JAD-146「迫る意思」
走る、走る……ひたすらに。
こういう時、カタリナが通常の睡眠を必要としない体でよかったと思う。
昼は自分、夜間は彼女にと連続で運転してもらうのだ。
「襲撃はなし。近づいてきたのはいましたけど、振り切りましたよ」
「ありがとう。どのぐらいで着きそう?」
道なき道を、とまではいわないけど、立ち寄りを最小限にする旅路。
食事も車内ですませ、手に入れている衛星からのデータを頼りにルート選択。
できるだけ最短で、メテオブレイカーに向かっている。
ほかの土地にも、メテオブレイカーの同型機はいると思うけど、探す暇がない。
「数日には。ついたら、トラックは向こうで修理しないと後々ダメそうです」
「そう……無理させてるものね」
速さだけなら、飛んで行った方がたぶん早い。
けど、そのあとを考えると今はこうするしかない。
知識でしか知らないけど、JAMだけでは飛び立った航空機のようなものだ。
戻ってきて羽を休める基地、あるいは母艦がなければ。
「ない物ねだりはしても仕方がないか……」
「そうなんですよね。ああ、レーテ、こちらを」
視界の隅に投影されたのは、空の映像。
夜を引き裂くように光の帯が……。
また、隕石。
「私、気が付かなかったわ」
「この星に落ちてこない軌道でしたからね」
言葉通り、そのうちどこかに消えてしまった。
なるほど、誘導も完全ではないのか。
しかし……問題は、別にある。
「短期間に二度。これはただ事じゃないわよね。偶然重なったとするのは楽観すぎる」
「そう思ってた方がよさそうですね」
心なしか、アクセルに力が入った気がした。
かつては道路があったのか、木々のあまりはえていない場所を進む。
そうして、さらに進むこと数日。
もうすぐ、大きな拠点でもあるメテオブレイカーが見える場所。
空に、光が線を描くのを感じる。
しかも、複数。
「っ! また!?」
「軌道が……1個、すぐ向こうに落ちますよ!」
迎撃に悩むパターンだ。
どちらを落とすか、その優先度の問題。
メテオブレイカーは、連射しにくい。
超々距離砲撃用なのだから、当然だ。
(なら、選べるようにしてあげるしか)
「ブリリヤントハート起動、当てるぐらいのつもりで、上に向けて一発撃つわ!」
「了解。トラックを自動運転に切り替えます!」
2人して荷台へと移動し、乗り込む。
使う石は、ダイヤとイエローダイヤだ。
「安全チェック省略。クリスタルジェネレータ起動、長距離射撃準備!」
「起動確認、いけます!」
荷台から飛び降りるようにして、手持ちで一番の長物を構える。
撃つ先は、空。
「いっけぇぇえええーーー!」
機体の足が地面に沈み込む勢いで、光の帯が放たれる。
もちろん、これで迎撃するつもりはさらさらない。
メテオブレイカーへの伝言だ。
近くのは、やってみせる、と。
果たして、すぐに太い光の帯が空に伸びる。
それは、近くに落ちない方の隕石へと向かった。
「よし、行くわよ。トラックは……あとで回収しましょう」
「了解です。対人、対JAM想定のルーチンでいきます」
うなずきながら武装チェック。
背面砲問題なし、手持ちライフル、大中2本とも問題なし。
腰のASブレード、通常ブレードもいける。
(細かい武装も、大丈夫……よし)
緊張と興奮が、混ざった感情が私を満たしていく。
そう設計されたから? 戦いが好きだから?
どれも正解で、どれも間違っている気がする。
スラスターを吹かし、ふわりと空へ。
そして、まっすぐに。
「私はただ、明日も誰かと分かち合えれば、それでいい」
静かにつぶやき、意識を切り替える。
ひたすらに、ミッションをこなし、敵を倒していたあの頃に。




