JAD-091「状況確認」
「脚部スラスター、想定通りの出力です」
「了解。次は肩部スラスターを動作させるわ」
朝食の時間は過ぎたころ。
私たちは町にある整備工場の1つ、その裏庭に来ていた。
大まかに整地され、私たち以外にもJAMやもどきを操作している人がいる。
要は、動作確認や習熟をしているのだ。
もちろん、目撃者が増えるけど、なじみのない土地では多少は顔を売っておきたい。
目立ちすぎるのも、それはそれで問題ではあるけれども。
「少し、出力が上がったかしら?」
「そうですね。前回測定より、おおよそ5パーセントほど上がってますね」
操作する私の後ろに座る形で、虚空に手を伸ばすカタリナ。
投影されている半透明のモニターに、数字やグラフが踊る。
「今さらですけど、使い込むほど、繰り返すほど機体が慣れていく……まるで生き物ですね」
「私としては、本来の性能が発揮できていなかった、のほうがしっくりくるわね」
口にして、自分のことながらぴたっとはまる気がした。
そう、ブリリヤントハートの動力用の核は、自然の物。
落ちてきたものなのか、自然発生したものなのかまではわからないけど……。
装甲やらを全部引っぺがしていくと、まん丸い岩が鎮座していたりするのである。
その力は、どこまでのものか私にもわからない。
「なるほど……この感じなら、私もこちらに専念して補助武器の操作とかしたほうがいいかもしれませんね」
「それは助かるわね。ほら、細かいの相手をするときに手段は多い方が良いし、牽制にもなるわ」
頭に浮かぶのは、両肩に増設された何かから正面以外に機銃を放ったりする機体。
うん、なかなか便利そうだ。
実体弾は供給ラインを増設するのが大変だろうけど、石の力を使うなら……うん。
細かい物もいいけど、背負い武器みたいな長物もいい。
ゲームでの話だけど、カスタマイズで戦車に人の上半身をのっけたような奴もいた。
「移動の経験を積ませて、消費を減らせるようにするのもありですね。トラックを最悪、処分できます」
「まー、長距離移動で考えたら欲しいけど、道なき道を行くなら、飛ぶなりしたほうが早いわよね」
ここに来るまでも何度も思った。
とはいえ、寝泊りしたり物資を積み込めるというのは重要だ。
すごく狭いわけではないけど、この中は寝泊りする空間ではないからね……。
「その辺は今後次第ということで。じゃ、石の確認に行きましょうか」
「そうね。ダイヤは今やってたから……」
普段、よく使う石たちを確認し、切り替えていく。
今、起動しているのはダイヤモンド。
能力は極シンプルな、熱ありの光エネルギー。
太陽光をレンズで収束させるようなものだと思えばいいだろうか?
次はサファイア、青い奴。
水や氷の力も使えるけど、一番強いのは貫通力のあるエネルギー弾かな?
不思議と、サファイアだとそうなる。
ほかには、風や雷になるペリドット、石や岩、砂なんかも生み出す黄色いトパーズ。
火を出せるルビー、水や氷が強いアクアマリン等。
最近だと、アパタイトが細かいのを生み出すのに使えるか。
ほかにもあるけど、結構能力がかぶっているのもある。
「少し、騒がしい気がしますけど」
「んー、普通はここまで種類を切り替えられないらしいわよ。せいぜい2,3種だって」
何かの時に聞いた話でしかないけど、たぶん正解。
機体の問題もあるけど、新規生産だと1種がほとんどらしい。
強い人で、2,3種なのだとか。
だからこう、場合によっては相性の関係で一方的になるようなのよね。
「レーテとこの機体、この地方で活用されそうですね。便利ですもん」
「私はもうかって、平和に過ごせて、カラーダイヤが手に入るならそれが一番よ」
「ダイヤはそうそう出てこないと思うんですけど……」
カタリナに言われるまでもなく、目指してる色のダイヤはそうそうない。
もしあったとしても、どこかが持ったままだろうなあと思う。
なにせ、7種手に入れると強大な力が、と私の記憶も訴えているからだ。
それが本当かどうかは、自分が自然に生まれた人間ではないことを知ってから、揺らいでるけど。
「ま、力がないよりは、あったほうがいざというときにね」
「それはそうですけど……」
その後も、雑談と整備の時間は過ぎていく。




