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ダンジョンキラー  作者: 佐々木尽左
第7章 高校生活に慣れてきた頃

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試験に向けての勉強

 試験直前の週末を祥吾は迎えた。1学期の期末試験と同じ結果を出すのならば自信はある状態だ。前期で勉強の仕方は理解し、2学期に入ってから忠実にこなしているので今のところは予定通りに進んでいる。


 ただ、それ以上の結果を出すとなると難しかった。同じ10点を上げるにしても、60点からと80点からではかける労力がまったく違う。元の点数が高いほど引き上げる難易度は高くなるのだ。前回の平均点が80点台となるとその苦労は結構なものである。


 今後は以前よりもクリュスが協力してくれるのでその点は心強い。素の状態で平均90点以上を叩き出す才女がいれば何とかなるような気もする。だが、それに頼りきりというのは祥吾としても面白くなかった。そのため、祥吾は試験直前の週末は今まで以上に気合いを入れて勉強することにする。


 今回は祝日を含めて休日が3日間あった。これは数少ない救いで、最初の2日間は自分で勉強して、3日目はクリュスに色々と教えてもらう計画を立てる。


 土曜日、祥吾は全教科を大まかに見直した。普段から復習をしていたので結構頭に残っていて安心する。こういうときにやっていたことを実感できるのは本当にありがたい。ただし、抜けや不明点はもちろんあるのでそこは洗い出しておいた。


 日曜日、祥吾は前日に見つけた疑問点などを重点的に復習する。わかる部分は適当に流して、わからない部分に時間をかけるのだ。ここで重要なのはある程度時間をかけてでも自分で解こうとすることである。今ここで重要なのは最後まで自分の力で解こうとする姿勢だ。これが試験本番のときに奇跡の回答へと繋がることがある。そのための訓練だ。


 とはいうものの、祥吾がどんなに考えても中にはわからないという問題もある。それは諦めて最終日へと回すことにしていた。頼れる才女がいるので、最後の一手として頼るのだ。


 そうして週末の2日をほぼ使い切った祥吾は日曜日の夜に自室で寝転がっていた。この2日間はほぼ勉強漬けになっていたが、寝る前はわずかな自由時間にしているのだ。息抜きはどうしても必要なのである。


 スマートフォンを操作して色々と眺めている祥吾だったが、ウェブ小説は読んでいない。最近は連載物を読むことが多くなってきたので切り上げ時が難しくなってきているのだ。中間試験が終わるまでお預けである。


 代わりにウェブサイトを巡回して祥吾は時間を潰していた。記事のタイトルを見て興味が湧いたものを呼んだり、特定のキーワードで検索をかけて出てきたブログを読んだり、過去に見た面白いと思った動画を見たりなどと割と漠然と巡っている。


 そんな中でもダンジョン関連の話題に偏ってしまうのは仕方がなかった。自分が直接関係していることになると目に付くのは自然なことである。ダンジョンが大量放出をしたという情報、成功した探索者の話、魔力抽出に成功したその後の経過などを漠然と眺めていった。


 その中に、当てにならない噂話も含まれている。行方不明になった探索者にまつわる話やこの世に未練を残した探索者の怪談話などがいくつもあった。祥吾などは、大体見るものがなくなってきたときに手を伸ばすことが多い。


 色々見ている中で、祥吾は最後に新宿ダンジョンにまつわる話はないのかと調べてみた。あれだけ大きなダンジョンで数多くの探索者が出入りしているのならば、何かしらあるように思えたのだ。


 いくらか操作してみた祥吾は首をひねる。


「うーん、どれも大したことはないな」


 噂や都市伝説と呼ばれるものは大半が誤報や勘違い、それに創作だ。そのため、どこかしら似通った部分があることも珍しくない。そういうのを気にせず楽しめるのならばともかく、粗が目に付く性格であればその重複が気になるだろう。


 こういった類いの話にのめり込んでいるわけではない祥吾はそれらの話につまらなさを感じていた。例えば、目の前を歩いていたいた探索者が突然消えた、気付いたら見知らぬダンジョン内にいた、地図情報が役に立たない階層に迷い込んだ、などである。


 他のダンジョンでもありそうな話ばかりで祥吾の興味をそそるものではなかった。しかも、書いてある内容が漠然としていて考察もできない。


 スマートフォンの画面の端を見た祥吾はもう寝る時間になっていることに気付いた。今日はここまでである。


 画面を暗転させたスマートフォンを脇に置いた祥吾は布団に入った。




 翌日、祥吾はいつも通り起きると日課をこなし、朝食を食べて勉強を始めた。いつもならウェブ小説を見ている時間なのだが、試験前日にそんなことをする度胸はない。


 明日からの3日間に備えて祥吾が勉強をしていると、階下の玄関で母親の春子が誰かを迎えている声を耳にした。脇に置いたスマートフォンの画面を見ると約束の時間であることを知る。それから、階段を上がってくる静かな音がした後、扉をノックする音がした。


 振り向いた祥吾が声を上げる。


「入って良いぞ」


「お邪魔します。あら、ちゃんと勉強していたみたいね」


「今回は今まで以上に頑張らないとまずいからな」


「大変よね。それじゃ早速始めましょうか」


 今日は学習机に近づいたクリュスは祥吾の隣に立った。机の上に広げられた教科書やノートに目を向けながら祥吾に話しかける。それが合図だった。


 この2日間で準備をしていた祥吾は不明点や疑問点を順番にクリュスへとぶつけていく。そうしてひとつずつ解決しては頭の中で整理し、覚えていった。


 勉強を始めてからしばらくすると母親の春子が部屋に入ってくる。手には茶と茶菓子が載っていた。それを機嫌良さげに机の横へ置く。


「祥吾、頑張っているわねぇ」


「人を追い込んでおいてよく言うよな」


「ひどいわねぇ、追い込むなんて。ちゃんと頑張っているんだったら、何も言わないわよ」


「父さんは言ったじゃないか」


「うふふ」


 楽しげに笑う母親に半目を向けた祥吾は笑って誤魔化された。実に面白くない態度である。そのまま部屋から出て行くのを見送ると小さくため息をついた。ちらりと横を見るとクリュスが苦笑いしている。


「楽しそうだな」


「他人の不幸は蜜の味と言うじゃない」


「おい」


「ふふふ、冗談よ。これで成績が落ちたら私の責任でもあるんだから、絶対に良い点数を取ってもらうわよ」


「ちくしょう、やぶ蛇だったか」


 嫌味のひとつでも言ってやろうとした祥吾だったが、逆に厳しく指導するきっかけを与えてしまったことに気付いた。今更歯噛みしたところでもう遅く、母親がやって来る前よりも少しだけ容赦なくなってしまう。


 朝が終わり正午を回ると昼食だ。勉強を中断した祥吾とクリュスは食卓へと向かう。そうしてメンチカツやとんかつなど、昨晩の残りである揚げ物を中心とした料理が並べられているのを見た。祥吾はそれらを丸まるいくつも白米と共に口へとかき込み、クリュスは切れ端をいくらか上品にいただく。


 そんな自分たちを見る両親の様子を見た祥吾はいつも通りなことに少し戸惑っていた。何か一言くらいあるのではないかと身構えていたが、そんなことはなかったのだ。このとき、クリュスが前に言っていたことを思い出す。案外現状維持ができていれば本当に何も言われないのかもしれないと考え始めていた。


 ただ、そうは言っても勉強に関してクリュスは手を抜かずに指導してくる。それは結構なことなのだが、厳しい指導は変わらなかった。どうやら責任というものも本当に感じているらしい。最後まで厳しい状態が続いた。


 夕方、ようやく全教科の勉強が終わる。


「あー終わったぁ」


「お疲れ様。今の調子を明日からも発揮できれば、高得点は間違いなしよ」


「俺にとっての高得点は80点以上なんだけれどなぁ」


「そんなこと言わないの。これから復習するわよ?」


「悪かったって」


 椅子の背もたれに思いきり寄りかかった祥吾が大きく息を吐き出した。やれることはすべてやったので、後は明日を待つばかりである。


「クリュスは晩ご飯を食べてから帰るんだろう?」


「ええ、いただくつもりでいるわよ」


「それじゃ、その間何をしようかな」


「復習の手伝いなら喜んでするわ」


「少なくとも晩飯まではやりたくない。食べた後、明日の分だけ軽く見直すんだ」


「それで良いわ」


 微笑みながらクリュスが学習机から離れ、部屋の隅にある座布団を1枚取ってきてから座った。祥吾も今日は椅子にではなく座布団を敷いて畳の上に座る。


 それから祥吾はクリュスの主導で最近の流行について話すことになった。主に女性の流行についてなので祥吾にはさっぱりわからない。例え男性の流行でも結果はかわらないが。


 ともかく、どうやって話を進めれば良いのかわからないまま、祥吾はクリュスの相手をした。

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