第四十八話
私は気合を入れて、アカリさんとバイト先の七町珈琲に向かった。
粟田さんに次、ああ言われたら、こう言おう。こう言われたら、ああ言おう。頭の中であらゆるシチュエーションを考えて、何度も何度も言い返す練習をした。それだけで疲れた。
私は自分の心を戦闘態勢にした。
「粟田君は今日休みだよ。今朝、電話があって急遽休みになったよ。だから、今日は吉坂さんと二人で……」
店長はいつもと変わらないクールな表情で言った。
「はい、分かりました。頑張ります。」
張っていた気が一気に緩んだ。
「アイツ、休みで良かったね」
更衣室で制服に着替えながら、アカリさんは笑顔で言った。
「うん、良かった」
私はこれ以上、心が傷つかなくて本当に良かったと思った。
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先ほど注文の入ったワッフルサンドを作り上げた。
見られて緊張しなければ、集中して作ることができる。
次はBLTサンド卵入りの注文が入った。やっぱり十九時ごろは来店されるお客さんが増えてくる。次々と入る注文を吉坂さんと連携して効率良くさばいていく。
BLTサンドの作り方はもう覚えていて、カンペノートを見なくても調理できるようになった。今回は卵入りの方だ。
ベーコンと卵を焼いている間に、レタスとトマトをバターを塗ったサンドイッチ用のスライスパンに挟んでおく。複数のタイマーを使い分けて、焼き時間の目安にする。焼き加減はあくまで自分の目で確認し、ベーコンは半分がカリカリになるぐらいこんがり焼いて、卵は黄身が切った時に垂れないぐらいの半熟になるぐらいまで焼く。調味料も忘れずにベーコンと卵と一緒に挟んで完成。三角形になるように斜めにサクッと切って、見栄え良くお皿に乗せる。
「倉里さん、上手くなったね。この短期間でだいぶ上達したね。料理に向いてるんじゃない?」
吉坂さんは私に向かって笑顔でそう言った。
「ありがとうございます。吉坂さんのお陰です」
褒めて頂いて嬉しかった私は笑顔で返した。
自分が役に立っていると思うと、この世界での存在理由の一つが見つかった気がした。




