JAD-125「自然界の脅威」
謎の電波塔から、トラックを置いてある場所へと飛行して向かう。
下は相変わらずの大自然だ。
時折山、川、そして草原や荒れ地と続く。
不自然なほどの荒地は、星の力が失われた……戦いのあった場所なんだろう。
「金属反応、時折大きくありますよ」
「ほとんどは残骸でしょうね。ほら、あれなんかそうじゃないかしら?」
眼下には、荒地の中央がくぼみ、クレーターと化している姿が。
正確には、クレーターは草木が生えず、周囲を草木が覆うためにこうなったという感じ。
ともあれ、一番中央に突き刺さった形の残骸。
おそらくは、元は何かの兵器だったんだろう。
「石の力は感じませんね……」
固定砲台だったのか、戦車みたいなものだったのか。
それはわからないけど、かつては破壊を振りまいた存在に違いない。
「もう何百年も前でしょうしね。いや、案外最近かもしれないけども」
「生き残りや、発掘品を使ってってことですよね? 動かせるんですか?」
それが一番の問題だったりする。
ブリリヤントハートは、保管状況的に良い状態を保てていた。
前に出会った、無人機なんかもまだましな方。
動かせる過去の兵器、というだけでレアなのだ。
「少なくとも、最前線用のではないわよね。保存されていたなら」
大体は、予備、援軍用か後々生産されたものになるだろう。
ふと、顔を前に向けると続く森が……。
「なんだか、資料で見た昆虫の巣みたいよね」
「地下に住み着いて、周囲の木々を食い尽くす奴ですか。確かに、そうですね」
星の力を使い果たし、荒地にしてしまったという点では、一緒なのかもしれない。
少しばかりのさみしさを胸に、なおも進む。
ここは行きには通らなかったルートで、開拓には向かなそうだ。
鉱山があるでもなく、大きな水源があるでもなく。
工場跡も、今のところはなさそうだ。
「施設が地上に残ってるだけ奇跡的、か」
「私もそう思いますよ。目標地点まで後20分」
一定速度で進むため、景色も変わり映えしない。
変化はしているけれど、決まったものしか見えないのだ。
と、そのうちに遠くに大きな川、目的の施設へと続く川が見える。
「こうしてみると、検査してないのに普通の川に見えなくなりますね。非論理的な発言ですけど」
「わかるわ。そんなものよ。知ると、そうとしか見えなくなる」
ますます人間らしくなっていくカタリナ。
頭部には、人間のそれを目指した部位が詰まってるという話だけど、どこまで本当か。
案外、私と似たような……まあ、いいか。
「通信、届くかしら? 報告がてら、先に連絡しておきたいわ」
「了解。この距離でもまっすぐならなんとか……つながりました!」
とたん、コックピット内部にノイズ音。
周波数の調整もしていない、全方位、といった通信だ。
「石をダイヤとイエローダイヤに! 戦闘準備!」
「っ!? 了解! 変換完了、いつでも!」
切り替え時の自由落下から、すぐにブースターを吹かせ、施設へと接近する。
施設周囲は、防衛と資材確保のために木々は切り倒され、ぽっかりと開けている。
そんな施設の前や屋上に、見覚えのある機材や武装が設置され……川に向かって火を噴いていた。
『撃て撃て! 通すんじゃないぞ!』
『くそっ! トカゲが来ないと思ったら大蛇かよ!』
聞こえてくる声に、慌ててモニターの一部を切り替える。
川の流れが、岩場をかき分けるように……いや、違う!
「人間なんて一飲みにできそうですけど!?」
「そういう種類なんでしょうよ!」
ミュータントも当たり前の今、巨大生物の存在理由を問うても仕方ない。
減速もわずかに、上空を通り過ぎながら川へと攻撃を叩き込む。
白と黄金色にも見える光が推定大蛇に直撃し、焼く。
そのまま川を流れていく合間を縫うように、追加だ。
「聞こえる!? 援護するわ!」
『出待ちしてたんじゃないだろうな? 助かる!』
まだ精神的には余裕があるらしい声を聞きながら、攻撃を続ける。
「カタリナ、増援警戒! 別方向をね!」
「わかりました。っと、さっそくです。オオトカゲの反応ですよ」
連携を取っている……なんてことはないと思う。
気配を察して、やってきたというところか。
両手にライフル、背面武装も起動し、施設屋上に降り立った私はひたすらに射撃し続ける。




