第百十七話
目の前には五十インチぐらいのスクリーンがあった。プロジェクターで映像を映すような大きなスクリーンだった。
私は床に座りながら、そのスクリーンをじっと見つめた。
映し出された映像には幼い少女が一人映っていた。
その少女は周りの同級生が休み時間に大声をあげて騒いでいても、喋ることもなく大人しかった。特に何をすることもなく、席に座ったまま周りの様子を眺めている。
恥ずかしがり屋であんまり喋らないその女の子は“小学五年生の時の自分”だった。
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クラスの中では特に浮いていた訳ではなかった。それにいつも一緒に行動するグループにも何となく入っていた。普段から無口だったので、ただ単に存在感が薄かったのかもしれない。
ある日の朝の会に先生から転校生の紹介があった。転校性は髪の毛が短くて、背が低かったから最初は男の子かと思ったけど、黒板に書いていた名前が畑島美千だったので女の子だった。
「山木部第三小学校から来ました畑島美千です。良かったら仲良くしてください」
その女の子はハキハキした声で自己紹介をした。
畑島さんの声を聞いた時、言葉のイントネーションが違っていて変な感じだと思った。
山木部って地名を聞いたことないけど、どの辺の県にあるのだろう。
翌日の二時間目後の休み時間、私は連絡表を確認する為に教室内の掲示板を見ていた。すると、後ろから誰かに声を掛けられた。
「図書室ってどこにあるん? 本を借りても良いんかいね?」
イントネーションから畑島さんだとすぐに分かった。
「うん、放課後に行ったら借りれるよ。連れて行ってあげる」
昨日転校してきたばかりで分からないだろうから教えてあげることにした。畑島さんは友達もまだいないだろうから寂しいと思うし。
放課後、畑島さんを図書室に案内した。
「学校に同級生がいっぱいおってビックリしたけぇ。前の小学校で同級生は二人だったんよ。全学年で八人なんよ」
「八人? そんなに少ないの?」
私は全学年で八人という状況が想像できなかった。
「今年は一年生が入ってこなかったけぇ。もう廃校なんじゃ」
「そ、そうなんだ……。そこが図書室」
私は図書室の入口にあるプレートを指差した。
「ありがとう」
畑島さんは笑顔でそう言うと図書室へ走っていった。
私はその後ろ姿を眺めていた。
人の役に立てて良かったと思った。




