表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

201/278

JAD-200「墓標」



 メテオブレイカー。


 かつての人類が作り上げた、空からの来訪者である隕石を打ち落とすための迎撃兵器。

 自立行動を可能とし、普段は地上の砦としても活動できる。


 記録や記憶によれば、星中で両手で足りる程度は生産されたらしい。

 現存しているのが何機かは、不明だ。


 明確に稼働しているのは、私たちが出会った一機だけなのかもしれない。


「エネルギー反応はなし。ここまで近づいてもあっちみたいなお迎えはないですね」


「見ればわかる感じね。足の部分とか、完全に崩壊してるわ」


 砦モードに戻ることすら、不可能になっていたのか。

 まるで巨人が横たわるように、メテオブレイカーはその姿をさらしている。


 もの悲しさに、思わず胸が痛くなった。


「争いきった感じというよりは、本当に役目を終えた感じかしら」


「いえ……力尽きた、ってことだと思いますよ。見てください」


 言われて、メテオブレイカーの周囲を確認、そして納得した。

 無数の無人機だろう残骸、そして人類側だろう金属片が転がっている。


 最初はメテオブレイカーの破片や残骸かと思ったが、違ったのだ。


「何度も迎撃して、その間に付近では戦闘があって……まだこの辺りは石の力が枯渇してるのね」


「じっとしてるだけで、なんだか周囲に力が拡散していきそうです」


 カタリナの予感は、正しい。

 実際に、石の力を使おうとしてもどうも手ごたえが薄い。


 なくはないのだけど、乾いている感じだ。

 メテオブレイカーがどういう状況で倒れたのか、見えてきた感じだ。


「貴方は役目を、果たしきったのかしら?」


 大きながれき、そこをまたぐように進む。

 空を飛ぶ消耗が思ったより激しいと気が付いたのだ。


 そうしてたどり着く、コア部分。

 私たちの知るメテオブレイカーが、何色ものジルコニアを動力としていた場所。


 そこは開かれ、ぽっかりと穴が開いていた。


「持ち出されたか、これが狙いだったか」


「今はもうわからないわね。でも、このままっていうのはさみしいわ」


 これは同情だろうか?

 あるいは、同じように作られただろう存在への感情かもしれない。

 少なくとも、このままは嫌だなと思ったのだ。


 謎の施設から持ち出し、装備したままの腕輪もうずく気がした。

 感情のような何かに従い、使っていない石の中から5色の石を取り出す。

 稼働しているメテオブレイカーが、ブリリヤントハート用に譲ってくれたジルコニアだ。


 もう今は意味がないかもしれないけど……。


「墓標がわりってことで」


 コアの穴に向け、石を落とす。

 キラキラと光るそれが、人が何人も入れそうな場所へと転がる。

 よく見ると、まだコア内部というか、壁には回路が残っている。


 もしかしたら……そう思った時だ。


「レーテっ」


「ええ、わかってる」


 すぐにブリリヤントハートを後退させる。

 その理由は、石を入れたコアが閉じたからだ。


「まだ、動くのね」


 本格的に動き出すのか、その役目を果たすのか、それはわからない。

 だけど、息を吹き返したといわんばかりのその姿に、うれしくなった。


「再稼働や修復には年単位ですよ、きっと」


「それでもいいわ。この辺りの森はきっと、この子の敵にはならないと思う」


 この子なんて呼ぶのが正しいかはわからないけど、そういうことにしておこう。

 いつか語れることを祈って、その場を離れることにした。


 メテオブレイカーと同じように、昔のことがわかる何かが見つかるかもしれない。

 そう思ったら、見知らぬ土地へと向かうのが楽しみになってきた。


「人類は、再びこの星を開拓することになるんですね」


「そういうことね。それでいいんじゃないかしら? かつての文明は便利そうだけど、世界が狭くなった感じだわ。人には、ふさわしい距離というのか、そんな感じのがある気がする」


 私も、弱いつもりはないけど、星の反対側には手が届かない。

 できること、手が届くことをやるだけだ。


「なんだか、人恋しくなったわね……」


「一通り見たら、人の領域まで戻りましょうか?」


 そんな提案に頷き、今は無人の自然へと向かうのだった。

 向かう先は、データ上初期にこの星へと隕石が落ちた場所、だ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ