おねだりによわい精霊様
「うう……。どうして私は許可をしてしまったのでしょう……」
世界樹の前に転移すると、精霊様が頭を抱えていた。なんだか大変そう。邪魔をしたらだめかもしれない。
そう考えていたら、精霊様が私の方へと振り返った。
「リタのせいですが」
「ごめんなさい」
でも、私も無理だと思って聞いたから。許可をしてくれたのは精霊様だから。私は悪くないと思います。
ぽかん、としているアルティを連れて世界樹の前へ。
「ここに立っててね」
「う、うん……」
「じゃあ、配信開始、と」
いつもの魔法を使って配信を開始。すぐに光球と黒い板が出てきた。アルティがその二つにびくっとしているのがちょっとかわいい。
そうして、すぐに黒い板にコメントが流れ始めた。
『新鮮な配信だー!』
『美味しそうな配信だー!』
『配信は生で食べるのがいい!』
「何言ってるの?」
この人たちはたまにバカになる気がする。
アルティはそんなコメントを不思議そうに眺めてる。じっと観察して……。
「多分、文字、だよね……? でも知ってる文字じゃない……」
「ん。異世界の文字だから」
『アルティちゃんおるやんけ!』
『えまってアルティちゃんに配信見せてんの!?』
『精霊様これはだめでは!?』
『待て精霊様もいるぞ!』
「今回は精霊様にもちゃんと許可を取ってるよ」
でないと、さすがに見せることはできないから。
騒がしくなるコメントを無視して、視線を上げる。師匠が歩いてくるところだった。あくびをしてるから、寝起きかもしれない。夜更かししてたみたいだから。
「悪い。待たせたな」
「大丈夫」
師匠はもちろんいつものローブ姿。ここに来てもらったのは理由があって、今日は一緒にお出かけする予定なのだ。もちろん、アルティも。
というわけで。
「今日は師匠とアルティと一緒に、日本に遊びに行く」
『えええ!?』
『アルティちゃんも来るの!? マジで!?』
『祭りだあああ!』
『安価ですか!? 安価ですよね!?』
「安価はしない」
そう言うと、なんだか落ち込んだようなコメントが流れていく。さすがにアルティがいるからね。知らない場所に連れて行くのはだめかもしれないと思う。
だから。今日行く場所は決まってる。
「遊園地に行く」
『え』
『マジで言ってる?』
『大丈夫? いろいろあるけど、アルティちゃん一緒でいいの?』
「ちゃんと許可はもらったよ」
もちろん精霊様に。振り返ると、精霊様は小さくため息をついた。
「はい、許可を出しました……。お願いされてしまったので……」
『よわよわ精霊様』
『それでええんか精霊様』
『いつか何かやらかしそうw』
『人はそれをフラグという』
「怖いのでやめてください」
まあ、これ以上のお願いは多分ないと思うよ。アルティが特別。たった一人の肉親だから。
そんなアルティは、コメントをずっと観察してる。どうにか意味を考えようとしているのかもしれないけど……。さすがに無理だと思う。
でもこのままだと不便だから、ちゃんと魔法はかけてあげよう。
「というわけで、はい」
「え、な、なに!?」
「魔法をかけておいた。翻訳魔法、みたいなもの。これであっちでもちゃんとお話しできるよ」
「あ、うん……。ありがとう」
連れて行くんだから、これぐらいはしてあげないといけないと思うから。
「それじゃあ、アルティ。遊園地に行こう」
「ゆうえんち……?」
「遊ぶところ、らしい」
「らしい?」
「私も初めてだから」
アルティの頬が引きつってしまった。でもそんなに心配する必要はないと思う。真美にも聞いてみたけど、とっても楽しい場所らしいから。子供が喜ぶ場所だって。
「いろいろあるらしいよ。ジェットコースターとか、観覧車とか、カートとか」
「そうなんだ……」
遊園地のことを聞いて、どうせ行くならアルティと行きたいと思ってしまった。親子で楽しむものらしいよ。あとは、兄妹とか姉妹とか……。
だから、アルティと一緒がいいなって。
「だめ?」
「う……。行く……」
『リタちゃんがあざとい』
『上目遣いのおねだりは卑怯なんだ』
『アルティお姉ちゃんはがんばらないといけないね!』
『姉扱いしたり妹扱いしたりどっちなんだよw』
どっちかは分からないままだよ。
それじゃあ、アルティの手を取って、師匠とも手を繋いで、そろそろ転移だ。とてもわくわくしてる。どんな場所なんだろう。
「ああ、待ってください。アルティ。私から一つ」
「あ、はい」
精霊様が引き留めてきて、アルティが姿勢を正した。
「あちらで見たもの聞いたもの食べたもの得た知識、全てこちらの人に言わないように」
「待って私どこに連れて行かれるんですか!?」
「それでは行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「まってえええ!?」
『これはひどいw』
『アルティちゃん強く生きて……』
お腹を抱えて笑う師匠とあわあわしているアルティを連れて、その場から転移した。
壁|w・)かわいい愛し子のおねだりに精霊様が勝てるわけないのです。
リタに上目遣いにじっと見つめられて、「アルティと日本にお出かけしたい。だめ?」と言われた精霊様がもちろん大丈夫ですと即答して、聞いていたシッショが絶句した、なんて裏エピソード。





