第百二十九話
目が覚めると、ベッドの上にいた。
起き上がって、自分が何故、ベッドにいるのか思い出そうとしたが、何も思い出せないでいた。
「あれっ? 私……」
「大丈夫? 大丈夫?」
北上さんは仕切りカーテンの隙間から顔だけ覗かせて言った。
「あっ! ジェットコースター!」
私は北上さんの顔を見た瞬間、今までの出来事を思い出した。
「心配したよぉ、うっ、うっ」
北上さんは涙を流しながら私の肩を何度も撫でた。
「ごめんなさい、私……」
せっかく北上さんにとって楽しい時間に迷惑をかけてしまって、申し訳ない気持ちで一杯になって謝った。
「いいよ、いいよ。あの時、私は倉里さんが倒れちゃって、心配で心配で……。すぐにスタッフの人を呼んできて、担架で運んでもらって……」
「そうだったんだ、ありがとう」
私は俯きながら、自分が運ばれている姿を想像していた。
通りかかった救護スタッフの女性が仕切りカーテンを開けて声を掛けた。
「あら、もう大丈夫そうね。顔の血色も良くなって」
「はい、元気になりました。ありがとうございました」
私はベッドから降りて、荷物を手に持った。
「体調に気を付けて楽しんで下さいね」
救護スタッフの女性は私たちを笑顔で見送ってくれた。
私と北上さんは救護室を出て、花畑エリアを歩いていた。
「次はどれに乗る?」
私は北上さんがもっとジェットコースターに乗りたいと思っているだろうから、頑張ってできるだけ乗ろうと思った。こんな事で今日は乗らないなんて思わなかった。
「えっ!? いえいえいえいえ。また倒れられたら困るし」
北上さんは首を横に振って、同時に手も横に振った。
「一回しか乗ってなくて、なんだか悪いから」
「そんなことないよ、じゃあ観覧車に乗ろうよ。それなら大丈夫でしょ。まさか高所恐怖症だったり?」
「高い所は大丈夫……だよ」
「それじゃ、観覧車に行こうよ。その前にランチしよう。安心したらお腹空いてきちゃった」
「うん」
何ヶ所かあるランチエリアの中で、一番近くのランチエリアまで五分ほど歩いたら辿り着いた。
「何を食べようかな」
北上さんはパンフレットを広げて、メニューを一つ一つ指でなぞった。
私は北上さんが選ぶものと同じものを食べようと思った。
「北上さんは何にするの?」
「そういえば、私の事は“リオ”で良いよ。倉里さんの名前は何だっけ? はるか?」
「かすみ」
「あっ、全然違った。カスミンで良いんじゃない? カスミン。ね?」
私はあだ名で呼び合うなんて事に驚くと同時に、“陽キャ”って凄いなぁと思った。
「うん、リオ」
リオは輝くような笑顔を見せた。




