第六十三話
今日の放課後も大学付属図書館でHSPの本を読んでいた。
離れた席で“ぶつかった人”も本を読んでいた。毎日、図書館に来ているのかな。いつも一人でいる所を見ていると、ちょっと親近感が沸いてきた。
読み直してみて気が付いたけど、次のような事が書かれていた。
自分に関わる周りの人間がポジティブであれば、HSPもその影響を受けてポジティブになる。逆に周りの人間がネガティブであれば、HSPもその影響を受けてネガティブになる。
以前、読んだ時はピンと来なかったけど、この前そういう事が実際にあった。
私はポジティブな友達と行動していて、私自身もポジティブな気持ちになっているような気がした。
さて、そろそろ帰ろうかな。
新しいHSPの本があるかどうか今度、飛宮に行ってみようかな。時間がある日にでも。
席を立って、本棚の列を通って歩きながら考え事をしていた。
自分がHSPの部分は分かったけど、私はまだ疑問が残っている。自分の性格でHSPに当てはまらない部分が分からない。
新しいHSPの本を買っても書いている事は八割ぐらい同じだったりするかもしれない。HSPもだけど次は“発達障害”という視点からも自分自身を見てみたい気持ちがある。
だから、次は発達障害の書籍棚を……。
本棚の端の角を曲がると、大きな壁にぶつかりそうになった。よく見ると壁ではなく背の高い男の人だった。
一瞬の間があった。
「す、すみません。はっ」
私は見上げて驚いた。
ぶつかりそうになったのは、あの“ぶつかった人”だった。
今回はぶつからずに寸前で止まることができた。
「こちらこそ、すみません。考え事をしていて……」
相手のその声は怒っている様子はなく、全然トゲトゲしくはなかった。
頭の中で何を言えば喋れば良いのかシミュレーションしていて、固まってしまう。
男の人を目の前にすると、恥ずかしくて目を合わすことができない。
何か話さないと変な人だと思われてしまう。とりあえず、この前ぶつかったことを謝ろう。
「わ、私も考え事をしていて……」
「あっ。この前、ぶつかったよね? あの時はすみません」
“ぶつかった人”は素直に謝った。
あの時、ぶつかった私が悪いと思っていたら、相手も同じことを思っていたみたいで驚いた。それにこんな事を覚えていたのに驚いた。
普通の人なら、こんな事は忘れているか、知らないふりをすると思う。それで相手の事なんて考えずに自分の事ばかり話すだけだと思う。
「ぶつかった私の方が悪いので……、すみませんでした」
私はうつむき加減で謝った。声を出す事がとても緊張して心臓の鼓動で、自分の身体が揺れているように感じた。
「いえいえ、全然気にしないでください」
“ぶつかった人”は優しい笑顔で言った。
ようやく一瞬だけ目線を合わせることができて、真正面からの顔を見れた。特別そんなイケメンという事はなく、普通だと思った。優しそうな印象の顔だった。頭の中で何を話せば良いのか考えるが何も浮かんでこなくて黙ってしまった。
「……」




