表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/50

47

誤字脱字設定ミスセリフ間違いはご愛敬。ほぼすべてやないかい!



 宿泊している宿屋まで戻ってきて、リューン達の話を聞く。


 彼女達は、山岳都市クライスで別れた後に起こった出来事、特にエフィンの里に着いてからここまで、どうやって来たのかの経緯を説明してくれた。エフィンの里の出来事、そこで出会ったエルフの女王の事、そして、どうやってセルビィたる俺がこのガンドリビの街に滞在しているのかを知ることが出来たかなど、丁寧に教えてくれた。


 その内容には、俺がなぜこの世界に呼ばれたのか、リューン自身も半信半疑のような話し方であったが、色々と察する事の出来る情報がちりばめられていた。エルフの女王が編み出したという召喚の手法、それをエメラダ王妃が先走って使用してしまい、このような形の召喚になってしまったこと、起こしてしまった事態に対する二人の謝罪。申し訳なさそうに話す彼女は何も悪くないのだが、お詫びをしたいというのは間違いなく本心のようだった。召喚の儀式等、もっと詳しく聞いてみたい事もあるのだが、リューンがすべての事情を知っている当事者というわけでもなく、あくまでエフィンの里のエルフの女王の代理ということなので、そのことについての深い内容を聞くことはやめた。しかし【エルフの女王】ねぇ……



【エルフの女王】

 ゲーム時の話では、ストーリーのオープニング時点で既にお亡くなりになっており、それをきっかけにストーリーが始まるといってもいいのだが、リューンの話を聞くに、この世界では存命であるようだ。しかし、エルフの女王の設定や話は、ほとんどがゲーム中には登場しない、語られない事なので、詳細などはわかっていないところがある。古の時代に存在したという六英雄の一人であり、その魔力においてはこの世界の均衡を保っていたという設定があったような、なかったような……


 あらゆる事を見通す【千里眼】と、別世界の事象すら視る事が出来るという【万里眼】、この二つのスキルの存在も知らない。リューンの話を聞くに、これらの能力が本当にあるのは間違いがなく、こちらの世界に召喚された後の怪しい行動の数々も、エルフの女王様には全部見られていたということになってしまう。――あれ、これやばくね?


「私達は、セルビィ様とともに、この世界を暗黒に包もうとする魔神マガラツォと戦いたいのです。突然のお願いで、セルビィ様が困惑している事も理解しています。ですがどうか、私達もあなた様と共に戦う、その許可を頂きたいのです!」


 ひとり背筋に悪寒を走らせているのを尻目に、リューンは深く頭を下げる。その声色や態度からは、先ほどの話し方とは違う、力強い覚悟が感じとれるほどだった。


 ――魔神マガラツォとの戦い、ガドラー達との約束があるとしても、ここでこの二人の協力が得られるというのは、とてもありがたいことなのだろう。パーティーは五人に増えて合計六人。ゲームシステム的に考えれば六人でフルメンバーとなる。作戦も立てやすく問題はない、のだが……


「セルビィ様!」


 リューンの隣に座っているアッシュが声を上げる。そう、問題はこっちの青年だ。いや、青年というより王子様、さらにいえば次代の王といえるのだろう――


【リアン】

 アッシュはグランドリオ王国の王子、リアンだった。衝撃的な話である。ゲームでは、魔神侵攻によりグランドリオ王国壊滅の後、遠くヴァルデジャン王国にまで逃げ延びており、王国の再建を広く公言し、魔族達と戦える戦力を少しずつ集めている、メインストーリーに絡んでくるキャラクターなのである。メインストーリーを進めるルートでは、魔神を倒すために必要なイベントアイテム(なくても倒せる)お使いクエストをプレイヤー達に沢山依頼してくれる、いわゆる重要NPCである。それがどうして世界を回りながら危険な冒険者稼業をやっているのか。この世界、ゲームをベースにはしているが、各キャラクターやモンスター、魔族に至るまで、ゲームシナリオを踏襲しているとは思えない動きばかりだ。重要NPC達が、ひとつどころに留まらず、色々な場所に移動しているのではないかという気はしていたのだが、ここまでゲームシナリオの時と色々なものがズレてくると、もはや今後の展開予想などできそうもない。グランドリオ王国は魔族によって滅ぼされているとはいえ、魔神を倒し平和になった後の世界では、彼はグランドリオを再興させて、王として名を遺すであろう人物が、冒険者として最前線の戦いへと赴き、命懸けの戦いをする。その立場を知っている人達からすれば、気が気ではないだろう。


「私はどうしても、亡き父の仇を討ち、母が託してくれた未来を守りたいのです。どうか、私にも魔神との戦いに同行する許可を!」


 過去の戦いからみれば、アッシュの実力は申し分ないほどだ。だがしかし、魔神との戦いは今までのモンスター共との戦いとはまるで違う、間違いなく常に【死】と隣り合わせの危険な戦いとなる。メインストーリーのラスボスなのだ。次期国王となるであろう者を、この戦いに参加させていいものなのか、ここで、今の俺が決めなければならないのだろうか。ほら、もうちょっと周りの、君の立場をちゃんと理解してくれている大人達と相談してから決めた方がいいんじゃないかなぁ??


「お願い致します!」


 ――彼もまた、その意思は固いようだ。この場の勢いに流されている気がしないでもないが、アッシュ、そして、リューンの二人の同行を許可する事にした。


「ありがとうございます!」


「セルビィ様!ありがとうございます!」


 二人の硬い表情が少し柔らかくなった。もしも断られたらという不安が払拭されたようで、少し張り詰めていた場の雰囲気が変わったと思える。


 ここに、ガドラー達が合流してくれれば、いよいよもってのグランドリオ城攻略、そして魔神マガラツォ討伐、最終決戦に挑める、といったところだ。パーティーメンバーが六人に増えたことで、色々練り直さないといけない部分も出てきたが、これで本格的なラストダンジョン攻略を始めることが出来そうだ。


「……セルビィ様!」


 今後について色々と思考を巡らせていると突然、アッシュが意を決したように声を上げて、側に傅いて膝をつき、頭を床にこすりつけるほどに下げた。いきなりの土下座ムーブに戸惑い、一体何がどうしたのかと、彼の次の言葉を待っていると――


「もしもすぐに出発するのではなく、まだこの街にしばらくとどまる予定がおありであれば、俺に……俺に稽古を、もっと強くなる稽古をつけて頂きたくお願い申し上げます!」



「……は?」



 俺の頭に浮かんだ特大の疑問符を吹き飛ばすように、隣にいるリューンが疑問の声を漏らす。どうやらリューンにも伝えていない突発的な話であったらしく、寝耳に水――いや、エルフ耳に聖水とかかな、これ全然うまくないな――などど考えていると、遠くからカラスのような鳴き声が聞こえてくる、そんなこんなで、この日の午後は過ぎていった――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ