第四十七話
「認知心理学って、つまらないね」
大学の食堂でヒレカツ定食を食べながらヒカリさんが言った。
「そうだね、恋愛心理学とか授業で教えてくれたら、女子達は釘付けよ。実際、どういうのがあるんだろうね。好きになると周りが見えなくなるとか?」
アカリさんは楽しい事を言うのが上手い。
「良いねぇ。恋愛心理学!」
ヒカリさんの目が輝きを取り戻したように見えた。
「吊り橋効果とかかな」
あまり喋らないユメさんが口を開いた。
「あぁ、そうかも! 吊り橋を渡っているみたいなドキドキする状況で男女いると恋愛感情を持ちやすくなるって話だよね?」
アカリさんは楽しくなると早口になる。
「そうそう。恐怖のドキドキと恋愛のドキドキを脳が勘違いするやつ」
ユメさんが頷きながらそう言った。
「もっとそういうのを聞きたいなぁ」
目をキラキラさせながらヒカリさんはそう言った。
「席が隣になったり、偶然が何回も続くと運命を感じちゃうよね。これも心理学でありそうじゃない」
また早口でアカリさんは言った。
「ありそう〜。運命の出会いって憧れるね。その言葉だけでドキドキするわ」
ヒカリさんの目の中にハートがあるような感じで言った。
私は三人の会話に合わせて相槌を打ったり、笑ったりしていた。
昼食を終えて、ヒカリさんとユメさんがトイレに行っている間、私はアカリさんにこう言った。
「今日、やっぱりバイト行く」
「カスミ、大丈夫? 無理してない?」
アカリさんはバイトの件を気にしているようだった。
「うん、多分……、大丈夫」
徐々に声が小さくなってしまった。
「もしアイツがまた怒鳴ってきたら、私が怒ってやるから」
アカリさんの表情が正義の味方の様になった。
そう言ってもらえるだけで私の心は救われる。
「ありがとう、アカリさん」
「なんかね、カスミがイジメられるの悔しいから」
私は涙が出そうなほど嬉しかった。




