表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

147/278

JAD-146「迫る意思」


 走る、走る……ひたすらに。


 こういう時、カタリナが通常の睡眠を必要としない体でよかったと思う。

 昼は自分、夜間は彼女にと連続で運転してもらうのだ。


「襲撃はなし。近づいてきたのはいましたけど、振り切りましたよ」


「ありがとう。どのぐらいで着きそう?」


 道なき道を、とまではいわないけど、立ち寄りを最小限にする旅路。

 食事も車内ですませ、手に入れている衛星からのデータを頼りにルート選択。


 できるだけ最短で、メテオブレイカーに向かっている。

 ほかの土地にも、メテオブレイカーの同型機はいると思うけど、探す暇がない。


「数日には。ついたら、トラックは向こうで修理しないと後々ダメそうです」


「そう……無理させてるものね」


 速さだけなら、飛んで行った方がたぶん早い。

 けど、そのあとを考えると今はこうするしかない。


 知識でしか知らないけど、JAMだけでは飛び立った航空機のようなものだ。

 戻ってきて羽を休める基地、あるいは母艦がなければ。


「ない物ねだりはしても仕方がないか……」


「そうなんですよね。ああ、レーテ、こちらを」


 視界の隅に投影されたのは、空の映像。

 夜を引き裂くように光の帯が……。


 また、隕石。


「私、気が付かなかったわ」


「この星に落ちてこない軌道でしたからね」


 言葉通り、そのうちどこかに消えてしまった。

 なるほど、誘導も完全ではないのか。


 しかし……問題は、別にある。


「短期間に二度。これはただ事じゃないわよね。偶然重なったとするのは楽観すぎる」


「そう思ってた方がよさそうですね」


 心なしか、アクセルに力が入った気がした。

 かつては道路があったのか、木々のあまりはえていない場所を進む。


 そうして、さらに進むこと数日。

 もうすぐ、大きな拠点でもあるメテオブレイカーが見える場所。


 空に、光が線を描くのを感じる。

 しかも、複数。


「っ! また!?」


「軌道が……1個、すぐ向こうに落ちますよ!」


 迎撃に悩むパターンだ。

 どちらを落とすか、その優先度の問題。


 メテオブレイカーは、連射しにくい。

 超々距離砲撃用なのだから、当然だ。


(なら、選べるようにしてあげるしか)


「ブリリヤントハート起動、当てるぐらいのつもりで、上に向けて一発撃つわ!」


「了解。トラックを自動運転に切り替えます!」


 2人して荷台へと移動し、乗り込む。

 使う石は、ダイヤとイエローダイヤだ。


「安全チェック省略。クリスタルジェネレータ起動、長距離射撃準備!」


「起動確認、いけます!」


 荷台から飛び降りるようにして、手持ちで一番の長物を構える。

 撃つ先は、空。


「いっけぇぇえええーーー!」


 機体の足が地面に沈み込む勢いで、光の帯が放たれる。

 もちろん、これで迎撃するつもりはさらさらない。


 メテオブレイカーへの伝言だ。

 近くのは、やってみせる、と。


 果たして、すぐに太い光の帯が空に伸びる。

 それは、近くに落ちない方の隕石へと向かった。


「よし、行くわよ。トラックは……あとで回収しましょう」


「了解です。対人、対JAM想定のルーチンでいきます」


 うなずきながら武装チェック。

 背面砲問題なし、手持ちライフル、大中2本とも問題なし。

 腰のASブレード、通常ブレードもいける。


(細かい武装も、大丈夫……よし)


 緊張と興奮が、混ざった感情が私を満たしていく。

 そう設計されたから? 戦いが好きだから?


 どれも正解で、どれも間違っている気がする。

 スラスターを吹かし、ふわりと空へ。

 そして、まっすぐに。


「私はただ、明日も誰かと分かち合えれば、それでいい」


 静かにつぶやき、意識を切り替える。

 ひたすらに、ミッションをこなし、敵を倒していたあの頃に。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ