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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode23 「大人しくお縄につきやがれ!」



 ガテンでの追跡は間に合わず、取り逃がしたヴァン=アザルドの足取りにも見失ってしまった。


 カートに遅れること5時間、アポース巡査長との行動を終えて、ベルトリカにラリーが帰還してすぐに、フランの提案でミーティングが行われた。


「客船事件からこっち、噂も聞かなくなったヤツの名前が、頻繁に挙がるようになって2ヶ月、ようやく足取りが読めてきたと思ったんだがな」


 変装をすることなく、パスパードに集まるクリミナルファイターに情報を求めるアポース。


「旦那こちらへ」


 荒くれ共からの歓迎を受け、あっと言う間に包囲される。


「俺たちの中心へ」


「おやっさん、こいつらは?」


 友好的な連中は全体の3割。


「おお、ラリー。俺は今からこいつらと話がある。他の連中の相手はお前に任せるぞ」


 残りの7割はラリーと拳で語り合うこととなった。


「まっ、まさか俺をここに連れてきたのって、このためか!?」 


 問答無用で向かってくるファイターは、ラリーと縁のある連中だった。


「こいつら見覚えあるな、……俺が以前にのした奴らか。いいぜ、来いよ!」


 あの港での喧嘩とは違う。歯ごたえのあるファイターばかりだが、頭に血の上ったラリーの敵ではなかった。


「なんだぁ、もう終わりかぁ!!」


 吠えるラリーが、アポースの情報収集の間にのした人数は38人。


 ラリーの暴れっぷりを見て、荒くれ者どもも無闇に突っ込むのをやめ、睨み合いとならなければ、あと25人は相手にしなければならなかっただろう。


 アポースが引き上げると言ってからも、飛びかかってくるやつを2人ぶん殴りパスパードを出た。


「念のためにフル装備で来るように。って言われていたんでしょ?」


「それこそ挑発にしかならねぇだろ。たかが喧嘩に銃やナックルはねぇよ」


「それでもヘッドギアくらいはつけておきなさい。それ以上バカになったら洒落にならないよ」


「頭を打たれるようなヘマはしねぇっての」


 バカになる云々は聞き流し、ラリーは傷の手当てを続ける。


「背中側は俺が塗ってやろう」


「おお、サンキューな、カート」


 パスパードに集められたのは、金で雇われた言わば傭兵みたいな頭数。


 アポースの世話になり、恩義を感じている犯罪者が複数いるらしいからと、話しを聞きに行ったのだ。


 とは言え、その供述を信用するかどうかは、巡査長とフラン次第という事で。


「これでヴァン=アザルドの行動が読めると?」


「試しに調べてみたら、ヒットしちゃったのよ。これがパブリックカメラの映像に」


 アポースが聞き出したヴァン=アザルドの行動予定通りに、監視映像をチェックすると。


 全ての映像に映る、あるデータが一致する人物が特定され、自動追尾を始めたとフランは言う。


 その設定されたデータとは身長と骨格。


 服は色や簡単な形を、ボタン一つで変えることができる。


 市販の物なら後から照合できると言うが、決定的な証拠とはならない。


 やはり抑えるなら身体的特徴が必要だが、どんなトリックがあるのか分からないが、ヴァン=アザルドは顔の形を一瞬で変えられる。という証言が多数上がっている。


「監視カメラの映像だけじゃあ、顔や服装での追跡は不可能だけど、そこに身長と骨格のデータを合わせれば」


「確かに絞り込めてるな。ときどき2人以上にマーキングが付くな」


 そこから数分後、顔と服装が替わっている容疑者に、マーキングを残して追跡は続けられている。


 今、設定した人物が潜伏しているのはワールポワート。


 キリングパズールからほど近い開拓惑星。


 そのほとんどが観光客とあって、ノインクラッドやキリングパズールと比べるとあまりに人がいなさすぎる。


 その中でも特に人影のない山奥に追跡者は向かう。


『まずいわ。そんな奥地まで行かれたんじゃあ、カメラでは追えないわね』


 フランはアックスバッカーで待機するラリーに話しかける。


「もしかして失敗か?」


『ふふん、あまいあまい。こんな事で撒いたと思っているなら、ヴァン=アザルドは恐るるに足らずね』


 ほくそ笑み、自信満々のフランはアックスバッカーにデータを転送する。


「これは?」


『ねっ、あからさまに怪しいでしょ。間違いなくなんかの罠か誘いか』


「だが、ここに何かあるのは間違いなさそうだな」


 森の中に微かな反応、熱量からしてモビールが隠されている。


「行ってみるしかないか」


『とっくにワールポワートに向かってるけど、あと1時間くらいかかるわよ』


「分かった。カート、一緒に来てくれ。ティンクはベルトリカでフランのサポートな」


 後手後手なのはしかたない。でも今度こその決意を持って、ラリーとカートは到着したワールポワートへ降りていく。






 モビールはあった。罠はなかった。ターゲットはいた。奇襲は成功しなかった。


「ようクソガキ、久し振りじゃないか」


「おっさん、こんな所で何をしてんだ。ってか、こつこつと準備して何を企んでるんだ?」


「おいおい、サプライズを前もって教えるヤツがいるかよ」


「迷惑なサプライズならお断りだぜ」


 背後に回ったカートが跳びかかる。


「ようカートも、久し振りの再会に興奮しちまったかぁ」


「キサマ、またフウマの若者を!」


 カートの愛刀“烏丸”を受け止めたのは、名前は知らないが、里に戻った時に聞いた行方不明者の少年A。


「カート、お前の後ろにまだ2人いるぞ」


 カートは大きく後ろに下がった。残りの2人もフウマの少年、BとC。


 その表情はラリーと出会った頃の自分にソックリ、カートは洗脳が解かれた時のことを思い出す。


「強い衝撃を与えれば……」


「残念。確かにお前はそれで正気に戻ったが、ガキはチビになればなるほど、深層まで支配できるようになる。元に戻すには、殺すくらいのショックを与えるしかないぞ」


 ヴァン=アザルドを守るように立ち塞がる3人は、いずれも8歳だとヘレンが言っていた。


「やる事は変わらねぇぞ、カート。眠らせるくらい簡単だろ?」


 そうだ、まともに相手をしてやる必要はない。


 諜報員になるべく訓練を始めたばかりの子供が3人。無力化するのは至って簡単。


 後は里へ送り、元に戻してもらえばいい。


「こっちは任せておけ」


「逃がしたら承知しないぞ」


 カートはラリー達から少し距離を取る。少年達がそれを追う。


 ヴァン=アザルドはラリーしか見ていない。それが気になったが、カートは少年たちに集中する。


「時間はかけられないな」


 訓練を始めたばかりと聞いていたが、体術の基本はできている。氣の練り方も悪くない。


 5歳からの初期教育課程で、この3人は既に将来を嘱望されていたことだろう。


「こいつらは高位工作員になれるだろうな」


 少年Aを中心にフォーメーションを組んでくる。そんな戦術は、まだ訓練で教えられていないはず。


「……人知れず潜入して、これだけ優秀な子供を狙いうちで、3人も連れ出せるものか?」


 3人の内の2人が正面から連係攻撃を続け、残りの1人がカートの死角に周り込む。入れ代わり立ち代わりしかけてくる。


「末恐ろしいな」


 タイミングもバッチリで、反撃もしにくい。


「俺が教官なら満点どころか、ボーナス点も付けたくなるな。しかしだ!」


 少年たちの動きは、訓練プログラムに忠実すぎて、次の手が読めてしまう。


「これが外部活動を許可された者の実力だ。意識はなくても体は覚えているだろう」


 簡単なフェイントに引っかかり、カートの誘導にあっさり乗り、本人達には自覚のないうちに気絶させられてしまった。


「目を覚ましても面倒だな」


 カートは黒い丸薬を腰につるした小さな袋から取り出して、少年達の口に放り込み、姿勢をいじり呑み込ませた。


「これでよし、ラリーはどこへいった? ヤツを抑えただろうな……、なに!?」


 カートはラリーの位置情報を探っていて、そのアクシデントへの反応が遅れてしまった。

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