表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンキラー  作者: 佐々木尽左
第5章 高校1年の夏休み(前半)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/178

夏休みの活動─世田谷ダンジョン─(10)

 ついに世田谷ダンジョンの最下層までたどり着いた祥吾とクリュスは守護者の部屋の扉に手をかけた。取っ手を掴んだ祥吾が力強く開けると、高さ約25メートル、縦横約50メートルの大部屋が目に映る。


 しかし、そんな部屋の大きさなど気にならないくらいの存在が奥に鎮座していた。爬虫類の中でも蜥蜴を大型化したような姿をした魔物、地竜(アースドラゴン)だ。全長は20メートルもあり、羽はないので飛べないが非常に堅牢な皮膚と鱗を持つ。長さだけなら巨大蛇(ジャイアントスネーク)の成体も同程度だが、その威圧感は比ではない。


 そんな部屋の主を見据えながら祥吾は足を踏み入れる。同じくその両脇から守護人形(ガーディアンドール)4体が続いて左右に散り始めた。


 祥吾たちの存在を認識した地竜(アースドラゴン)が咆哮と共に頭をもたげる。そうしてゆっくりと前に進み始めた。


 (ドラゴン)といえば吐息(ブレス)だが、この部屋の地竜(アースドラゴン)は吐かないと祥吾は事前情報で得ている。異世界で耳にした話とは違うので、ダンジョンの守護者は大きさや性質が異なる別物では推測した。


 それでも自分に比べると強者であることに変わりはない。刃先が白くうねるようにぼんやりと淡く輝く槍斧(ハルバード)で切りつけられる間合いに入ろうと祥吾は踏み込んだ。そのとき、地竜(アースドラゴン)が祥吾に飛びつくように頭をいきなり突き出してきた。大きく開かれた口が目の前に広がる。


「うぉっ!?」


 突然の攻撃に祥吾は床に転がりながら右横に避けた。回転して立ち上がったときに地竜(アースドラゴン)の目が自分を捉えていることに気付く。槍斧(ハルバード)で突くもすぐに首を引っ込められて避けられた。


 その頃、左右に散った人形たちは地竜(アースドラゴン)の脚に対して槍を振るい始めた。全身が風がうねるようにぼんやりと淡く輝く4体は果敢に攻めている。効いているのかわからない攻撃だが、どうやら有効らしく、途端に祥吾への興味をなくして脚を頻繁に動かしたり4体の人形へ尻尾を振るったりし始めた。


 手すきになったのは良いことだが、次にどうするべきか祥吾は一瞬迷う。やれることは2つで、ひとつは引き続き頭を狙うことだ。一撃が入って大怪我をさせれば大きい。しかし、体と頭を頻繁に動かされているのでそもそも攻撃することが難しかった。もうひとつは人形と同じく脚を狙うことだ。槍とは違って槍斧(ハルバード)なら斧の刃があるので大きく傷付けられる。


 これは最初の配置を間違えたなと祥吾は思った。祥吾は脚のどこかを狙うべきだったのだ。前方を見ると地竜(アースドラゴン)の左前脚が最も近い。祥吾はそちらへと駆け寄ると槍で脚を突いていた人形に声をかける。


「お前、頭を攻撃してくれ! 当たらなくても牽制できれば良い! 脚は俺がやる!」


 言葉が通じるのかわからなかったが、祥吾はともかく左前脚を担当していた人形に叫んだ。すると、言葉を理解したらしい人形が頭部へと向かって行った。


 どうやって自分の言葉を聞いたのか不思議に思った祥吾だったが、すぐに目の前のやるべきことに意識を向ける。疑問はすべておわってから解消すれば良い。


 地竜(アースドラゴン)の脚は人間の胴体以上に太く、人形の攻撃でいくらか負傷していた。しかし、致命傷にはほど遠く、未だしっかりとその巨体を支えている。


 槍斧(ハルバード)を構えた祥吾はその硬そうな左前脚に淡く輝く斧の刃を叩き込んだ。すると、硬い手応えと共に刃が左前膝に食い込む。そのとき、頭部から大きな咆哮が聞こえた。効果ありだ。


 いけると判断した祥吾は目の前の左前脚を集中して狙う。さすがに岩熊(ロックベア)のように一撃で切断というわけにはいかなかったが、有効ならば何度も繰り返しているうちに結果が出るはずだった。


 当然地竜(アースドラゴン)も身を守るために避けようとするが、自由に振り回せる首に対して脚はそういうわけにはいかない。おまけに体を支えている都合上、どうしても動きは鈍くなる。


 祥吾は自分を狙おうとする頭部の動きを警戒しつつもあくまで左前脚だけに攻撃を続けた。頭部担当の人形の牽制はあまり効いていないようである。しかし、鬱陶しいとは思っているらしく、ときおりそちらへと噛みつこうとしていた。


 そうやって何度も執拗に左前脚の傷口を広げていると、ついに致命傷へと到達する。左前脚に力を入れられなくなった地竜(アースドラゴン)の体が左前前方に傾いたのだ。左前脚の膝から下はもう動かせないようで引きずるばかりに見えた。


 大きな成果を上げた祥吾は更に決定的な成果を上げるため、今度は左後ろ脚に移って人形と担当を変わる。そして、槍によってある程度傷付けられた左後ろ脚の傷口を広げようとした。


 このとき厄介だったのが尻尾だ。尻尾の先がぎりぎり後ろ脚近辺に届くので注意する必要があった。


 最初の何度かはなかなか攻撃に集中できなかった祥吾だが、あるとき尻尾の付け根辺りには尻尾の先も届かないことに気付く。そのため、以後は尻尾の付け根辺りに移って左の後ろ足を攻撃し続けた。その結果、ついに左後ろ脚もその動きを止めることに成功する。


 左側の両脚に致命傷を負った地竜(アースドラゴン)はもはやその場から動けなかった。怒りのままに頭と尻尾を振り回すがそれも効果はなく、両目を人形に槍で突き潰された後、首を祥吾の槍斧(ハルバード)で半ばまで切断されて絶命する。


 地竜(アースドラゴン)が動かなくなったのを確認した祥吾は大きく息を吐き出した。体力は今し方能力(チート)のおかげで回復したが、精神の方は削れたままだ。


 そんな祥吾にクリュスが声をかけてくる。


「お疲れ様。さすが竜殺し(ドラゴンスレイヤー)ね」


「褒めてくれるのは嬉しいが、あれは岩蜥蜴(ロックリザード)に近かったな。皮膚や鱗の硬さ全然比較にならないが、(ドラゴン)と呼べる代物だとは思えない」


「本物の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)の言うことは違うわね」


「珍しく言うじゃないか。でも、あの人形のおかげとも言えるぞ。あいつらが地竜(アースドラゴン)の気を逸らせてくれたおかげでやりやすかったからな。俺1人だったらさすがに無理だよ」


「お役に立てて嬉しいわ」


「しかし、これでやっとダンジョンの核の部屋に行けるんだな。長かったぁ」


「本当にね。さぁ、行きましょうか」


「待った。ドロップアイテムをまだ拾ってないぞ」


「あの人形たちに拾ってもらったわ」


 ドロップアイテムを拾いに行こうとした祥吾はそれらを持ってくる人形たちを目にして固まった。4体とも両腕で抱えている。


「今回は多いな。鱗と皮と牙?」


「そうね。どれも(ドラゴン)のものだから相応の価値があるんじゃないかしら」


「あれを(ドラゴン)というのは抵抗があるが、ともかく、これの価値ってどのくらいなんだ?」


「前にこのダンジョンを攻略した人によると一財産になったそうよ。やっぱり人気があるみたいね」


「コレクションとしての価値が高いということか?」


「それもあるでしょうけれど、仮にも(ドラゴン)のドロップアイテムなんですから、何かしらの実用性があるはずよ」


「実用性と言ってもな。こっちの世界だと魔力すらやっと魔石から抽出できるようになったくらいだぞ。そもそもこれを加工できる技術が現代世界にあるのか?」


 純粋な疑問から問いかけた祥吾だったが、クリュスは珍しく目を見開いて固まった。どうやらそう言った考えは抜け落ちていたらしい。


 返事がなかったので祥吾はそのまましゃべる。


「牙が大きいのはまぁ良いとして、皮は結構ありそうだな」


「ええ、そうね。これで革製品を作れば耐水性に優れたものが作れるでしょう」


「普通の革製品として加工できるのか?」


「ネットで色々と調べていたときに、地竜(アースドラゴン)の皮で作ったバッグなんてものがあったのよ。だから恐らくできると思うわ。どのくらいの性能を引き出せているかはわからないけれど」


「加工の仕方によって素材の性能がどれだけ引き出せるのか変わるのか。そうなると、なんか普通の防水性に優れたバッグになっているかもしれないな、それ」


「私もそう思うわ」


「それにしても、鱗の数が結構あるんだが、1回倒したらこんなに入るのか?」


「みたいね。これも鎧なんかに加工すれば良いんだけれど、今のところは好事家のコレクションどまりみたい。無理矢理鱗鎧(スケイルアーマー)にしている人もいるみたいだけれど、実用性はないらしいわ」


「う~ん、難しいな」


 クリュスの話によるとなかなか価値のあるドロップアイテムらしいが、いかんせん充分な加工技術がないために素材を活かせないということだった。


 迷った祥吾はクリュスに問いかける。


「クリュス、これって売った方が良いと思うか?」


「どちらでも良いわよ。私には必要のないものだし」


「でも、そうなると報酬が」


「今回は充分あるでしょう。地下10層以下でかなり戦って魔物を倒したじゃない」


「あれ全部売ったら結構な額になるのか」


「なるでしょう。だから、急いで換金する必要はないわよ」


「そうか。まぁ金に困っているわけではないしな。それならしばらく持っておこう」


 2人で話をしているうちに祥吾の考えが固まってきた。とりあえず持っておくことにする。


 祥吾はそれらを袋に入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ