第六十六話
駅内から外に出ると潮の匂いがして、深呼吸をすると新鮮な気持ちになった。
駅から南へまっすぐ二百メートルぐらいで海が見えてきた。海に続く道路を歩いていると、アスファルトの上に砂が溜まっているのに気づいた。
何でこんなに道路に砂があるんだろうと思ったけど、すれ違う人を見ると何故だか分かった。砂浜に行って帰る時に靴に付いた砂がアスファルトを歩いていると落ちるので溜まっているのかな。
頭の中に浮かんできた疑問を解決した。
「うーみーーー!」
ヒカリさんが目の前に広がる海水浴場ではしゃいでいる。
「わぁー」
私も目がかすむほどまで広がる海の風景に心が踊った。
「みんな、水着を買って泳ごうか!」
ヒカリさんは冗談っぽく言った。
たまにヒカリさんから私に突然、お願いをしてくる時があって、それがとても恐怖だったりする。今までに“ヒーラーになりなさい”とか“ヒロインになってくれない?”という事があって、突然言われると上手く返せない。今回もそんな感じがしたが違った。
「いやいや。曇ってるし、まだ寒いって。それに日焼けしたくないし。ね?」
アカリさんは両手を振って拒否しながら、私に同意を求めた。
「うん、日焼けはあまりしたくない」
私は大学生になっても水着を着て遊ぶのは恥ずかしいと思った。
「まだ海開きしてないでしょ。来月からじゃないの。誰も泳いでいないよ」
ユメさんは冷静に海を指さした。
確かに海では誰も泳いではいなかった。
海開きの後には沢山の人で埋め尽くされるんだろうなと思った。それであれば人の少ない今日は海の景色を見るのにはタイミングが良かったと思った。
「まあ、実際は水着が面倒だから泳がないけどね」
ヒカリさんはたぶん本音だろうと思うような事を言った。
しばらく浜辺を歩いたりして遊んだ後、次は日月島の方へ向かった。




