第百二十一話
今日は筆箱を隠された。今日は上靴を隠された。今日は筆箱の鉛筆が全部折られてた。今日はノートに落書きをされていた。今日はランドセルをカッターで切られていた。今日は机がチョークで汚されていた。
イジメがあるたびに、私の心は傷つけられて、その痛みが疼き続けていた。
ある日、掃除後にゴミ袋を持って一階を歩いていた。校舎から外へ扉を開けて、ゴミ捨て場まで校舎の脇を歩いていると、上から水が降ってきて髪や着ている服がびしょ濡れになった。私は腹が立ったが、怒りよりも心の痛みが酷くて涙を流した。
帰宅するころには半乾きになっていたので、母親も気が付くことは無かった。
ある日、終わりの会の終了後にランドセルを背負って教室を出た。階段を降りようとした時、突然後ろから強い力で階段の上から突き飛ばされた。声が出る間もなかった。階段の段に手のひらから落ちた瞬間、左手に激痛が走った。
「痛いっ!」
左手に今まで経験のない痛みが止まらないので涙が出てきた。階段にいた生徒は私の様子を見ているだけだった。
私は左手が大変な状態になっているので、顔から血の気が引いていくのが自分でも分かった。助けを求めて保健室へ走った。
「腫れてきているわね、まだ痛い?」
保健室の女の先生は立ち上がり、冷蔵庫から氷を取り出した。小さな氷のうを作り、私の左手の腫れている部分にゆっくりと乗せた。
激痛と不安で変な汗が止まらなかった。氷のうで痛みが少しだけ和らいできているような気がした。
「手はできるだけ動かさないようにして、帰宅したら必ずお医者さんに診てもらいに行きなさい。あと、氷のうは手の感覚が無くなってきたら外して、痛みが出てきたら冷やすようにしなさい」
女の先生は私の左手を見ながら淡々と説明した。




