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ISRIGHT -銀河英雄(志望の)伝説-  作者: Penjamin名島
motion04 黒の章
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Episode13 「宇宙船戦闘ってスゲーな!」



 豪華客船から離れたベルトリカは少し距離をとった。


「いいのか、客船を護らなくても」


「私たちの依頼主はあくまでキャリバー海賊団。地獄の沙汰も金次第。客船から直接交渉があるなら、それはその時」


 そんな後味の悪い事をフランがするのか、ラリーの知らない何か裏があるのではないか。


「アンリッサに何か言われているのか?」


「な、なにって、何もないよ。なに言ってんの!?」


 態とらしい。アンリッサとフランの事だ、何かを掴んでいるのは間違いない。


「……アークスバッカー、使わせてもらうぞ」


「勝手を言わないで。今は見ているだけよ」


 ラリーには言えない何かが起きている。


 襲撃者が何者なのかを知っているのかもしれない。


「さぁ、観戦しましょう。謎の海賊船とランベルト号が交戦するわよ」






 謎の海賊団はアザルドを名乗っている。


「聞いた事ないな。大型船に中型船が2隻、結構な元手があるようだ。新参では有り得ないな」


「ブラガ、あいつらはなんでこんな、警察機構軍の巡回航路で襲ってきたと思う?」


 警報から3分、キャプテンシートに沈むように、腰を折るミリーシャは状況を確認する。


「お早いお帰りですな」


「会場の近くにエアーロックがあったからな。宇宙空間を飛べば、あっと言う間だ」


 初めての宇宙遊泳を、エルディーのサポートはあったとは言え、慌てることなくランベルト号のブリッジ裏に取り付いた。


「キャプテン、どうも様子がおかしい。機構軍が動いていないみたいだ」


「通報に対する回答です」


 ブラガは目線をモニター画面から移すことなく、索敵兼通信士が回答内容をキャプテンシートに転送する。


「ノインクラッド近辺で大規模戦闘って、一体なにがあったっての?」


 それは戦闘後に判明するのだが、これはブラフ情報だった。


 そもそもの警報が警察機構軍に届く事もなく、全てがアザルト海賊団の下準備にハメられた結果だ。


「どうします? ベルトリカが離れていきましたが」


「ラリーめ、……いや、これはフランの仕業か。離れたと言っても離脱したわけではないだろう? 今は目の前の敵に集中する。客船が危なくなるようなら、客船がベルトリカを当てにするだろう」


 ノインクラッドの案件が落ち着けば、警察機構軍も来てくれることを期待し、ランベルト号のメインエンジンに火が点る。


 高濃度粒子を散布するランベルト号は、敵のビーム攻撃を物ともせず前に。


「中型船が左右に分かれて、回り込もうとしています」


「砲撃開始、問答無用で撃沈していいわ」


 それは混沌の宇宙の海で生まれた暗黙のルール、撃たれたら撃ち返せを実行する。


 ランベルト号が放ったのもビームだが、高濃度粒子はまるで生きてでもいるかのように、穴を開けて荷電粒子を通し、砲撃後の防御を固める。


 被弾する中型船が撃ち返してくるが、それも赤の船には届かない。


「フェルミ粒子増大、前方の大型船です!」


 それが敵の切り札であろう、フェルミオン砲の充填が完了しようとしている。


 これを凌げれば、敵の戦意を削ぐ事ができるはず。


「荷電粒子砲で迎え撃つ!」


「うむ、キャプテンの決定に従おう。荷電粒子砲準備を」


 相手は発射寸前。素人でも間に合うはずがないと分かるタイミングだが、トップツーの判断は違っている。


「60%でいい。間に合わせて」


 ランベルト号のフィギュアヘッドは人魚。


 その下の隔壁が開き、荷電粒子砲が姿を見せる。


「敵粒子砲、臨界のようです」


「こっちは?」


「充填42%」


 機関士からの報告、推算のエネルギー量には達していないが、それに賭けるしかない。


「砲、きます!?」


「発射!!」


 閃光防御は各自に任せ、短く発射命令を出す。当のミリーシャ自身は間に合わず、目を瞑って顔を背けるのみ。


「まだまだですな。キャプテン」


「ブラガ……、自分だけズルイではないか」


 サングラスを外す副長はいち早く状況を確認、ミリーシャに報告する。


「粒子砲の競り合いは流石に負けてしまいましたが、ランベルト号のシールドで残りを霧散させる事に成功しました。無傷ですよ、我々の船は」


 ブラガの指示で再充填は開始される。


 ビームを撃とうにも出力が下がっているので、ここはミサイルで対向するようミリーシャが命令する。


 敵の中型船に向かうミサイルは、全て艦砲で落とされてしまうが、先のビーム攻撃でかなりダメージを与えられていたようだ。


 後方に廻られた中型2隻だが、しばらく放っておいても大丈夫だろう。


「大型船もこっちの熱量を関知して、再充填を開始したようです」


 これは好機である。後方の船は確かに戦力を落としているが、まだ沈黙しているわけではない。


 大型船が乱戦に持ち込んでくれば、全方位されたまま、近接戦を余儀なくされてしまっていた。


 近接戦で多くのモビールを出されでもしたら、いかなランベルト号でもただでは済まなくなる。


「充填率80%。敵はまだ先の砲撃の半分くらいにしか、熱量は達していません」


 あれだけの粒子砲を連射できるだけでも、敵船のランクの高さが計り知れるというものだが、仮にも古代文明を取り入れたランベルト号の敵ではない。


「対閃光防御。今度こそ終わらせるわよ。……発射!」


 先に撃ったのはランベルト号。数秒遅れでフェルミオンが飛び出すが、荷電粒子の前にあっさり吹き飛び、大型船は閃光に飲み込まれた。


「……全く、最低の幕引きだな。ラリーには負けてしまったが、最高のショーであったというのに」


 どこかでダンスの相手に指名しよう。そして今度こそ逃がさないようにしよう。


 同業とは言えないが、似たもの同士の海賊とテイカー、繋がりが断たれる事はない。


「左舷後方、高速で突っ込んできます」


 荷電粒子に飲み込まれた大型船は、炎に焼かれて轟沈する。


 そちらに注目している間に襲ってきたのは、中型船のうちの1隻。


 荷電粒子の連続発射で、シールドも解除されたランベルト号に特攻を仕掛けてきた。


 だが……。


「中型船、沈黙。ベルトリカの援護です」


『よぉ、大丈夫か?』


「何しに来た?」


『お前らがやられたら、誰から報酬をもらえるんだよ?』


「そんな心配はいらん。私らに何かあっても、客船会社からお前達の取り分は受け渡される。その客船を放っておいて、なにかあったらどうする?」


『なに!? フラン、お前これはどういう事だ?』


 敵の狙いは間違いなくこのブリッジだった。


 ベルトリカチームに助けられたわけだが、それを悟られるわけにはいかない。


 自分たちは助けなんてなくても切り抜けられたと、相手に思わせる必要がある。


「敵船はまだ1隻いたはずだ」


 ブラガが索敵に確認させる。ものの例えに口にしただけだったのに、いなくなった1隻は豪華客船を狙っている。


「不味いぞ。もうやつらは彼の船の目前だ。恐らくは乗客もあの会場に集まったままだ。副長、私らも突撃艇で乗り込むぞ」


 勝利を確信した後の急展開、今から向かったところで、乗客並び船員が人質に取られたら逆転負けが確定する。


「ラリー、追加の依頼よ。報酬を受け取りたいなら、問答無用で参加しなさい」


 ランベルト号は間に合わなくても、ベルトリカの足ならまだ間に合うはず。


 あの中型船のサイズからして、乗組員の数はたかが知れているだろう。


 ラリーの腕なら、足止めもできるはずだ。


『ダメよ。今回のは相手が悪い。ベルトリカはこの件から手を引く。ショーの代金も請求しないわ』


 ラリーからベルトリカのコントロールを奪い返し、フランがミリーシャに返答する。


「そんな事を言っている場合じゃあ」


『ごめんなさい……』


 通信は一方的に断ち切られた。


 ここに来て足の速いベルトリカを当てにできないとは……。


「くそ、なんなんだ!?」


 もう打つ手が思いつかない。ミリーシャは唇を嚙んだ。


「落ち着けキャプテン、突撃艇はもう客船だそうだ。エルディーの判断が功を奏した」


 その突撃隊長から、賊の進行は水際で食い止めていると報告を受け、ミリーシャは士気を取り戻し、ブラガと共に豪華客船を目指して宇宙空間に飛び出した。

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