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ダンジョンキラー  作者: 佐々木尽左
第5章 高校1年の夏休み(前半)

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調査および討伐の説明会

 ファミレス『アットホームズ』で恵里菜たちと会った祥吾とクリュスは3日間だけ4人に協力することになった。恵里菜たちは3日間だけというのに落胆するが、夏休みの間に他のダンジョンに向かう必要がある2人にとってはこれ以上の譲歩はできない。


 協力することになった翌日、6人は探索者協会による世田谷ダンジョンの内部調査と魔物討伐の説明会に参加することになった。午前9時に説明会が始まるため、それまでに世田谷支部へと向かう。


 支部の本部施設にたどり着いた祥吾とクリュスは中へと入った。すると、前日までとは打って変わってほぼ人がおらず、がらんとしていることに驚く。


「昨日までの騒がしさが嘘のように誰もいないな」


「世田谷ダンジョンが閉鎖されているのだから当然なんだけれども、違和感があるわね」


 事前に予想できてもいざ目の当たりにすると思わず立ち止まってしまう光景だった。祥吾などは物珍しげに周囲に目を向ける。


 そんな2人がロビーの隅で立っていると、新たに4人の女たちが入ってきた。恵里菜たち4人だ。あちらも祥吾たちに気付いたようで真っ先に友恵が声をかけてくる。


「2人とも、おはよー!」


「おはよう、友恵。朝から元気ね」


「そりゃもちろん! 説明会が終わったら『胸焼け』に行こう!」


「朝一から胸焼けしそうな話だな」


 隣でクリュスと友恵の挨拶を聞いていた祥吾は苦笑いした。今日の昼食が決まりそうだ。


 合流して6人になると一同は受付カウンターへと向かった。そこで世田谷ダンジョンの調査および討伐の説明会に参加する旨を伝える。すると、探索者教習で使う受講室を案内された。


 6人は教えてもらった受講室へと向かう。その間も歩きながら雑談を続けた。


 歩きながら祥吾は恵里菜に話しかける。


「昨日松岡とその仲間を助けたんだが、あいつらも指名依頼を受けたんだろうか?」


「あいつらには届いてないだろうね。地下4層以上で活動してる連中だから」


「そうか、そんなこと言っていたか。あー、確か豚鬼(オーク)を見慣れていなかったみたいだから、実際そうなのか」


「そうなんだ。やればできるかもしれないけど、あいつら基本的にだらしない連中だからいつまで経っても上の層止まりなんだよ」


 仕方ない連中だと言って肩をすくめる恵里菜を見た祥吾は曖昧な笑みを返した。確かにその通りなのかもしれないが、やればできるかもしれないというのは恵里菜たち4人も同じだ。祥吾としてはこの4人がやりようによっては地下9層の番人を倒せるのではと考えている。しかし、その点には触れない。


 受講室に入ると既に半分以上の席が埋まっていた。本来の使用目的である探索者教習でも席はここまで埋まらないので祥吾は少し驚く。


 空いている席に向かう途中、友恵と由香が手を振っているのを祥吾は目にした。そちらへと顔を向けると6人の女たちが固まって座っていることに気付く。知り合いの探索者パーティらしい。周囲が男ばかりなので珍しかった。


 席に座るとクリュスが由香に問いかける。


「地下5層以下で活動している人たちはこれで全員なのかしら?」


「もっとたくさんいるよ~。今はいないだけだと思うな~」


「昼からの説明会に参加する人の方が多いっすよ。みんな朝に弱いっすから」


 小鳥の説明にクリュスが苦笑いした。


 説明開始時間の少し前に職員が3人入ってくる。1人が教壇に上がり、残る2人はホワイトボードに映像を投射する準備を始めた。9時直前に用意が終わり、時間通りに説明会が始まる。


「皆さん、おはようございます。本日は突然の召集に応じていただきありがとうございます。今から皆さんにお願いする世田谷ダンジョンの調査および討伐に関する説明会を始めます。投射する映像をご覧になりながらお聞きください」


 教壇に立った職員が席に座る探索者たちに向かって話を始めた。室内のほぼ全員が前に目を向ける。


 職員の話によると、3日ほど前からダンジョン内の地下9層以上のあちこちに地下10層以下の魔物が現われるようになった。以前から起きていた現象だが今回は特にひどい。しかも、地下4層以上に地下5層以下の魔物が現われる現象も確認されている。


 ダンジョン内が突然このようなことになったので活動中の探索者は混乱に陥った。普段相手にする魔物とはまったく異なる強さの魔物に遭遇するなどほとんど考えていなかったからだ。そのため、特に地下4層以上で活動するパーティに被害が出ている。地下5層以下の魔物は何であれ脅威になるからだ。


 昨日の段階で大半の探索者がダンジョンから脱出し、今のダンジョン内部に探索者はほとんど残っていないはずである。しかし、中には事態に気付いていなかったり、何らかの理由で身動きが取れないものもいると可能性があると探索者協会は考えた。


 そこで、世田谷支部は早急にダンジョン内の様子を探るために指名依頼を発したということだ。


 話を聞いていた祥吾はそうするしかないだろうなと思った。ダンジョン内に監視カメラを取り付けても一定時間後には吸収されてしまうので、多人数で一気に調べていくのが一番だ。


 職員は更に話を続ける。


「ダンジョン内に関する説明は以上です。次に皆さんの作業の進め方に関してご説明します」


 ペットボトルの水を口に含んだ職員が探索者への依頼内容についての説明を始めた。


 参加する探索者は基本的にパーティ単位で割り当てられた区域を調査することになっている。調査内容は2点あり、まだダンジョン内に残っている探索者の発見と見かけた魔物の討伐だ。


 もし残っている探索者を発見した場合、現在ダンジョンは閉鎖中なのですぐに脱出するように必ず伝える。尚このとき、自力で歩ける者は歩かせ、無理な場合は運ばないといけない。次に魔物は可能な限り排除すること。特に地下10層以下の魔物は確実に倒すこと。ただし、無理な場合は周囲に応援を頼むことを推奨された。


 話が一段落すると探索者側でざわめきが広がる。求められていることに関しては理解できた。おかしなことは特にない。


 しかし、質疑応答が始まると次々に探索者から質問が飛び交った。細かい条件や例外が発生した場合に関する問いかけがなされてゆく。


 一通り話を聞いた祥吾が恵里菜たち4人の様子を眺めた。いずれも真剣な様子で相談し、必要ならば恵里菜が代表して職員に質問している。


 4人の話に加わっていたクリュスが祥吾へと振り返った。そうして問いかけてくる。


「祥吾、6人で活動するときなんだけれど、前と同じで良いかしら?」


「構わないと思う。今のところ不都合はないしな。ただ、発見した探索者が怪我をしている場合の治療薬なんかはどうするんだ? 探索者協会が用意してくれるんだろうか?」


「ああ、その問題があったわね。恵里菜、職員に尋ねてくれるかしら」


「いいだろう」


 こうして時には他のパーティの質問とその返答を参考にもしながらも、6人は自分たちに何が必要かを洗い出し、どうするべきかをまとめていった。


 1時間半ほどかかった説明会は質問がなくなると同時に解散となる。今まで熱心に話し合っていた探索者たちが一斉に受講室から出て行った。


 人の波が落ち着くのを待つため、祥吾たちは6人はしばらく席に留まったままだ。その間に恵里菜が他の面々に話しかける。


「結局のところ、探索庁監視隊が指定した範囲をしらみ潰しにしていけばいい。罠に気を付けて救助者と魔物を捜し回るわけだ」


「探索者を見つけたときが大変だね~」


「自分で歩いて帰れるならいいけど、動けないとなるとなぁ」


「面倒だけど仕方ないっす」


 気が重そうな4人の様子を見ながら祥吾は立ち上がった。受講室にはもう探索者は自分たち以外誰もいない。


「そろそろ行こうか」


「そうね。4人とも、何か準備するものはあるのかしら?」


「あたしらには特にないね。ダンジョンに入るときにこっちで救急セットを受け取るくらいだな」


 立ち上がった恵里菜がクリュスに返答した。慰め程度にしかならない場合もあるだろうが、手ぶらよりもましという準備である。


 通路に出た6人はロビーに向かって歩いた。話し声が周囲に反響する。


「でも、昼から入れって忙しいなぁ」


「ホントだよね~。明日からにしてくれてもいいと思う~」


「救助を待ってる探索者のことを考えたら、早い方がいいっす」


「確か72時間以内だったっけ?」


「それは災害救助じゃなかった~?」


「ともかくだ、クリュス、祥吾、午後1時にここのロビーで落ち合うことにしよう」


「わかったわ。それまでに準備をすませておくわね」


 ダンジョンに入るための約束をクリュスが恵里菜と交わした。しばしの別れである。


 それぞれの準備のために祥吾とクリュスは一旦恵里菜たち4人と別れた。

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