第九十四話
私が東河さんに会って伝えたかったことは、自分が大学の心理学部を専攻した事とHSPについて勉強しているという事だったから、目標は達成していた。
何を言ったら良いか分からず、頭の中で何があるか思い出していた。
「あ、あの……。最近バイトを始めました。七町珈琲で友達とバイトしています」
「すごいじゃない。いらっしゃいませ、ってやってるのかな?」
「はい、ホールもしています。でも、キッチンの方が好きです。お客さん相手が苦手で怖いです」
「苦手な事でもちゃんとできているのは素晴らしいよ。僕が学生の頃は弁当屋でバイトをしていたよ。まかないで料理が食べられるからね。唐揚げが食べ放題」
「アハハ、唐揚げ食べ放題ってすごいです。まかない料理もあります。自分で作って食べてます」
「七町珈琲のメニューが食べれるんだったら良いね。飽きるほど食べてみたい時があるからな。BLTサンドとか美味しいよな」
「まかないではサンドイッチが多いです。作るのが簡単だからです」
「友達と美味しい物を食べて、バイトを楽しくやってるのかぁ」
「楽しいです。あと、友達が映画を撮るって言って、私がヒロイン役で撮影とかをしています」
「それは凄いね。頑張っているね。その映画を是非、観てみたいよ」
「あ、でもまだ撮影中で、完成していないです。九月の大学祭で公開する予定みたいです」
「大学まで行かないと見れないのかな」
「たぶん、そうです」
「ちょっと時間があったら観に行ってみるよ」
「そんなに良い映画か分からないので、面白くなかったら申し訳ないです」
「いえいえ。君の話を聞いていると元気を貰えたような気がしたよ」
「本当ですか?」
「楽しく生きているのが羨ましいよ。学生の頃は仲良しの友達同士で楽しいと思うことをするのが一番良いよ。社会に出たら嫌な同僚とでも仕事しないといけないし、嫌なことばっかりで。あっ、また余計な一言を言ってしまったね」
「いえ、全然良いです」
「あっ、そういえば」
東河さんは立ち上がり、窓から外を眺めた。
私はその姿をコーヒーカップに口をつけながら眺めていた。
「ちょっと紹介したい人がいるんだ」
「えっ? あ、はい」
私は突然の事で上手く返事ができなかった。頭の中で色々な事が駆け巡っていた。
「それじゃ、今から行くか。すぐ近くだから」
「はい」
どこに行くのだろうと思いながら、私は東河さんの後ろについて行った。




