第百二十八話
北上さんからのお誘いを最初は断ろうと考えていたけど、やっぱり行ってみることに決めた。北上さんと一緒にいることで、今までのネガティブな自分を変えられるかもしれないと思った。
土曜日、北上さんと衣ヶ原駅で待ち合わせて、高星スターランドへ向かった。
北上さんは大人っぽい服装で驚いた。それに対して、私は小学生の時に着ていた子供っぽい服装で恥ずかしかった。
入場口で半年パスを買って、入園するとそこには華やかな世界が広がっていた。
「最初はスラッシュスカイに行かない?」
北上さんはパンフレットを眺めながら言った。
「う、うん」
スラッシュスカイがパンフレットの中で見つけられず、どんなアトラクションか分からないまま返事をしてしまった。
入場口付近からすぐにスラッシュスカイの入口にたどり着いた。辺りに響き渡る轟音と悲鳴に私は冷汗が出てきた。もっと緩やかな乗り物だと思っていたから恐怖心で心臓の鼓動が高鳴った。
「わ、私こういうの苦手かも」
「えー、そうなの? これは星三だから大丈夫じゃないかな? まだ星四、星五もあるし」
北上さんはパンフレットを指さして見せた。
「う、うん」
大丈夫だろう、と呼吸をゆっくりと落ちつかせるように心に言い聞かせた。
待ち時間が三十分ほどで乗る番がまわってきた。北上さんの隣に乗り込み、安全バーを胸まで下すと心臓の鼓動が止まらなくて呼吸が早まった。今日はこういうのに乗る感じの心では無かったなぁと思った。
そして、出発のベルの音が鳴った。
スラッシュスカイはスピードが特長なアトラクションで、開始から急加速で最高速度で空を駆け抜ける様なジェットコースター。ループは無いものの、左右上下斜めに凄いスピードのまま走っている。
私は日常生活で体感したことのないスピードに息が止まりそうだった。下りになると浮遊感があって、普段は出したことのない悲鳴をあげていた。
終了してゆっくりと止まった時には脱力感で体に力が入らなかった。
「あははは、思ったより怖かったね!」
北上さんは安全バーを上げて、さっと降りた。
「あれっ? ちょ、ちょっと、力が入らない」
私は腰が抜けて立ち上がれず、両手を向けて助けを求めた。
「えっ? どうしたの?」
北上さんは戻ってきて、私の手を両手で握り、引っ張りあげてくれた。
「ん~~」
震える脚に力を込めて、ほとんど手の力だけで乗り物から降りた。
近くのベンチまで何とか歩き、へたり込んだ。
恐怖の感覚が抜けず身体がまだ震えていた。興奮状態が治まらなく、呼吸が落ち着かない。何故だか分からないけど、笑い込み上げてきた。
「だ、大丈夫!? 倉里さん」
北上さんはおかしい状態の私を心配してくれた。どうしていいか分からない様子で私の背中をさすってくれていた。
息苦しさから、目の前が真っ白になって私は倒れた。




