第百話
「オシャレ~!」
ヒカリさんの声が玄関に響き渡った。
すると、奥の部屋からオーナーらしいおじいさんが歩いてきた。
「内見ですか?」
「はいっ」
先頭にいるヒカリさんは驚いた様子で声が上ずった。
「予約はされました?」
「えっ? いえ、していないです。予約がいるんですね」
「それじゃ、これに記入してくれたら良いよ。予約なしで」
おじいさんは玄関にあるアンケート用紙みたいな紙を指差した。
代表でヒカリさんがその紙に記入したので、内見していい事になった。
「それじゃあ。家の中をね、案内するから」
おじいさんが玄関近くの引き戸を開けると広いリビングが広がっていた。
「わぁ、広いね! 良いじゃん、良いじゃん」
ヒカリさんのテンションが急に上がった。
「奥はキッチンとダイニングで、その横に洗面所と風呂場があって、この一階は全て共有スペースですよ。皆でご飯を食べたり、お喋りしたり、色々できる」
「楽しそうじゃん! 良いねー。四人で一緒にご飯食べたいね。試験勉強とかも一緒にできるじゃん」
ヒカリさんはさらにテンションが上がった。
「電子レンジや冷蔵庫、洗濯機など家電は備え付けだから、自分の部屋の荷物を持ってくるだけで良い。さ、次は二階ですよ」
おじいさんは玄関近くの階段を上っていった。
二階には四畳半の部屋が四つ、トイレと小さな道具部屋があった。
「わぁ、綺麗な部屋」
私達は一つの部屋の入口から中を覗いた。
「各々の部屋でね、プライベートスペースとして、共有スペースとは分けて過ごす空間ですよ。シェアハウスだからルールは友達同士で決めたりするみたいですよ」
おじいさんは一通り説明をして、階段を下りて行った。
内見を終えた私達は最寄りの駅まで歩いていた。
「内見、面白かったね。二階の部屋はちょっと古そうだったけど」
ヒカリさんは正直な感想を言った。
「そ、そうだったね」
私はそんな風に思わなかったから、わざと意見を合わせた。
「私はそう思わなかったけど」
ユメさんは普通に自分の考えを言った。
「最初に書いた紙にはね、条件に“同居者は同性であること”って書いてあった。だから、男と女だと駄目だって」
「やっぱりトラブルがあるんじゃないか? 同じ屋根の下で過ごしていると」
ユメさんは腕を組んで言った。
「私達は問題無いけどね。でも、ユメは男に見られてそうだけど」
ヒカリさんは冗談交じりで言った。
「アハハ」
私は映画撮影では男役のユメさんを思うと間違えられそうで笑った。




