第九十五話
東河さんとビルを出て、三分ほど歩いた先のビルに入った。
「ここのビルの最上階にフットサルのコートがあるんだ」
東河さんは上に指をさして言った。
「フットサル?」
「フットサルというのは屋内の五人制のサッカーみたいなスポーツで、今は女子選手が練習しているはず」
「え、女子」
サッカーするのって男の人だと思った。女子選手が私と何か関係があるのかなぁ。でも運動部系の男子は苦手だったので、男の人じゃなくて良かった。
エレベータの扉が開くと、網のフェンスに囲まれたフットサル用のコートが目の前に広がっていた。天井はガラス張りになっていて、太陽の光が差し込んでいた。
東河さんと観戦用のベンチに座って、練習している選手を見てみると、全員アイマスクのような物を付けていた。
「えっ?」
私はその光景を目にして驚いた。
「驚いた? これはブラインドサッカーといって、視覚障がい者でもプレーができるサッカーなんだ。パラリンピックの競技にもあるんだよ。あのボールの中に鈴が入っていて、転がるとどこにあるのか分かるようになっているんだ。だから観る人は静かにしないと」
東河さんは小さな声で言った。
ゴールにシュートを決める女子選手が目に入った。私と歳が近そうな感じだ。
女子選手はシュートを決めた後、こちらへ向かって走ってきた。
「東河先生、見に来てくれたのですか?」
「アハハハ。ああ、良く分かったね。ナイスシュート!」
東河さんは立ち上がって拍手した。
私も遅れて立ち上がって拍手した。アイマスクで目隠しをしている女子選手が何故、東河さんがここに来たのが分かったんだろうと思った。
「ありがとうございます! あれ? 今日は女の人も一緒ですか?」
女子選手はコートのサイドラインにある敷居ボードに手を置いて言った。
「えっ」
何で私の事まで分かったんだろうと思った。私はアイマスクで本当に見えていないのかどうか、じっと見つめた。
「ちょっとね、早風さんに紹介したい人がいるんだ」
東河さんは女子選手に網フェンス越しに手招きをして言った。
「分かりました。今からそちらに行きます」
早風さんは他の選手を避けて走りながら、コートの端にある出口で折り返して、私たちの目の前で止まった。




