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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion01 白の章
28/144

Episode28 「バランスの取れた、いいチームだろ!」



 ティンクがセイフティーコードを解除し、三機の合体が可能となる。


「いいかリーノ、お前には最も重要なポジションを任せる」


『お、俺にですか?』


 ブラストレイカーへの合体前に、済ませておかないといけないレクチャーがある。


「そうだ、合体が成功するかどうかはお前次第だ」


 もしリーノで失敗するとなれば、このチームが巨人を目覚めさせる事はなくなるだろう。


「こいつの操作は基本カートがする」


 カートのコクピットシステムはモーションリンクであり、人型を動かすのに都合がいい。


「俺は出力調整と操作補助を担当する。ちびスケは索敵とセンサーチェックを任せるぞ」


 手足を動かしているカートでは、できない入力をラリーがカバーする。


 ぴったり息を合わせないとならない作業だが、長年バディーを組んでいる二人には造作もない事。


 索敵、データチェックはシュピナーグで慣れてきているリリアが最適だろうとラリーが判断した。


『りょうか~い』


「そして一番重要となる武装についてだが」


『なるほど、俺がトリガーを握るって事ですね』


 しかし動作と攻撃も、息が合っていなければ話にならない。


 そこを分離するにはリーノは未熟すぎる。


「粒子砲には飾りじゃあなく、ちゃんとトリガーも付いているからな、そいつはカートが操作できるミサイルは俺が索敵ついでに担当するしな」


 武器の出し入れなんかも、ラリーが引き受けると言うのであれば……。


『それじゃあ、俺はなにを?』


「……音声入力だ」


『音声、入力?』


「そうだ、それこそが誰にも変わる事の出来ない、お前だけの重要任務だ」


 操作を簡素化するためか、ブラストレイカーには驚きのシステムが内蔵されている。


「そいつはオリビエがどんなに調整しようとしても外せない、とんでもない欠陥システムだったんだよ」


 カートが操縦しやすいように、コクピットをごっそり入れ換える事のできたオリビエでも不可能だった事。  


「こいつはな、武器の名前や技の名前を大声で入力してやらんと使えないという、恐ろしい欠陥があるんだ」


 しかもその音声は外部スピーカーから垂れ流され、電波にも乗せて周囲に巻き散らかされる傍迷惑さ。


「なんの嫌がせか知らんが、音声モードをoffにすると、機体自体が操作不能になりやがるんだ」


 カートはもちろんラリーだって、そんな恥ずかしい大声を出したくない。


 いや、耳にするのも恥ずかしいので封印しておきたかったが、ここに至っては背に腹は代えられない。


「お前はモニターに映し出される文字を、大声で感情を込めて読み上げろ。いいや魂を込めて叫ぶんだ」


『おお、それを俺がやっていいってことですか? 嬉しいです。ありがとうございます』


「お、おお……、頼んだぞ」


 適材適所の割り当てを終えて、三機はいよいよ古代船の前に躍り出る。


「いいか、リーノ!」


『は、はい!』


 超古代文明の力は、現代宇宙の最新鋭技術を遥かに凌ぐ事をあの金色の船イグニスグランベルテが示した。


 それと同様の技術で生まれた三機のモビール。


 ラリーが全幅の信頼を寄せるオリビエが、時間を掛けて挑んだが、結果を出せず匙を投げたシステムにルーキーが挑む。


『ブラストアップ!』


 キーコードの入力に成功すると三機は自動操縦となり、縦並びになると各機が変形を開始する。


 簡単なプロセスで各機は形を変え、全ての合体準備は完了、後はシステムの認証が通るのを待つばかり。


『レッツ!』


 音声入力システムの改善は叶わなかったが、オリビエは代替案を立てて、アイテムを用意してくれた。


『レイカー、オン!!』


 3人の音声コードを必要とする場面、キーワードを口にしたのはもちろんリーノのみ、だがシステムはOKを出して認証が下りる。


「おお、すげーな。俺の肉声そのものだったぞ。恥ずかしい」


『確かにこれは、……オリビエはいい仕事をしているな』


 リーノの声はアークスバッカーと夜叉丸のコクピットに、全くのラグもなしに飛ばされて、ボイスチェンジャーを通して、まるで本人の口から出たかのようにシステムに誤認させた。


 口許に掲げていたウィスクを填めた左腕を下ろし感心するラリーとカート。


 変形を終えた三機は合体を果たし、最後のキーワードを入力すれば完成となる。


『合体巨兵』


 最後のフレーズ、二人は慌てて左手首をまた口許にもっていく。


『ブラストレイカー!!』


 3人の声が銀河に響き渡り、人型巨大ロボは完成した。


『くーっ、感無量です』


「そうか、それは良かったな。俺も帰ったらオリビエに礼を言わなきゃな」


 恥ずかしさも最低限で済み、決戦兵器も起動できた。


「そんじゃあシメにかかるぞ」


 空間断層の向こう、煌めく船の船首側に回り込むブラストレイカーは、例によって向こうからは攻撃可能という、インチキ先制攻撃を受けるが問題はない。


「合体同様、モニターにあるワードを叫べ」


 感情も込めてというのが難易度を高くしているが、リーノは字面のみで酌み取って最大級の魂を込めることができた。


『ブラストシールド!』


 古代船の甲板の隔壁が開き、せり上がってきた砲門からのビーム攻撃は、リーノの声に合わせて出現する重粒子シールドに阻まれ霧散する。


『ナーグミサイル』


 モビール時には無条件で使用可能だったシュピナーグのミサイルが発射され、断層へと向かっていく。


『バスターキャノン、ブラスト!』


 粒子加速砲を手に持ち、雄叫びと共に照射。


 単機、もしくはジェネレーターを直結した合体前の砲撃の数倍の威力をもった粒子砲に呑み込まれたミサイルが、反応弾をも大きく上回る爆発を巻き起こし、連鎖的に全ての空間断層を破壊した。


「こいつなら次元断層だって簡単にぶち破れるな」


 ラリーの額には、あまりの破壊力を目の当たりにした驚きから、大粒の冷や汗がにじみ出ている。


 ブラストレイカーは戦闘プランをラリーが立てて、カートが実行をし、カートの行動に必要な攻撃をリーノが可能にする。


 数度の砲撃も全てシールドで受けきり、背中のキャノン砲を敵に向ける。


『ハイランドキャノン!』


 シュピナーグが加速砲と同等の破壊力で、甲板のビーム砲を破壊する。


『熱源多数、来るわよ』


 リリアからの報告、センサーの有効範囲も広くなっていて、敵の小さな動きにも反応を示す。


 通常を取り戻した空間に、古代船から無人機がまた無数に飛び出してくる。


『こっちは私達に任せてちょうだい』


 ソアのコントロール下でベルトリカは突入して行き、無人機との戦闘の炎が上がる。


『ランベルト号とブルーティクスも来てくれたよ』


 ティンクの報告を受け、ラリーは任せられると判断し、3人はイグニスグランベルテに立ち向かう。


「こいつの武装は後付ばかりだな。カート、あいつの隔壁からは何が出てくるか分からん。注意しろ」


『ああ、分かっている』


 まさか内部まで復元はされてはいないだろうが、すでに廃棄されたブロックの跡は塞がっている。


「無人機の生産速度といい、化け物である事は間違いないが、いくら何でも無限再生というわけにはいかないだろう」


 連続攻撃を続けていれば、勝機も見えてくるはずだ。


「やつはシールドも張っていない。押し切るぞ」


『ブレイブエッジ!』


 カートが天狗丸、大蛇丸と呼んでいる、二本の夜叉丸専用の刀が一つに融合され、大きな剣になる。


「いったいどういう原理なんだろうな」


 悩んで出る答えではない事はさておき、剣を振りかざすブレイブレイカーを前に、ホログラムが浮かび上がり、合体巨兵より更に大きなラオ=センサオが投影される。

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