表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

268/278

JAD-267「沈黙の廃墟」


「つまり、私が思ってるより退避してる人間は多いんだ?」


「ああ、その通り。中央から押し出されるように逃げてきて……といった感じだな」


 休憩のための野営。

 そこで集まってきている車両の数や人数は予想以上だった。


 もっと人類は追い詰められている!みたいだと思っていた私にとっては、予想外。

 集落の周囲は、自然たっぷりで開拓も微妙だったのに、と疑問を口にしてみた。

 その返事は、これぐらいなら問題ないというものだった。


 たまたま私たちが出会った場所があの集落だっただけ。

 周囲数十キロ圏内に、同等の集落が多くあるのだとか。

 何年もかけて、段々と大陸の中央からは距離を置くことになったのだという。


(間に合ったと考えるべきか、恐ろしい侵略具合と考えるべきか……)


 間違いないのは、後数年こちらに来るのが遅かったら、全部終わった後だっただろうということ。

 それこそ、大陸全部が機械になっていたかも、しれない。


「自然の回復力は、おそらく異常なほどだ。壁の外に畑がないのは、すぐに回復してしまうからなんだ。毎月、森を焼いて畑にしてるぐらいだ」


「それは、なんというか……すごいとしか言えないわね」


 答えながら、私の知らない力がまだあるのだろうなと感じる。

 石の力を使うことは難しいというが、その代わりに自然の回復力は上がっている。


 一度畑にしても、そのうち戻るというのならば相当だ。


「そうだな。例えばこれも、よく見ていてくれ」


 そう言って、男は足元に生えていた雑草を適当に踏みつける。

 しっかりと潰れたはずの雑草が……徐々に元の姿を取り戻していく!


「と、こういう感じだ。完全に引き抜いたり、切る、焼くぐらいしないといけない」


「よく集落が維持できていますね……」


 カタリナの意見に、私も同意だ。

 これでは、町を作るどころではないように思う。


「そこは不思議でな。一度住み着くと、集落の中は普通なんだ」


「そうなの? 謎すぎる……」


 見えないだけで、未知の技術がすでにあちこちにあるのかもしれないわね。

 それはもしかしたら、人や動物にまで……こっちはわからないからいいか。


「さて、出発しよう。日暮れ前には現地で陣を作りたい」


「ええ、わかったわ。残骸は無視していくわよ」


 再びの移動。

 宣言通り、途中で破壊しておいた無人機たちは無視。

 資源にするにも、少数すぎるともいえる。


 ただ……すでにそれらが草花に覆われ始めてるのを見て、話が本当だということがわかった。


「土壌の栄養とかどうなってるのかしら……」


「細かい成分分析とか、してみたいですね。わかることがあるかは不明ですが」


 私やカタリナも、そういった専門家ではない。

 せいぜいがセンサー類や、戦闘に必要な範囲での検査ぐらいだ。


 そんなことを考えていると、目的地が見えてくる。


「どう? あの場所で間違いない?」


『ああ、間違いない。本当に動いている奴がいないな……』


 無線の返事を聞きつつ、一応警戒をしながら近づく。

 周囲の車両やJAMも、武器を準備した状態だ。


 それも、町に接触したところで解除。

 外は草花が浸食を始めているが、中はそうでもない。


 そのことを改めて確認しつつ、広場のような場所で今日は泊まるとのこと。

 一応見張りを立て、一晩を人気のない廃墟たちの中で過ごすことに。


「明かりを打ち上げて置いたらだめよね?」


「何かあったら狙われますからねえ……」


 焚火の明るさが、少々頼りなく感じる夜。


 結局は何事もなく、朝になるまで平和だった。


「まずは壁の確認と、銃座の設置、修復をする部隊と、街中の探索をする部隊に分ける。探索の支援をお願いしていいだろうか?」


「もちろん。生産設備の案内もしたほうがいいでしょう?」


 同意を返しつつ、ブリリヤントハートに乗り込む。

 一度見た時には、特に珍しいものはなかったような気もするけど、果たして。


 自分たち以外が物音を立てていない空間を、探り始める。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ