ、そちらに行くものだと思っていたわ」


「いえ、それがあちらには巡査長が自ら向かっていまして」


 事件に最初から最後まで関わり、解決に一番貢献したのだから確かにベテランが話を聞きに行くのは当然で。


 だからとは言え。


「それではお話、お伺いしていきますね」


 公僕でありながら海賊の用意したテーブルにつき、食事を共にする非常識警官をミリーシャは気に入った。


 聴取と言っても,特に新しい情報が海賊団から出る事はなかった。


 クララの仕事は五分で完了し、あとの小一時間で海賊は末端とはいえ、警察内部と繋がる貴重な情報源を手に入れる事に成功した。






 事後処理も一段落を迎え、ミリーシャは贔屓にしている情報屋から、一つのメモリーをそこそこの高値で購入した。


「まさかのパスワードトラップの解除コードを、あの子から手に入れられるなんてね」


 正しいパスワードを一発で入力しないとデータが破壊される作りで、情報屋はパスワードをメモリーの十倍にして二重にして吹っ掛けようとした。


「駆け出しの頃から目を掛けてやってたのに」


 裏切りにはそれ相応の報いを。


 忘れ物をしたと折り返してきたクララに情報屋を引き渡し、その際に重要物件としてメモリーも押収された。


 その前に中身を確認したいと言ったら、あっさりOKが出て、情報屋が持っていたパスワードを使ってロックを解除し、新人警官には気付かれない様に中身をコピーした。


 押収された物の確認をしただけだと言えば、コピーされたなんて疑う事もせず、情報屋と物品を持って帰って行った。


「さてさて、このデータにしても検証が必要だけど、そんなテキトーな物をあれだけの価格で買ってやったのに、新しい情報屋を探さないといけないわね」


 グラスに注ぎ込まれたワインを片手に、一通り目を通す。


「お呼びですか」


 キャプテンルームに訪れたのは、副キャプテンのノエル=ディスターク、黒のスーツ姿の長身に紫色の短髪姿は、赤髪でウェーブの掛かったロングヘアーのミリーシャと並ぶと地味に感じるが、精悍な小顔、妖艶さを持った美女である。


 硬い表情を少し軟らかくするだけで、色んな男がお近づきになりたがるだろうに、残念な事に彼女は感情を表情に出すのが苦手だった。


「私達の次の目標が決まったわ」


 キャプテンルームにはスタンドアローンの端末があり、普段は手持ちのタブレットで仕事をこなしているノエルは、それを置いてミリーシャのデスクに近づく。


「どう?」


 席を替わりデータの隅々まで目を通したノエルは首を縦に振る。


「問題ないですね。データそのものに手を加えられた箇所はありません」


 ノエルには情報を見極める能力がある。


 解析鑑定のイズライトを使って手に入れた情報を見極めてもらった。


 この能力には嘘発見機のような効果もあり、彼女には誤魔化しや言い逃れは通用しない。


「じゃあ決まりね。次の仕事はお宝探し」


「待ってください。請け負っている仕事がまだ三件あります」


「そんなのキャンセルすればいいじゃない」


「ミリー、評議会から請け負った仕事を反故にすればどうなるか」


「はぁ、つまんないわね。海賊なのに好き勝手出来ないなんて」


 ミリーシャはロッキングチェアに腰掛けて、完全にやる気を削がれている。


「公認海賊だからこそ自由に出来ている部分も、過分にあるのですよ」


 もう興味は新情報にしか向けられないのだが、仕事はしないとご飯が食べられない。


 一件目は簡単な配達業務。


 エルガンドの大型爬虫類の搬送業務。


 一般には禁止されている輸送、依頼主はキリングパズールの有力者。


 なんの為の捕獲かは知らされていないが、歴とした評議会の許可が下りた依頼である。


 二件目は広報活動。


 ノインクラッドの公共放送の対談番組、所謂バラエティーへの出演。


 正直に言って一番したくない仕事なのだが、ノエル曰くは人気取りをすることで、全ての方面からのオフォーが増えるのだとか。


 三件目はアトラクション。


 宇宙周回クルージング船を襲う海賊ショー。


 これはミリーシャも心から楽しめる仕事で、最後には負けないといけないのがストレスではあるが、大暴れできればそれだけで満足。


「それでヒーローはいつものチームなの?」


「それなんですが、今回はスケジュールが合わなくてですね」


 海賊ショーを行うにはヒーロー役は必須。


 だが実際ヒーロー役を生業にする船などは皆無に等しく、大抵が海賊同士でどちらがヒールになるかで交渉が行われる。


 ランベルト号はその見栄えから、必ず海賊役が任される事は、ミリーシャにとっては願ったり叶ったりなのだが、キャリバー海賊団が名を馳せて有名度が上がるほど、敵役を買って出てくれるチームがなくなっていく。


「参ったわね。……そうだ、だったらラリーの所に頼んじゃえばいいじゃない」


「ベルトリカですか?」


 コスモ・テイカーに依頼する事も確かに少なくはない。


 それこそ駆け出しのチームは手を挙げてくれるが、キャリバー海賊団の活躍を望む観客の期待に応えられる物ではない。


「確かにこれ以上ない相手ではありますが、そう簡単に応じてくれますか?」


「大丈夫、この間の件で貸しは作ったんだから」


「それはベルトリカチームに作った貸しではないでしょう」


「似た様なものよ。さぁ、さっさと仕事を終わらせて、楽しい事を始めましょう」


 はしゃぐミリーシャは、彼女なりに渋面になっている内心を悟る事ができなかった。

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