第八十七話
大学での撮影を終えて、私たち三人は飛宮へと電車で移動した。
「次のシーンは飛宮で撮るよ! 真司と真理がデートする場面」
ヒカリさんはそう言って台本を指で突いた。
「飛宮は人が多いから撮影許可とかいるんじゃないの? 大学だったらともかく」
ユメさんは周りを見渡しながらヒカリさんに聞いた。
「人が少ない所で撮影するから大丈夫。ついてきて」
ヒカリさんは先頭を切って飛宮駅の中を歩いていった。
色々なショップが並んでいて沢山の人が集まる飛宮で、人が少ない所ってあるのかなぁ。どこで撮影するんだろう……。
私は白のワンピース姿のまま、ユメさんとヒカリさんの後についていった。
ヒカリさんは人の多い地下のサークルモールには行かず、地上から階段を上った空中庭園に向かった。そして、庭園沿いにあるオシャレな喫茶店に入った。
ヒカリさんは喫茶店のバルコニーにあるパラソルの付いたテーブル席を陣取った。
「ここで撮影をするの」
「こんな所があったんだね」
私は地下のサークルモールにしか行った事がなかったので、地上にこんな良い喫茶店があるとは思わなかった。
確かにこの炎天下でバルコニー席には誰もいない。
「ここは直射日光で暑いから、他の人は冷房の効いた地下のサークルモールに行くんだよ」
ヒカリさんは飲み物を注文するために店内に入っていった。
セルフなのかな……。
私はそう思って、ユメさんと席に座って待っていた。
「暑いけど大丈夫?」
ユメさんは気を遣ってなのか話し掛けてきた。
「うん、大丈夫。暑いのは平気です」
私は上手く会話が続くようなことを言おうと考えたが出てこなかった。
「おまたせ! ユメはコーラで、カスミはレモンティーよ。撮影で使うからまだ飲んじゃ駄目だよ。今からセットするから」
ヒカリさんは三脚を立てて、スマートフォンに映る画角を確認していた。
私は撮影が始まるまで、台本を見返していた。
次のシーンでは、私の台詞は少なかったと思うけど、ユメさんは長台詞があったと思う。




