第二十四話
四月末のゴールデンウィークの初日、私は七町珈琲にアルバイトの面接に行った。色々と悩んだ結果、アカリさんと一緒にカフェバイトをしようと決めた。まだ面接で採用になった訳ではないけど。
アカリさんは「今は人手不足だし、カスミは真面目だから大丈夫」って言ってくれた。
笹風駅で電車を降りてから、ずっと緊張している。
この駅から徒歩三分で七町珈琲に着く。今日もアカリさんはバイトしているみたいで、どんな感じなんだろう。ちょっと想像しながら歩いていると店が見えてきた。
店内に入ると、白とダークブラウンを基調としたお洒落な内装の空間が広がっていた。
「いらっしゃいませ! あ、カスミ!」
アカリさんの声が聴こえて、奥から制服姿で現れた。白いブラウスと紺のエプロン姿、エプロンの裾はチェック柄になっていてお洒落な制服だった。
「アカリさん、カワイイ!」
私は制服を着たアカリさんが輝いて見えた。
「店長、倉里さんが来ました。こっちから奥に入れるから」
アカリさんはキッチンの奥の事務室へ案内してくれた。
事務机に店長さんらしい男の人が座っていて、こちらを向いた。
「き、今日、アルバイトの面接に来させて頂きました倉里果澄です」
鞄の中から履歴書を出して渡した。
「店長の傘木です。面接だね、そこの椅子に座って」
ダンディな感じで口髭を触りながら、手に持った履歴書を眺めている。
「はい」
緊張感を押さえ込みながら、平然を装った。
「倉里さんは今までアルバイトをしたことはある?」
「今まで無いです」
「料理は得意? 家で料理はする?」
「したことないです……」
「七町珈琲は利用したことはある?」
「無いです……」
「それじゃ、珈琲はよく飲みますか?」
「私は飲みませんが、父親が毎朝飲んでいて、その珈琲の香りが好きです」
「はい、分かりました。今日中に連絡します。ここに書いてある電話番号で良いかな?」
傘木店長は履歴書を指さして言った。
「はい、その番号でお願い致します」
私は目を合わせた一瞬で相手の表情と雰囲気から心の中を読み取った。
「ありがとうございました」
私は一礼をして事務所を出た。
「どうだった? 面接。カスミだから完璧でしょ!」
アカリさんが笑顔で駆け寄ってきた。
「私、駄目かも……。もし駄目だったらごめんね」
緊張していたのもあって、良い受け答えができなかった。
私は自信を無くして七町珈琲を後にした。




