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転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話  作者: 楊楊
第五章 一難去ってまた一難

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49 父と娘

 ハジャスとの交渉は、今回もジャスミンに任せた。

 ジャスミンは私が見る限り、かなり努力していた。各鉱山を調査し、資料を揃え、ハジャスが質問してきそうなことをピックアップし、問答集まで作っていたからね。

 今もジャスミンは、理路整然とハジャスに説明をしている。


「昇降機とトロッコの設置についてだが、いきなりすべての鉱山には設置できん。まずは実験的に一つの鉱山にやってみるがいい。それで結果が出れば認めてやろう。それと、ノッカーたちが地元の鉱夫たちと上手くやれるかも確認するからな」

「もちろんです。早速取り掛かっても?」

「そうしてくれ」


 今回はあっさりとハジャスは承認した。

 退出した後にジャスミンが言う。


「それにしても最近、父上は素直になった気がします。何かあったのでしょうか?」


 ハジャスが素直になったのではなく、ジャスミンがハジャスの立場に立った提案をしているからだ。以前であれば、自分の主張を一方的に押し付けていたからね。まあ、そんなことは言えないから、適当にお茶を濁す。


「ジャスミン様の提案が素晴らしかったからでは?よく調査もされていましたし、ハジャス様の懸案事項も解決策を用意されていましたしね」

「そうですね・・・綿密な調査したり、説明する相手の立場になって、提案することは大事ですものね・・・・」


 3日後、ノッカーたちは鉱山の一つで昇降機やトロッコの設置をすることになった。最初は警戒心を抱いていた鉱夫たちも、真面目に働くノッカーたちを見て、次第に打ち解けていく。トロッコと昇降機があれば鉱夫たちも仕事が楽になるから、好意的に受け取られたようだ。

 それとノッカーたちだが、小型種なので、力があまり強くない。なので、力自慢の鉱夫たちがノッカーを手伝っている光景もよく目にするようになる。これなら、ノッカーと鉱夫が共存できる可能性は高い。


 だったら、そろそろアレをやろうか・・・・



 ★★★


 ノッカーたちが一つ目の鉱山にトロッコや昇降機を設置し終えたところで、急報が飛び込んで来た。持ってきたのはジャスミンだ。ハジャスの執務室で、ハジャスと共に報告を受ける。


「父上!!ダンジョンです!!廃鉱山でダンジョンが発見されました」

「何だと!?危険性は?すぐに調査隊を編成せねば」


 流石のハジャスも少し興奮している。

 まあ、そろそろダンジョンをオープンしようと思って、計画していたんだけどね。


 ハジャスは、ジャスミンから発見状況などを詳しく聞き、すぐに調査隊を編成すると決断した。


「早速、明日に調査隊を派遣する。もちろん、私が隊長だ」


 ハジャスはかなり、張り切っている。

 退出した後にジャスミンに聞いてみた。


「父上は若い頃、冒険者をしていたのです。族長となり、その夢を諦めたそうですが、懐かしくなったんでしょうね」


 ハジャスにそんな過去があったなんて驚きだった。


 しかし、次の日ダンジョンの入口にいたハジャスを見て更に驚くことになる。全身がトゲトゲの鎧を着ている。気になって質問してみる。


「これは私の冒険者時代の装備だ。こう見えて、Bランクのタンクで、敵の攻撃も防ぎながら、ダメージを与えられると評判も良かったんだ。ただ、私を敬遠する冒険者も多くいたな。この格好だからな」


 それはそうだ。こんな格好で町中をうろつくなんて、気が引けるし、一緒にいる者も恥ずかしく思うだろう。因みに二つ名は「ハリネズミのハジャス」だった。誰がどう見ても、見た目からの二つ名だろう。

 ジャスミンが言う。


「父上、くれぐれも無理はしないようにしてくださいね」

「分かっている。これでも腕には自信があるんだ」


 それからダンジョンの探索が始まった。魔物はハジャスが嬉々として倒していた。ハジャスの護衛たちも手練れだが、ハジャスが先陣切って攻撃するので、かなり気を遣っていた。地下5階層まで来た時に私は言った。


「ハジャス様、そろそろ帰還致しましょう。最下層まで踏破してしまうと、現役冒険者の立場がありませんからね」

「そうだな・・・名残り惜しいが帰還するとしよう」


 帰還後、ハジャスに感想を聞く。


「間違いなく優良ダンジョンだ。何なら族長を引退して、ジャスミンに任せ、私は冒険者に戻るのもいいかもしれないな。最近ジャスミンは、しっかりしてきたからな」

「そ、そんな・・・まだまだ、父上のお力が必要です」


 以前のジャスミンなら、この話をすぐに受けたのだろうが、ハジャスに提案するために色々と勉強した結果、ハジャスの偉大さを最近は理解している。まだまだ、自分はハジャスには及ばないと自覚したのだろう。


 上機嫌のハジャスに言う。


「私たちはダンジョン経営のノウハウがあります。こちらのダンジョンの管理権を譲っていただくことは可能でしょうか?もちろん、収益の一部をそちらにお納め致します」

「そうだな。これで貸し借りは無しということでいいだろうか?ザルツ部族も同じようなことをしているし、こちらは構わん」

「それで、女王陛下も承認いただけると思っております」


 ダンジョンの管理権が貰えただけで、十分だ。


 このことをケトラに伝えると大喜びだった。


「ありがとうニャ!!このダンジョンもきっと上手くいくニャ」


 バルバラが言う。


「こういう時こそ、ケトルをしっかり管理せねばならんぞ。また、奴は調子に乗りおるからな」

「それは大丈夫ニャ。ケトルは今、監禁しているニャ」


 詳しく聞くと、今回の件で味を占めたケトルは、また変なところにダンジョンを作ろうとしたらしく、スタッフ一同に監禁されたそうだ。


「やはりケトラがマスターをすべきだと、わらわは思う」


 まあ何にせよ、結果オーライだ。



 ★★★


 それからアザルシャハルは、発展していく。ノッカーたちは、ダンジョンと鉱山の設備管理を行うようになり、ゴルド部族もノッカーたちを受け入れてくれた。またダンジョンは、連日大盛況で、特に小国家群の王族や貴族が多数訪れることになった。部下に止められながらも、こっそりとハジャスも潜っているようだけどね。


 ダンジョンの経営も軌道に乗り、アザルシャハルを経つ日が来た。

 ハジャスとジャスミンにお礼を言われた。


「ティサリア大臣には感謝している。娘も教育してくれたしな。女王陛下にもこの恩は返すと伝えてくれ」

「私もです。ティサリア大臣には本当にお世話になりました。私の至らなさを直接指摘するのではなく、自分自身で気付けるようにしてくれていたんだと実感しました。また、散々反発してきた父上には、まだまだ歯が立たないと分かりましたし・・・」


 顔をほころばせたハジャスが言う。


「私がジャスミンの年齢の頃は、もっと駄目だった気がする。お前に族長の座をすぐにでも譲ると言ったのは、本心からだ」

「またまた・・・ダンジョンに潜りたいだけですよね?」

「断じてそのような・・・」


 親子関係も修復されたようだ。

 これからも喧嘩をすることはあるだろうけど、お互いが信頼し合っていれば、乗り越えていけるだろう。


 父と仲直りできなかった私だから、特に思う。二人には仲良くしてほしい。


 そんな思いを抱えながら、パルミラに帰還した。

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