第四十六話
私は“嫌な記憶”に対して想像をした。私なりに考えて導き出した苦肉の策を想像した。
“嫌な記憶”の中に新しい“想像の私”を創造した。
私の瞳は怒りに満ちてレッドサファイアのように赤く光っていた。
事務室の中に私はいた。目の前にはスーツの男、粟田がいる。こちらに指をさして、何かを怒鳴っている。あの時の怒っている顔だ。
指を差している手を蹴り上げ、回し蹴りを胸板に当てて壁まで吹っ飛ばした。粟田は驚いた表情で何かを言っているが何も聞こえない。
私は鞄の中から曲刀を取り出した。
天井近くまで高い跳躍をして、曲刀を振り下ろした。粟田の右肩から左脇腹へ袈裟斬りを放った。曲刀の軌道は深くはなかったが、内臓と血が噴き出した。
曲刀の柄を大きく引いた後、粟田の眉間に曲刀を思い切り突き刺した。
粟田は白目をむいて、口はがらんと開いたまま動かなくなった。
これでもう怒鳴ることはない。もう怒った顔を見ることはない。
壊れた顔を睨みながら、杵のように巨大なハンマーを懐から取り出した。
大きく振りかぶり、体重を乗せたハンマーを粟田の心臓にめがけて叩き込んだ。その途端、破裂した心臓から大量の血が噴き出した。汚い人間の汚い血だ……。
血の匂いと赤く染まった壁を見て私はニヤリと微笑んだ。
これで良い。
スーツの男、粟田を殺した。




