鬼が島2 激辛バナナと洞窟の謎
洞窟に入って一息つく。
ゲーム内では、「服が濡れる」という状態は長続きしない。
武器には「耐久度」があるが、服には耐久度がないため、いつも新品同様の状態が保持される。
「あまり、奥に行くなよ。何かPOPすると困る」
赤影さんの注意に従い、洞窟の入り口付近に座り込み、休憩する。
「武器を直すから貸して~」
波野が、みんなの武器の補修を行ってくれる。
武器の耐久度を回復するためには、整備や補修を行わなければならない。
「じゃ、こっちは飯でも作るか~」
俺は、雨が降る前に確保した、食べられそうなバナナを大きめの葉っぱでそれらしく盛り付ける。
最近開発中の新作「抹茶もんぶらん」の為に、『茶の湯』と『調理』スキルを手に入れた。
こんなところで役に立つとは思わなかったが。
「私は戦闘してないから、先に食べてていいよ~」
戦闘すると、疲労ダメージが蓄積する。
その回復方法は、休憩と食事。
波野には悪いが、先に食べさせてもらおう。
「じゃ、お先に」「いただきます」
バナナの素朴な甘さが、疲れた体に染渡る。
ステータス画面を見なくても、心身の疲労が回復していくのが解る。
「辛っ!すげぇ辛いぞ このバナナ」
佐野が口に含んだバナナを、洞窟の外に吐き出す。
「そんなばなな」
赤影さんの親父ギャグをスルーし、佐野から渡されたバナナを一口食べてみる。
「ぐぇ!」
辛い!まるで、タバスコのように辛い。舌が焼けるように痛む。
洞窟の外に出て、スコールで口をすすぐ。
佐野もやってきて、隣で同じことを始めた。
「ぐぎゃ!」洞窟からさらなる悲鳴が聞こえる。
鷹目が横に並んで口をすすぐ。3バカという言葉が頭に浮かんだ。
口中の痛みが引いてから、洞窟に戻ると、
他3人からの憐れむような視線が、心に少し痛い。
「さて、補修と整備終わったよ」
「ありがと」「わりぃ」
耐久度が回復すると、装備は新品のような見栄えに戻った。
■
「さぁて、今日はこの洞窟を少し回って終わりにするか」
「賛成」「OK」
この洞窟の中は結構広い。
入り口は、狭まっているが、洞窟の中は学校の教室なみの広さがある。
波野が作業用に点火した灯りのおかげで奥まで見通せるが、
今のところは何もいない。
地面に獣毛は見当たらないので、先ほどのグリズリーとは関係ないと思われる。
30分くらいの休憩の間、何も襲ってこなかったので、
入り口付近だけであれば、安全地帯なのだろう。
「じゃ、奥に進むぜ」
赤影さんが、2,3歩洞窟の奥に進むと、洞窟の奥から声が聞こえた。
「ふふふ、朝廷の追手か。我ら赤鬼が相手になろう」
洞窟の奥から現れたのは、角が2本で身長2mくらいの大きな赤鬼1体と、
角が1本で人間サイズの赤鬼が2体。
いずれも、金棒を持っている。
「この辺りがPOPラインかな」
「そうだな、印をつけておこう」
「消えないようにしっかりとな」
ここは、貴重な安全圏のようだ。赤影さんとほえもんさんは、POPラインの確認と印つけをしている。
あっちは忙しそうだから、俺が相手してやるか。ちょっと鬼が悲しそうだし。
「神器はどこだ?」
「知らんな。我らが頭領、鬼神大魔神さまが持っておられる」
「頭領はどこだ?」
「お前らはここで死ぬのだ!生き残れたら、この島を探すがよい!」
3体の鬼が襲いかかってきた。この辺でフラグは立ったかな。
「うりゃ!」佐野が大赤鬼を一刀のもとに切り捨てる。
「あれ?なんか、弱いぞ」
ならば、『勧誘』!
「ボスはやっつけたぞ。投降しろ~」
「ヘイ!おやびん!」「がってんだ!」
鬼兵士2名ゲットだぜ。
中ボスの強さは全難易度共通っぽいな。
さっそく鬼兵士に尋問を行う。
「おまえら、神器って知ってるか?」
「「yes,No サー!」」
訓練された鬼だな。
「おーい、こっちになんか書いてあるぞ」
ほえもんさんと赤影さんが洞窟の奥からみんなを呼ぶ。
洞窟の壁には、ひらがなが数行にわたって書かれていた。
ばたかたは
しなたたた
たたなきた
やたたかた
たたたたわ
いたそたう
■のてかみ
(■は、たぬきの絵)
しばらく、みんなで考える。
鬼兵士に聞いてみたが、「わからない」の一点張り。
「まぁ、今日のところはこのくらいにしておくか」
ほえもんさんが、本日の切り上げを宣言する。
「賛成。入口の安全地帯で落ちておこう」
赤影さんも入口に向かって歩き出す。
「これだけやっておかないか?
たぬきだから、【た】を抜けばいいんだろ?
簡単じゃないか、ば「佐野、やめておけ」」
俺は、佐野が言いかけるのを制して、入口の方に彼を引きずる。
「え~、これ簡単じゃない。
ばかはしななきゃかわいそう でしょ?」
波野のフォローは、鷹目に間に合わなかった。
「じゃ、明日の夜9時に集合。
早めにくる場合は、このPOP線に注意で」
「お疲れ~」「また明日~」
みんな、鷹目の顔を直視できず、早々にログアウトした。
■
ネットを見ると、鬼が島の地図が完成しつつあった。
情報によると、難易度にかかわらず、地理や地形は同じようだ。
節分によくある、鬼の面のような外周。
頭には、二本の角がはえている。
角の部分は砂浜になっており、ヤシの木が生え、まるでリゾートビーチ。
そして、目の部分は池。右目の池は、こんぶのような海草が生い茂り、視界が遮られている。
左目の池は、澄んだ水が湛えられていて、大きな魚が何匹も見えたそうな。
そして、双方の池から海に向かって、川が流れている。
鼻の部分は山になっており、鼻の孔は洞窟で現在進行形で調査中。
どこの難易度でも、洞窟は中ボスが湧いて、奥に「ヒント」があるようだ。
ただし、ヒントは各々異なっていて、俺たちの手掛かりになるようなものは無い。
簡単なものでは、「りものげゆま」と、まんま神器の在り処を示していた。
口の部分は丘になっていて、口から中に入れるようすは今のところ無さそう。
スクリーンショットで保存したヒントを携帯端末に転送し、
今日は早めに寝ることにした。
次回「鬼が島3 反逆の魚介類」
さらなる罠に負けるな!




