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 稽古の後、宿屋の自分の部屋に戻ってきて、ベッドに倒れ込むように横になったまでは覚えている。そのまま泥のように眠ってしまったようだ。部屋の窓から見える外の様子から、既に正午は過ぎているように思えて、今まで爆睡していたことを理解する。半日潰してしまったかと少しがっかりした気分になりながらも、とりあえずお腹が空いた。昼食を食べに行こう。まだ少し眠い目を擦りながら、軽く身支度を整えた後、部屋の入口の扉を開ける。


「あっ!セルビィ様!お目覚めですか?」


 扉を開けた先にはリューンが立っており、こちらに軽く会釈をする。どうやら扉の前で、俺が起きて出てくるのを待っていたようだ。


「朝に一度お伺いしたのですが、かなりお疲れのご様子でお休みになられていたので、起こすのも悪いと思いまして……」


 彼女も夜の稽古には同行していたので、ゆっくり休めてはいないだろうのに、こうして待っていてもらうのは少し気が引けた。


「もし、これから昼食をお食べになるのでしたら、街の中央広場あたりのお店はいかがでしょう?アッシュ様とも時間的にちょうど待ち合わせをしておりますので」


 特に断る理由も無い為、一緒に食べることにする。というよりも、扉の前でずっと待っていたのは、皆で一緒に御飯を食べるためなんだろうな、とは思う。





 中央広場へ向かう道の途中、リューンと街中を歩きながら、話しかけてくるリューンに相槌を打ったり、首を傾けたりして話を合わせる。リューンはアッシュの事について、軽く話してくれた。


「アッシュ様は、あの稽古の後、セルビィ様がお宿へお戻りになられた少し後にお目覚めになられたのですが、休む間もなく一人残って鍛錬するといって聞かなくて、訓練場であの後も続けていたみたいです……」


 少々疲れたといったように溜息を漏らしながら、彼女はさらにアッシュの話を続ける。


「もしもオグニルさんとトルキンさんがいれば、アッシュ様に対してもう少し違ったフォローができたかもしれませんね。とはいえ、あれをどうやって止めれば良いのか思いつかないのですが……やはり、アッシュ様は根を詰めすぎではないでしょうか?お体が心配ですね……」


 ハァと溜息をつくリューンをなだめつつ、街の中央、広場の入口へ近づいていく。


「ほら。あそこです。あら。アッシュ様もお店の前で待ってくれていますね」



 店の前まできたところで、バタバタッと誰かの足音が近づいて来る。


 なんだ?と振り向こうとした次の瞬間――


「セルビィちゃぁーーん!!」


 ――ぐえふ!?

 

 背後からの的確な腰を狙ったタックルを貰い、思わずバランスを崩して倒れそうになるものの、どうにか両足に力を込めて耐えてみせる。体勢を立て直した後に、腰に張り付いてきた人物を確認する。


「よかったぁ間に合ったぁ!もう一人で戦いに行っちゃったんじゃないかって、心配だったんだから!」


 ナ、ナナリ!?


 背中に大きなカバンを背負い、杖を抱えた彼女の姿から、ついさっきこの街に着いたような印象を受ける。道の向こうから、ガドラー達が小走りでこちらに走ってくるのもみえた。


「あの、セルビィ様。こちらの御方は?」


「あれ?お姉さんはセルビィちゃんのお友達?いや、新しいお仲間かな?」


 突然現れた少女に少し慌てているリューン。広場の店近くにいたアッシュも、一体何が起きたのかと近づいて来る。その表情からは、明らかな驚愕が読み取れる。


 そして――


「……お前、まさか、レーナか!?」


「レ!?まさか……お兄様!?」


 んんん???


 ――アッシュの妹がナナリで、アッシュは【リアン】で王子様だから、【レーナ】っていうのはつまり、エメラダ王妃の二人の生き残りの子供達でお姫様だろ?つまりつまり、ナナリがお兄様って呼んだのは、そこにいるアッシュでそれは【リアン】になるわけだから、ナナリは【レーナ】ってこと?何かの間違いでは?――



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