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第三十話【作戦会議・ニ】

 数秒ほど沈黙が続いた後、ノエルが目を細めて小声で、

 

「ちょっとあんた、演技下手すぎでしょ。あれ、絶対怪しまれたわよ」


「そうだぞ。あれじゃ外に出たことがあると言っているようなものだ」とシグマ。


「……悪い。でもまあ最悪シラを切り通せばなんとかなるだろ。それに、外に出たことがバレたからって……殺されるわけじゃないし…………な」


 確証のない声だった。

 

「アリアとカルマがいなくなっている以上、そんなのわからないだろ」


「おい、アビス、不安にさせるのはやめろって」


「事実だ──」



「──おお、そうだ。言い忘れていたことがあったんだ!」



 再び、突然アニマの声が聞こえた。

 

 四人は反射的に姿勢を正す。

 それが逆に怪しいと思われると知っていても、身体が勝手に動いてしまったのだ。

 服のなかはすでにどっと汗をかいている。


「ん? どうしたんだお前ら。そんなにびっくりして」


「……なんでもないわ。先生が突然大声を出すからでしょう」


「おー、それはわるいわるい。で、元々お前らにこれを伝えにきたんだよ。明日の午前九時から四年生には軍の仕事に行ってもらうから、そのつもりでいてくれ」


「えっ、どういうこと? 卒業してないから就職はまだのはずだけど?」とアビス。


「ああ、就職するわけじゃない。ただ最近戦争が激しくなってきているらしくてな、比較的安全なところで参戦してもらう予定だ」


「それって大丈夫なの? 私たちまだ十五歳だけど」


「安心しろ。お前たちはこの世界ではトップクラスに強いんだ。気を引き締めてさえいれば、どんな人間や魔物だろうと負けない。それは俺が保証する」


「……そうですか」


「じゃあそういうことだから」


 そう言ってアニマは今度こそ図書室をあとにした。

 

「はぁ……」と深いため息をつくフェイト。


「あんたが乗り気じゃないのは珍しいわね。真っ先に突っ込んでいくタイプなのに」


「もちろん戦争は楽しみだけどさ。俺が不安なのはそのあとだよ」


「というと?」


「話を戻すんだけど、施設に戻ってきたら俺たちも何かされそうな気がしないか?」


「それは確かにね……。アリアとカルマみたいに地下で何かされて、どこかに連れていかれるかも」


 フェイトは前のめりになって小声で、


「ここでオレから提案なんだけど、明日、全員逃げ出さないか?」


「は?」


「どういうことよ」


「戦争に派遣されるということは、外に出れるってことだ。つまり脱出できるチャンスは多いはずだろ」


「それは……まあ、ね」


「ちなみにだけど、オレは逃げ出すぜ。前々から思っていたんだけど、そもそもこの施設に閉じ込められていること自体おかしいんだよ。外を見に行ってわかったけど、人間ってのは本来自由なはずなんだ」


「おれもそう思う」とシグマ。


「でも最後まで逃げ切れるの?」


「それはわからないな。捕まるかもしれないし、一生幸せになれるかもしれない。だけどこのまま施設にいて軍に就職するくらいなら、オレは別の国で冒険者としてでも暮らしたい」


「それ、いいな。俺もタイミングを見計らって逃げてみるよ」


 アビスが同意した。


「……あんたたちは一度言ったら聞かないんでしょうね。仕方ないから、あたしも乗ってあげる。賢者をなめないでよね」


「ならおれもだ。逆に一人で施設に戻るなんて嫌だぜ」とシグマ。


「よし、決まりだな。じゃあこれから詳しい作戦会議だ」


 四人はこの日、夜遅くまで勉強するふりをして誰にも聞こえないように話し合っていくのだった。

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