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第百二十二話
「倉里果澄さん、診察室へ」
整形外科医院の受付の人は待合室に響くような声で言った。
左手に氷のうを付けた私と母親は診察室へと入った。
「骨は折れていないですが、人差し指と中指の中手骨にひびが入ってるね」
医師は先ほど撮影したレントゲンの画像を拡大しながら言った。
画像には骨になった自分の手のひらが映っていて、人差し指と中指に黒いすじが薄く入っていた。
「完治するまでギプスを付ける必要があるので準備しましょう。利き手はどっちですか?」
医師の言葉を聞いて、近くにいた助手さんがギプスの用意を始めた。
「左です」
「利き手が使えなくなって不便になるから、しばらくの我慢だね。ギプスを外すのはだいたい一ヶ月後になりますから、重いものを持ったりしないように、あと水で濡らさないように気を付けて下さい」
医師は説明しながら、私の左手にアームウォーマーみたいな布を被せて包帯を巻いた。
ギプスを外すのが一ヵ月後と聞いた私は落胆した。利き手が不自由な状態でご飯を食べるのはどうするのか、お風呂はどうするのか、お手洗いはどうするのか、様々な不安が頭の中をかすめていった。




