第七十話
アカリさんがアイスラテを飲み終えて話に割り込んできた。
「カスミはヒロインに合っていると思うよ。ねえねえ、私は? 私はどこで登場するの?」
「アカリは子供役でしょ? 百五十センチだし」
ヒカリさんはあしらうように言った。
「身長は言わなくっていいでしょ! ヒカリだって、百五十五センチでしょ。あんまり変わらないじゃん」
アカリさんは頬っぺたを膨らませた。
「ユメは百六十五センチよ。アカリが並んだら子供に見えるよ」
ヒカリさんはまたあしらうように言った。
「何でユメはそんなに高いの? 私だって子供の頃から牛乳飲んでたよ。でも全然伸びないんだけど。背の順はいつも前の方だし。どうなってるの」
アカリさんは自分の頭の上とユメさんの頭の上を掌で比較した。
「ん……、親がどっちも身長が高いから……かな」
ユメは説明するのに困った顔を見せた。
「アカリはナレーションしてよ。貴方、喋りは上手いんだから」
ヒカリさんは今度は持ち上げるような事を言った。
「ナレーションかぁ。喋りまくるから任せといて!」
アカリさんは自信ある雰囲気で言った。
「今、ちょうど台本を書いているのよ。楽しみにしててね。秋頃にある大学の“藍嶺祭”に出展する予定だから、撮影は夏休みぐらいかな。来月はテストあるし」
ヒカリさんはスケジュールを考えながら言った。
台本を書くのって難しそう。そんな専門的な物が書けるなんて素直に凄いと私は思った。
「どんなストーリーなの? やっぱり恋愛ものでしょ? キスしたりするの?」
アカリさんは興味津々で聞いた。
「えーっ?」
私は“キス”という言葉に思わず声が出てしまった。
「まだ内緒」
顔を横に振りながらヒカリさんは言った。
「えーーー」
アカリさんと私の声がハモった。
「まあ……。まだ迷ってるのよ。ベタなストーリーにするか、変わったストーリーにするか。まあそこは早く決めるわ」
ヒカリさんは腕を組みながら頭を傾けた。
喫茶店でそんな話をしながらのんびりとした雰囲気を楽しんだ。バルコニーから見える海を眺めながら、吹き抜ける潮風がとても心地良かった。
ただ、私にとって映画のヒロイン役なんて荷が重く、未来の心配事の一つとして心にのしかかった。




