Episode04 「主導権を取り戻してやるぜ!」
アークスバッカーと夜叉丸は無人機の相手をしながら、徐々にイグニスグランベルテとの距離を詰め、格納庫から潜入して、中に待機中の無人機を完全に潰した。
「さてと、この先の工作機械を黙らせないとな」
完成したモビールはカタパルトへ移動する。が、その台座を破壊してアークスバッカーは奥の部屋へ。
夜叉丸は格納庫へ入ろうとする、自動修復マシーンを潰し続ける。
「よーし、アセンブルマシーンは徹底的に潰しておいた」
『こちらに向かってくる修復機ももういないようだ』
「そんじゃあ次、行くか」
この繰り返しで四カ所ある格納庫を順に潰して回った。
一応の確認を済ませ、シュピナーグを呼び寄せて金の船へ改めて突入する。
モビールから降りたラリーは、カートにソアラのガードを任せて走り出した。
重力波砲を利用して次元震を起こし、ベルトリカでこの巨大船を通常空間に押し出さなければならない。
「……俺だけでやれると思ったんだけどな」
「やっぱりね」
ラリーは大きな扉の前に立ちつくしていた。扉一つ開けることができない男にソアラはあきれる。
「開けられるか?」
「天に祈りなさい。ここにいるのが私でなく、フランなら何の心配もなかったのだろうから」
「いや、祈る必要なんてないさ。俺の期待を裏切るソアラじゃあないだろ」
自然と浮かぶ笑顔は自信の表れか? ソアラはパネル下の壁板を外して、配線を弄る。
「なにも、クラッキングだけが対処法じゃあないのよ」
開かれた扉の向こうは、ガードロボットだらけ。
「ラリー、私は守られるだけのお荷物じゃあないわよ」
ベルトリカのロボットガールズは、みんな同じように内蔵ウエポンを装備している。
それぞれの性格や戦闘スタイルに合わせて、機動力やパワーバランスのパラメーターを変えてある。
中距離支援タイプのソアラロボットは、ガードロボットのただ中に特攻し、あっさりと囲まれてしまう。
「バカか、お前は!」
「いいから見てなさい」
ソアラの持つトートバッグから、無数の小型ミサイルが飛び出す。
ガードロボットは一つ残らず動きを止めたが。
「いきなりそんなに使うなよ。ちゃんと配分考えろよ」
「このくらいなら大丈夫。また5分もあれば、また充填されるわ。このバッグは、ここの自動工作機と同じ物だからね」
と言っても無限にと言うわけにはいかない。作れるのは材料の分だけ。
配分を考える必要があるのはソアラも分かっている。
「後は任せるわよ。支援はしてあげるから」
「お次はガーディアンかよ。デカイ奴らが出てきやがったな」
大きいと言っても3メートル程度、ウォーミングアップにちょうどいい。
ラリーとカートは連携して、4体現れたガーディアンを一体ずつ片づけていく。
この程度の相手に新装備を使う必要はなく、ガーディアンはあっさりと頭を吹き飛ばされて、ソアラのミサイルが首から入って、内部で爆発する。
「これが重力波砲か。にしても自動防衛装置しか襲ってこないけど、あいつはどこにいるんだろうな?」
『ずっと見てたぜ。見事な手並みだな』
「おめぇこそ、上手い具合に俺たちを分断してくれたよな」
スピーカーから聞こえる声は確かにヴァン=アザルドのものだが、姿も見えないのでは、それが本物かどうかの判別はできない。
『なんだよ、俺に会いたいのか?』
「そりゃあ会いたいね。わざわざ新米テイカーを攫っていく理由も知りたいね。お前ほどのヤツが拘ってんだ。リーノはお前と同じ場所にいるんだろ?」
『ああ、いるぜ。この船のど真ん中。発令所ってやつによ』
「そうかよ。まぁ、もうしばらく預けておくぜ。腹一杯食わせてやってくれよ」
ラリーは重力波砲に爆弾をセットし、2人を連れてモビールの戻る。
「ティンク、聞こえるか?」
『ラリーラリー、おかしいことになってるよ。どうしたらいいの?』
「おいおい、慌てるな。何があった?」
『金ピカが重力波砲を出したんだけど』
「想定内だな」
『うぅ~うん、その砲台を船から分離しちゃってるんだけど』
「なに!?」
ラリーが爆弾をセットしている間に、ソアラが基盤を弄って重力波砲にエネルギーを充填させていた。
エネルギーを蓄えた砲台に、大きな衝撃を与えれば次元震が起こる。
船の中だろうと外だろうと問題じゃあない。
イグニスグランベルテは多重構造で、表層のワンブロックが吹き飛んだところで、轟沈する恐れはない。
次元震で通常空間と繋げられれば、ベルトリカで位相差空間から押し出すことができる。
『はずだったのに』
ソアラの計算は外れた。
荒くれどもの中に、古代船の配線を弄れる技術者がいるはずがない。あのヘル・サンクスペストことドクトル・ヘルだってそう簡単には出来っこない。そう細工をしておいた。
自分たちがモビールで脱出する頃には充填が完了し、爆弾を起爆すれば作戦は成功する。
それを見抜いたからなのか、ヴァン=アザルドにとっても大事な機能のはずの物を、あっさりと切り捨ててしまうなんて。
『エネルギー充填率60%、船とケーブルでも繋がっていれば、次元震を発生できたでしょうけど、あの状態では無理ね』
宇宙に飛び出したシュピナーグから漂う砲台を見て、ソアラがきっぱりと言った。
「他に方法は?」
『あれがなかったら、あいつらだって、この異次元から抜け出すことは出来ないのよ。もちろんベルトリカもだけど』
ご丁寧にヴァン=アザルドは重力波砲をミサイルで破壊した。自動工作機もラリーたちに破壊されているのに。
「何考えてんだ、あのヤロー!?」
『ブラストレイカーへの合体ができればな』
そうだ。カートの言うとおり、ブラストレイカーのバスターキャノンなら次元の壁に穴を開けることが出来る。
『ごめんね。古代遺産の超兵器一つも自由にできないくせに、宇宙1のロボット工学者なんて呼ばれてて』
「なにも言ってないだろ。拗ねるな」
やはり先にリーノを救出するべきなのか?
敵の戦力が判明しない今、この3人だけで突っ込んでもいいものか。
「せめてティンクが出られれば、状況も変わるんだけどな」
ベルトリカの守りをAIだけにするのは得策ではない。せめてアンリッサが同乗してくれていたならと悔やまれる。
アンリッサはこの作戦に、警察機構軍が介入してくるのを抑えるために、ノインクラッドに残ってもらっている。
『ラリー、敵の主砲がそっちを狙ってるよ』
「動き出しやがったな。2人ともベルトリカに戻るぞ」
こうなったら撃ち合いで金色の船を黙らせて内部へ突入、総力を挙げて制圧する他ない。
もっと慎重に考えれば、妙案が浮かぶかもしれないが、現状打破が先決な場面。
全員が疑問も抱かずラリーの指示に首を縦に振った。
通常空間では騒動も収まり、ジャッジメントオールも合流した。
イグニスグランベルテの無人モビール達を全滅させたグランテのソアは、大慌てでベルトリカの現在地を探るが、手掛かりの一つも見つけることができずにいた。
「焦らないでお姉ちゃん」
オリビエはソアをチーム1早く、フランとして受け入れて、昔のように呼んでいる。
「焦るに決まってるでしょ! あいつは私が無茶すんなって言っても、昔っから一度たりとも聞いてくれたことなんてなかったわよ。本当に人の気も知らないで」
「それ、お姉ちゃんが言う?」
つい最近まで人のことを言えない行動を取っていたソアは、胸に手を当てて黙ってしまう。
「ワンボック・ファクトリーのオルボルト代表から、連絡があったんでしょ?」
「うん、ベルトリカにも念のために積んでいる、ランベルト号担当の反応弾を断層の表と裏から、同時に同じ座標で爆発させたら、次元震を発生させることができるって」
それでイグニスグランベルテを取り逃がすことになったとしても、ベルトリカは通常空間に引き戻すことができる。
だがその肝心の現在地と、情報を届ける手立てがない。
無駄と分かっていても、ソアがキーボードを叩く手を止めることはできなかった。




