第二十八話
「倉里さんの制服はこれだから」
傘木店長は座席に座りながら、事務机の上にある新品の制服を指さした。
「ありがとうございます」
「そっちが更衣室になってるから、着替えてきなさい。あと、髪は後ろできちんと括ること」
「はい、分かりました」
更衣室に入るとロッカーが壁際に並んでいて、私の名前が載ったロッカーもあった。
制服はブラウスとズボンに着替えて、エプロンを付ける。あと、靴はローファーだ。鏡を見ながらツーサイドアップの髪を一つにまとめた。変じゃないかな……。
更衣室を出ると、アカリさんが店長と話をしているのが目に入った。
「倉里さんは今日が初日だから、吉坂さんに付いてキッチンの仕事を覚えてもらって。椎川さんは新崎さんとホールで。ちょうど一ヶ月経ったからいけるだろう」
「はい、分かりました」
アカリさんは自信をもってそう答えた。
「それじゃ、復唱。いらっしゃいませ。お待たせ致しました。今から伺います。ありがとうございました」
傘木店長は立ち上がり、姿勢を正しながら一連の言葉を読み上げた。
「いらっしゃいませ! お待たせ致しました! 今から伺います! ありがとうございました!」
アカリさんと私は一緒に復唱した。
店長は二回ほど頷いて、思い出したように言った。
「爪はちゃんと切ってきた? ネイルとかはしてない?」
「はい、切ってきました。ネイルはしていないです」
私は両手を店長に見せた。
「了解。それと念のため、“研修生バッチ”を付けておいて。お客様に失礼の無いように」
「はい!」
私はできるだけ元気よく返事をした。
カフェ内では、年上の新崎先輩とアカリさんがホール担当で、年上の吉坂先輩と私がキッチン担当。店長はキッチンとホールどちらもする。
吉坂先輩ってどんな人だろう……。すぐ怒る人だったらどうしよう。優しい人だったら良いのにな。年上だから偉そうにする人なのかな。もしそうだったら気を遣うだろうなぁ。頭の中で色々な考えがいつも以上に巡っていた。
今は十八時だから二十二時までのシフト。その後、掃除の時間もあるから四時間半ぐらい。
「吉坂です。貴方が倉里さんね。宜しくね」
吉坂先輩は菱縞大学の三年生なので、二歳上とは思えないほど落ち着いていて大人の雰囲気の方だった。
「はい! 宜しくお願い致します!」
気合が入っていたのもあって、私は嫌われないように最善の愛想の良い返事をした。




