第百九話
「カスミ、何か飲み物買った?」
アカリさんの高い声が人混みの中に響いた。
「うん、買った」
「大学の校門近くでジュース売っていたら、取り合えず買っちゃうよね。商売上手だなぁ。それにしても人が多いね。こんなに大学生っているんだと思ったよ。というか他の大学の学生も来ているから多いんだろうね」
大学の校舎は大きな垂幕や看板でいつもと雰囲気が変わっていた。高校の文化祭とは違って、段違いに華やかで賑やかだった。
「すごいね」
私はもっと人が少ないと思っていたので、今日は人混みで疲れそうだなと思った。
「“アオイロ無双”が来て、体育館でライブするんだって。アオイロ無双って知ってる? 最近メジャーデビューしたバンドなんだって。そのファンが来ているんじゃないかな」
「そんなに有名なんだね」
「人気があるんじゃない? インディーズだと分からないけど」
「そうだね」
アカリさんと一緒に第六棟の教室へ向かった。
第六棟の一階の奥にある教室で映画研究会による自作映画が上映される。教室の入り口には“藍領映画祭”の看板が掛かっていた。
冷房の効いた教室内にはヒカリさんとユメさんが並んで座っていた。他には数人ずつで疎らに座っていた。
「カスミ~、 こっちだよ」
ヒカリさんが手を振って、入口にいた私たちを呼んだ。
「思っていたよりも人が少ないね」
アカリさんはストレートにそう言った。
「みんなライブ目的でしょ。体育館は入場制限されるみたいだし。カスミ~、大丈夫?」
ヒカリさんは心配そうに私の両肩を掴んだ。
何故、大丈夫と聞かれたか分からなかったが、もしかして以前の撮影で倒れたことをまだ心配してくれているのかもしれないと思った。
「うん、もう大丈夫。ありがとう」
「今日の上映はね、コンペだから。一回生組、二回生組、三回生組が作った映画を各二十分ずつ上映。採点してもらって、その平均点で一位を決めるの」
ヒカリさんは机に置いてある採点表を持って言った。
「採点するんだね」
私は机の上の採点表を見てみた。
採点はストーリー構成、映像演出、エンターテイメント、インパクトと独創性、余韻と共感の五項目で各二十点で点数を付けるみたい。
「これって、身内で高得点付けちゃって良いの? 不正になったりしない? ナレーションが最高、とか」
アカリさんは冗談交じりで質問をした。
「本当は自分が素直に思った採点するのが良いんだけどね。まあ身内採点でも良いんじゃない」
ヒカリさんは適当な回答をした。
撮影した動画がどんな感じに仕上がっているのか楽しみだった。でも、自分の演技が下手だったら嫌だなぁとか、台詞が棒読みになっていたら嫌だなぁとか思っていた。
暫くすると、教室内にある天井のライトが消えて上映が始まった。




