第六十八話
「こんな所に神社があるんだね」
先頭を歩いているアカリさんが振り向いて言った。
目の前には朱色の大きな鳥居と防風林に囲まれた立派な神社が見えてきた。
神社の周りには観光客が大勢集まっている。
神社の近くには巨大な展望塔があり、最上階まで登る事にした。
最上階からの眺めは最高で、一面に広がる海を遠くの方まで見渡すことができた。その風景に私は心が洗われるような気持ちになった。
突然、後ろから声を掛けられた。
「ちょっと、おねーさん。もし時間あったら遊びにいきませんか?」
全然知らない顔、茶色い髪の不真面目そうな男の人だった。
「え?」
最初は人を間違えて話してきた人かと思ったけど、すぐに違うことが分かった。突然話し掛けられると頭の中で何を話せば良いのか考えて、何も言葉が出てこないので目線を下に向けた。
その状況を察したユメさんが割って入った。
「俺たち予定があるので、結構です」
「あー、あぁ」
茶髪の男の人は緩く会釈をしながら去っていった。
百六十五センチメートルある長身のユメさんが低い声で凛々しい態度だったので、相手には男性に見えたのかもしれない。
「カスミ。もしあんなのに声を掛けられても、ついていったら駄目だよ」
ヒカリさんは小さい子供に注意する母親のような口調で言った。
「つ、ついていかないよ。絶対」
警戒心の強い私は知らない人になんて人一倍ついていかないと自分では思っている。
「カスミは優しいし、押しに弱そうだからな」
ユメさんも私の事を心配してくれている様子だった。
「ホント、失礼だよね。ナンパで声を掛けてくるのは、こいつなら声掛けたらついてきそうって下に見られているってことでしょ。それって非常に失礼だと思うの」
ヒカリさんは憤りを隠しきれない感じで言った。
「うん」
私はナンパなんてされた事がなかったので何とも思ってなかったが、それを聞くと腹が立ってきた。確かに私は真面目に対応して、お願いされたら断れないかもしれない。ユメさんに遮ってもらって感謝している。
せっかく眺めの良い風景を見て心がすっきりしたのに、ナンパにあって気分が悪くなった。




